日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

お客さんへの
開発技術のプレゼンテーションは冷静に!

 社長さん、今日のレターは、この度開発した技術のプレゼンテーションに関してです。先日のX社は、この技術に関心があっての来社とのことでしたが、あれほど大げさな対応をするのは考えものです。この開発技術に自信があればこそ、お客さんへのプレゼンテーションには、大騒ぎせずに冷静に対応したいものです。
 お客さんは、事前に来社の目的を質し、ホームページ等で会社の概要も確認した上で、必要な準備を十分して迎えるべきです。ホームページがないような会社だったら注意すべき相手です。もし、来社の目的と違った話になった場合には、「その点は準備していないので・・・」と断ってよいのです。決して失礼にはなりません。 


社長さんのリップサービスは
会社の信用を無くします!
 お客さんとの席での話の内容ですが、開発技術に関する案内については、もっと気を使わなければなりません。初めての来客に対して、あのような過剰なリップサービスは不要です。秘密保持の点からも問題です。社長さんは会社の秘密事項的な内容が、うっかりでも外に漏れたりしないよう社員にいつも厳しく注意していますが、社長さんの方から、あのような秘密事項に近いことを、しかもあのように断定的に話してしまっては示しがつきません。

  社長さんのお客さんへの話しは「値千金」です。社員の話なら、「間違っていた」とか「状況が変わってしまったので」等と修正ができます。しかし、社長さんの話は修正できません。社長さんとしては「気軽な気持ちでつい話してしまった」ということでも、社長さんが話した以上、会社として責任を持たなければなりません。
 社長さんは、来客に対して過剰なリップサービスをしてはいけません。含みを持った話ならまだしも、あのような断定的な話では、お客に拡大解釈されて、会社として困ることになります。社長さんのリップサービスが会社の信用を無くすこともあるものです。

 今回の開発技術は、社長さんの会社の将来を左右するくらいの価値を有すものかも知れません。しかし、先ずはお客さんに「相当独自でレベルの高い技術なようだ」と思ってもらう程度でいいと思います。社長さんの方も、お客さんの関心がどの程度真剣なのか、それは何故なのか、ある程度時間をかけながら、パートナーとしてふさわしい相手かどうか見極めなければなりません。秘密保持の点からも、会社の信用や評価を高める点からも、この開発技術のプレゼンテーションについては、社長さんの話は大変重要だということをぜひ心してください。(中小企業診断士 加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
中小企業にとって
  開発技術の売込みはビックな「6シグマ課題」!

 日本の中小企業、特に製造業分野の中小企業は、大企業との下請け関係で、品質保証、コスト削減という役割を一方的に担わされてきた。今後、中小企業にとって、これまでのような取引先との従属的下請け関係をどう克服していくかは、極めて今日的な「6シグマ課題」である。
 「6シグマ経営」のGE社にあっても、急速に成長している事業の多くは、国境を超えた革新的な業務提携によって、その成長に拍車がかかり、同時にパートナーの技術や資産によって、グローバル市場へ踏み出せる大きなチャンスを得ている。日本の中小企業は、資産の大きさは別として、開発した技術が持つ潜在的な力を最有利に具現化できる方策とパートナーを模索していかなければならない。
 ここでは、日本の中小零細企業のA社が取り組んでいる「開発製品」のグローバルな売込み戦略を参考に、中小企業の社長さんへのレターにある「開発技術」の売込みという「6シグマ課題」について、下記の通り、「W型問題解決フロー」に沿った取組み上のプロセスを整理しておくこととしたい。
 第一ステップは、社長としての当開発技術をグローバルに売込んでいきたいという問題意識の明確化である。当技術の優位性はどこにあるか、どういう用途があるか等を踏まえ、多額の投資をしてでも供給体制の更新や増設の手を打つべきかどうか、自分自身はどうしたいのかをはっきりさせる
 第二ステップは、当技術に関する現状把握である。特に特許、有望顧客、用途分野の現状、将来性を多面的に把握する。
 第三ステップは、第一、第二ステップを踏まえ、顧客別、用途分野別売上を踏まえた具体的な事業構想をデザインする。
 第四ステップは、事業構想を実現するための具体的な課題をデータ化する。資金の調達、設備の導入、操業の安定化、さらに各顧客別、用途分野別販売策をもとに「何のために、何をどうす」という表現で、事業構想を実現するための、各分野別「基本的課題」、即ち「サブ6シグマ課題」を設定する。
 第五ステップは、各「6シグマ課題」別に、それぞれの具体的なアプローチ策を見直し、具体的な実行計画を作成する。第四ステップで自由にデータ化したアプローチ策を見直し、「何のために、いつまでに、何をどうするか」を明確にした「実行手順書」を作成する。
 最後の第六ステップは、「実行手順書」にもとづいた各アプローチ策の実行とその進捗管理である。


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