日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

 社長の率先垂範で
お客さま重視の社風をつくる!

 社長さんの工場を訪問するときいつも感心することがあります。それは、社長さん自身の電話の取り次ぎです。3回以上電話のベルが鳴り続けると社長さん自ら受話器をとっておられますね。そして、相手先を確かめると、従業員を呼び出し、電話の相手先を伝えています。

「XXさん、□□社のAAさまから電話です」

 工場の拡声器から聞こえる社長さんの呼び出し、女性のようにやさしく、たまたま訪問した私の耳にも心地よく聞こえます。「AAさんから電話です」ではなく、「XXさん、□□社のAA様から電話です」という呼び出しからは、社長さんの「お客様を大切にする」という気持ちが伝わってきます。

 勿論、呼び出し声がAAさんに聞こえるわけではありません。しかし、社長さんのお客様への感謝の気持ちを込めた呼び出しは、従業員全員に聞こえます。経営者自らのお客様に対する感謝の思いは、こうした社長さんの日常的な行動から自ずと従業員全体に伝わっていくはずです。
 「何もそこまでやらなくても」という声もあるかもしれません。しかし、これは経営者の従業員教育でもありますね。経営者の「我々の仕事は、お客様あっての仕事」という気持ちが従業員に伝われば、従業員はお客様にきっちり挨拶し、礼儀正しく応対するようになります。心が伝わるのです。こうして、お客様重視の社風が出来上がってくるのですね。


社風づくりは、
社長が自ら範を示す従業員教育で!
 景気が悪くなり、注文が減り、売り上げが落ちてくると意識改革や構造改革、企業の活性化等どいった難しい対策が話題になります。しかし、こうした社長さんの日頃の自ら範を示す従業員教育に勝る対策はありません。社長さんが率先垂範、心を込めた応対を見せること、これが大切です。良い社風が定着すれば、社員はますます安心して仕事ができるようになります。そうなれば、社風はさらに良くなります。そして、お客様には「この会社なら、きっちりした製品や部品を作ってくれるだろう」と、安心して注文を出してもらえるようになります。

 こうした社風も、社員にとっては、毎日当然やるべきことをやっているだけなので、当たり前のことです。しかし、発注する企業の担当者は、いろいろな企業をたくさん訪問しています。彼らは、社風の違いを敏感に見ているものです。長い不況にもかかわらず、注文が絶えることはなく、堅実に利益を上げてきた理由を、社長さんのお客様からの電話の対応に見て取ることができます。(2006.6.中小企業診断士 加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
顧客重視の社風づくりは
「6シグマ」の基盤づくりにつながる!

 「日本版シグマ」の基本は、「顧客の声:VOC」から内部の業務改善課題「CTQ」を絞り込み、これを解決し、「CS:顧客満足」に応えることにあります。
 この会社の社長さんは、日頃のお客様への何気ない対応を通して、「顧客重視」の社風を作り上げることに成功しています。今後、社長からより挑戦的な販売目標が示されれば、先ずは「VOC」から顧客が真に欲しているニーズをいかに引出し、これにどう応えるかです。
 「顧客重視」の社風があれば、お客からの信頼もあります。社員はお客様と率直なやり取りを通して、真に応えなければならない「顧客ニーズ」を絞り込み、相互に共有することも容易になります。社長の「顧客重視」の社風づくりは、「6シグマ」の基盤づくりにつながっています。


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