アウトソーシングで一層進む
技術・技能伝承の中断化!
この背景には、一部の大卒の技術者自身が、先輩の中卒や高卒の社員が現場で磨いてきた技術・技能を高く評価しない、謙虚に学ぼうとしないという現実が確かにありました。さらに、大手の企業が簡単な技術をアウトソーシングするようになったことも原因の一つです。
電子機器製造業の例ですが、アナログ技術からデジタル技術への転換が進んでいます。機械設備の高精度な自動化が進み、技術・技能社員の出番が少なくなっています。人的な技術・技能業務は外注に出すという考えで、先ずはアナログ的な人的技術・技能を下請けに任せるようになりました。さらに、デジタル技術を学んだ新卒の技術者には、アナログに関する技術・技能は魅力がなく、担当することを嫌がりました。そこで、アナログ的な技術・技能の下請け化が進み、その伝承が中断する状況が見られるようになってきました。
その結果、下請けに業務を発注する側の若い技術者は、その製品に関して技術的見地から評価し、善し悪しを判断できる力を持ち合わせていません。何か問題が起きても下請けに投げるだけになっています。
一方で、派遣社員への切り替えも進んでいます。これもアウトソーシングの一種です。派遣社員は、短期間契約が原則のため、技術を教える、伝えることをせず、下請けに出した仕事の実験マニュアルでの評価作業くらいしかさせていません。
このマニュアル偏重の考え方も技術・技能伝承の中断原因になっています。彼ら技能社員は、自分達の仕事がコンピュータに置きかえられてしまうことを恐れ、熟練工としての技術・技能をオープンにすることもためらうようになりました。業務命令には逆らえず、表面的なことはオープンにして、微妙な点については開示を躊躇するようになりました。
以上のにように、現場のノウハウ的な技術・技能の伝承が上手くいっていないことには、アウトソーシングを中心としたそれなりの理由がはっきりしています。しかし、それ以上に会社として、そうした技術・技能を部下や後輩に継承することの重要性を明確にし、技能社員の実際に教える能力や姿勢を高く評価する根拠を示さなければならないと思います。
社長さん、御社でも、このようなことに思い当たりはありませんか。先輩から技術や技能を叩き込まれた人達は、先輩を尊敬し、いつまでも教えこまれたことへの感謝を忘れず、自らも後輩に伝えていこうとするでしょう。社長さん、社長さんの会社が持って現場の力を、先輩から後輩へと脈々と伝えていく企業文化を途絶えさせてはいけません。まだ間に合います。一緒に検討してみようではありませんか。(2007.11.23 小企業診断士 加藤文男)
|