ウェルチが
一気にめざした
M0型からM5型組織
への転換
      

   今日、アメリカ経済が復活し、日本経済はなお停滞を余儀なくされているのはなぜか。1980年代、アメリカは「ものづくり」の品質管理面で日本の企業に逆転され、これまで支配してきた世界の自動車、機械、電気機器等の市場を多く失いました。
 
 当時、日本はアメリカも日本型企業経営を学ぶべきであると豪語しました。しかし、ウェルチは世界からのますます厳しい追い上げを覚悟しましたが、本格的に日本型経営を学ぶことはしませんでした。


J・ウエルチが
何よりも反省したこと

   ジャック・ウェルチは、先ず、自らのリーダーシップで、21世紀に向けての事業のリストラと従業員、組織のダウンサイジングを厳しく敢行しました。
 その上で、J・ウェルチが何よりも反省したことは、これまでのアメリカ企業社会に典型的な組織の問題でした。
 指示命令でしか動かない、マニュアルで管理されたつまり「M0型組織」から脱却することが、最優先課題であると決断したのです。


M0型組織が
M1型組織に勝てるはずがない

 J・ウェルチは、真っ先に、アメリカの製品が日本製品に品質面で負ける結果になった理由を考えたに違いありません。
 特に品質管理の面から言えば、組織に受け身的に所属し、マニュアルでしか動こうとしないアメリカ企業の「M0型組織」が、日本企業の組織のタエマエやルールを競って守ろうとする、バラツキの小さい勤勉な金太郎飴集団「M1型組織」にかなうはずはありません。


  「M1型組織」を越えて、
一気に「M5型組織」をめざす

 J・ウエルチは厳しいダウンサイジングのあとは、会社の価値観を共有しあうために、従業員との対話を重視しました。
 その上で、一人一人のやる気を引き出すために、彼は社員に権限を与え、管理によってではなく、自らの価値観と志と道理で動く組織づくりをめざしました。つまり、ウエルチは。日本企業組織に典型的な「M1型組織」を越えて、一気に「M5型組織をめざしたのです。
 
 当時、アメリカの企業は、「
日本企業の品質管理はものづくりの面に限られている。アメリカの企業がものづくりのみならず、ビジネスのあらゆる場面で品質管理的な問題解決的なアプローチをすれば、日本に勝てる」という決断をしました。
 
 その後アメリカの企業は、ITの発展と共に、情報の発信、共有化が進み、ネットワーク化されて行きます。そして、現場の従業員のやる気や情報や知恵を重視した、全社的な問題解決運動としての「6シグマ」の展開へとつながっていきました。

日本の「M1型組織」
競争力は1980年レベルのまま
 
 日本経済は、この20年間依然として低迷が続いています。企業はそれなりにリストラやダウンサイジングに取組んできました。その取組方が、アメリカと比べて厳しさがたりないという指摘はありますが、それ以上に問題なのは、「M1型組織」から「M5型組織」への組織の転換の遅れではないかと思います。
 
 「M1型組織」での成功が大きかったために、日本人の多くは、「M1型組織」の長所が、今や欠点になっていることに気がついていません。組織のタエマエやルールを競って守ろうとする、和と協調を重視する「M1型組織」は、インターネットで情報の発信や共有化が可能になっても、自由闊達に議論を積み上げ、新しい「ナレジ」を生み出していくことは苦手のままのようです。
   

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