日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

人材の採用にあたっては、
社長さん自身の緊張感が出発点です

 景気が回復してきたとは言えない現状ですが、団塊の世代が定年退職期に入っているということもあり、中小企業では人材の確保が難しくなっています。新しい人材を採用することは勿論、折角指導して戦力にした社員を留めておくさえ難しくなっています。
 人材の採用確保にあたって、会社の資本金の大きさや有限会社とか株式会社の名称、事務所の所在地や構え等無視できない要素がいろいろあります。最近、高度な技術力を持ち、開発した製品を他社に生産を委託するファブレス企業もたくさん出てきております。しかし、社長さんのような会社にあっては、会社の大きさはともかく、社長さん自身が緊張感を持って、会社としての体裁や雰囲気づくりに気を使うことが出発点だと思います。 


入社希望者を
事務所に迎え入れるところから!
 社長さんは、現在の経営状況から体裁等を考える余裕がないとおっしゃるかも知れませんが、人材を採用するにあたっては、それなりの気構えが必要です。従業員が少なく、事務所が小さいのはやむをえないとしても、若い人に魅力的な何かを感じ取れる雰囲気づくりが大切です。元気のある会社は、事務所の中にも活気が感じられるものです。事務机の上に書類やファイルが雑然と積まれているようでは、会社の事業内容や仕事の仕方に疑念が生じるし、せっかく面接に訪れたのに、入社したいという気持ちがシボンでしまいかねません。
 

 社長さんが毎日忙しく外を飛び回っていて、事務所の整理整頓にまで気が回らないのは理解できます。しかし、入社希望者を迎える際、「忙しくて」というのは言い訳になりません。そのような時に限って、狭い事務所の片隅に高価なゴルフバックが置かれていたりするものです。社長さん、休日のゴルフ接待も大事ですが、会社の見栄えや体裁にも気を使ってほしいものです。

 事務所は小さくても、社長さんの経営理念や方針が掲示され、現在進行中のプロジェクト資料や設計図面等がファイリングされ、ラックに整然と並べられていれば、面接でお訪れた人にも会社の勢いが伝わります。こんな事務所で、社長さんが会社の夢や社員への期待を語れば、入社して頑張ろうという気になってもらえるでしょう。人材の採用には、先ず、社長さん自身、緊張感を持って臨んで戴きたいと思います。(2007.12.8 中小企業診断士 加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
面接では職務に適切な人材かどうかの前に
3つの視点から人そのものを見る!

 大中小企業を問わず、どんなに優れた経営理念や方針があっても、優秀な人材がいなければ絵に書いた餅に過ぎない。ジャック・ウエルチは「人材の採用にあたって、面接で一つだけ質問するとしたら、何を尋ねますか」という質問に対して、「難しいことだが、勝つためには適切な人材配置が一番重要だ」として、「GE版6シグマ経営」における一連の「人材採用戦略」を紹介している。
 彼は面接にあたって、応募者が職務に適切な人材かどうかを見る以前に、「誠実」と「知性」と「成熟度」という3つの面から、人そのものをテストしなければならないとしている。
 「誠実」は、応募者がミスをした時は率直に認め、自分のことを話す時は率直に、慎み深く話す人間かどうかを見ることである。面接で、誠実な人間かどうかをどうチェックするかは難しいが、結局のところ、それは経営者としての経験を重ねることで磨かれてくるものであり、その直観に頼ることを恐れる必要はないと語っている。
 「知性」は、応募者に会社の仕事に対する知的好奇心がたっぷりあるかどうかを見ることである。面接では、応募者が先輩の仲間と一緒に働き、経験を積み、行くいくは彼らをリードできる知識や技術・技能を早く身に着けたいという向学心を秘めた人材かどうかを見る。そして、どこの学校で何を勉強したかは、単に出発点でしかなく、どこにも経験を積むにつれ賢くなっていく人はいるものであり、結局のところ、知性に関しては教育はその一部でしかないと断言している。
 「成熟度」は、年齢ではなく、その人がオトナかどうか見極めることである。成熟したオトナは、プレッシャーに耐え、ストレスや挫折や失敗に上手く対処できる。逆に成功した時には、傲慢にならない。他人の感情を尊重する。

 「知性」と「成熟度」も、「誠実」かどうかという問題と同様、これらを面接で見ることは困難である。大事なことは、新人の採用にあたり、何を判断基準とするかを明確にし、紹介者や周囲の評判を参考にしながらも、何よりも経営者としての自分の直観を信じるということではないだろうか。


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