「6シグマ」は
米企業で生まれた
全社的組織的問題解決活動
 

  6シグマの起源は、1970年代末のモトローラ社の品質改善活動にあります。
 当時日本のポケベル市場に参入しようとした当社が、日本のメーカに比較して不良率の高さに驚き、品質管理活動に必死になって取り組むことになったことがきっかけになりました。
 
 その後アメリカでは、日本の経営や品質管理活動の実態研究が行われました。そこでは、確かに日本の強さは、製造現場のブルーカラーの「ものをつくる力」にあるが、それ以外のホワイトカラーの生産性はむしろ低いという評価になりました。
 
 そこで、アメリカの「6シグマ」は「ものづくり」の場面に限らず、関連するあらゆる業務の品質向上に取り組めば、日本に勝てるという考え方のもと、経営品質向上のための全社的な問題解決活動として体系化されていきました。


牽引力となった
J・ウエルチのGE版6シグマ

 1990年代半ば、GEのジャック・ウエルチが「6シグマ」の導入を決意し、GE社としての実践体系を作り上げ、高い実績を上げました。
 J・ウエルチは、アメリカの企業に典型的な「指示命令・管理」で動く「M0型組織文化」を否定するのみならず、日本企業の「和と協調」、「タテマエ」重視の「M1型組織」の限界を看破し、経営と一体となって課題解決に主体的に挑戦する「M5型織づくり」を推進しました。

5つの基本指導概念
(1)GQ
 本来、6シグマは統計学のバラツキの概念です。例えば100万個の製品中3.4個程度しか不良品が発生しない、つまり不良を限りなくゼロにするための品質管理業務システムをつくり上げる活動です。
 そこで、不良が限りなくゼロである品質レベルを「GQ」(Good Quality)と定義しました。「6シグマ」は「GQ」を実現するため品質管理活動というわけです。
 
 「GQ」をめざすためには、2つの側面からのアプローチが必要です。
 一つは、品質のレベルを上げるための改善活動です。
 二つは、改善した品質レベルを維持していく活動です。
 つまり、「製品の性能レベルを向上させるための活動」と「製品の生産供給において、設定した性能を維持し、不良発生のバラツキを限りなく「6σ」レベルに持っていく活動です。

(2)COPQ
 
「6シグマの指導概念」の中の第1に「COPQ」(Cost Of Poor Quality)があります。つまり、設計上の品質レベルがOKでも、生産供給段階において品質不良が発生すれば、その改善や後始末に直接的、間接的にかかるコストは大変大きいものになるという概念です。

 高い品質レベルにおいて、不良発生にともなうコストを限りなくなくゼロに近づけていくという「6シグマ」は、極めて全社的な経営課題です。
 「COPQ(不良発生によるコスト)」が、直接的なもののみならず間接的なものも加えればどのくらい大きいものになるか、研究会の加藤文男会員が、次のような視点を整理して戴きました。

○不良品が多いと発見するための費用がか
 かる。
○ロットアウトになれば、再度全数検査で
 選別しなければならない。
○不良品が発見されれば修理をしなければ
 ならず、その作業費用はばかにならない。
○修理ができれば良いが、中には不良品を"
 おしゃか"と称して廃棄しなければならな
 いものが出てくる。
○不良品の製造に使用された労働のコスト
 は取り戻す事ができない。
○作業の効率を下げているのは言うをまた
 ない。
○作業効率が低下し、納期遅れになれば、
 営業的には機会損失も発生する。
○不良品は仕掛かり在庫として工場内に停
 滞し、原材料だけでなく、作業に要した
 労賃も含めた金利を負担しなければなら
 ない。
○市場に出てしまった不良品を回収するた
 めの費用は大変高いものになる。
○顧客は同じ物を同時にたくさん買うわけで
 はない。たとえ0.01%というメーカ
 ーとしては低いと思われる不良率でも、そ
 の不良品を購入した顧客にとって不良率は
 100%となる。不良品にあたったお客さ
 んは、再び同じ会社の製品を買いたいとは
 思わないだろう。
○不良品により失った顧客の信頼を回復する
 ためには、大変な時間と費用がかかる。

(3)VOC
 「6シグマ」にとって大事な3つ目の指導概念に「VOC:Voice Of Custmor)」の
重視があります。つまり、「COPQ」を問題にすればするほど、顧客重視の立場に立たなければならないと言う考えです。
 
(4)CTQ 
 「COPQ」の背後には必ず原因があります。この原因は単に現場のものづくりの場面のみならず、大きくは経営全般から関連部門の業務全般にわたって存在しています。
 「GQ」を実現するためには、広く原因箇所を探り、真の原因を究明し、これを排除するか、根源的に解決するかをしなければなりません。このような「COPQ」に重大な影響を及ぼしている様々な要因を「CTQ:CriticalTo Quality)」と言います。

(5)SSP

 「6シグマ」は、上記「4つの指導概念」の相互関連を強く意識した取り組みになっています。
 第1は、「COPQ」を金額換算することによって、ことの重大さを認識するところから始めます。
 第2は、「COPQ」を低減するために、いかに「CTQ」と「VOC」を探り、絞りこむかです。
 第3は、「GQ」を踏まえて、「CTQ」を解決するために解決すべき課題とその解決目標レベルをどのように決定するかです。
 
 そこで、この課題を「SSP」(Six Sigma Project)ということにします。「SSP」の内容とレベルの決定は、「VOC」と「CTQ」の認識度にかかっています。

(6)DMIAC
 アメリカの「6シグマ」の実践の場面では、一連の取り組みを効率的、効果的に推進していくためのアプローチ方法として、「DMAIC」という「Critical Thinking Appro
ach」に沿った問題解決フローがあります。
 
 特に、J・ウエルチは、社内のあらゆる業務がよりよく遂行されるためとして、「D」(Defintion:課題の設定)を付加した「GE版問題解決フロー」を体系化しました。
 :Definition
 M:Measure
 A:Analysis
 I:Imprrovement
 C:Controle

 この「5つの問題解決フロー」についてはいろいろな解説がされていますが。具体的にどんな活動のためのにどんなスキルをどう使うかが大事です。
 ここにこそ、「6シグマ」には、オリジナリティをめざして工夫する余地があると言われる所以があります。


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