「Articulacy」という概念 |
朝日新聞社 大江健三郎 |
光文社新書 小野田博一 |
日本版6シグマは組織体における問題解決ツールである。問題解決の流れを「課題設定と解決」を中心に7つのラウンドに分け、情報収集、処理を通してラウンド毎に決着をつけながら論理的、累積的に問題解決を図る。ここでの「情報処理」とは、テーマに関して組織メンバーが持っている情報をもとに、日本語の曖昧で非論理的な表現習慣を越えて、「何がどうなっているのか」、「何のために、何をどうすべきか」を論理的、本質的に議論し、考え抜き、具体的に行動すべき課題を言葉で表現することである。ここでは「考える、話す、書くことと行動することは一体であり、問題解決の基本である」という考えに立っている。 「英語は『論理』」は、論理的な英語を書くためのハウツウ本的なものであるが、日本人が問題解決にあたって、日本語をつかって論理的に考えるための具体的なヒントが盛りだくさんである。 先の日本版6シグマツールの視点から、この時の大江さんの話をもっと詳しく確かめたいと思っていたところ、「子供らに話したことを、もう一度 エドワード・W・サイードの死の後で」という講演録を見つけることができた。この講演録は、大江さんが子供達に向けて書いた『「新しい人」の方へ』をもとに、サイードを巡って話した内容が中心になっている。 大江さんは自分が胸を突かれるのは、「明瞭にはっきり表現する力」という部分であり、その訳のもとになる「Articulacy」という言葉は、「サイードの文章の本質を言い表している言葉であり、こういう場合にサイードの娘さんがこの言葉を使っていることに、私は胸を突かれるのです」と語っている。 |