日本版シックスシグマの
定着が難しい理由
−日本版6シグマの本質を探る−

日本企業ではトップダウンの経営が難しい 

日本の会社はタテ社会組織で、その組織に所属するメンバーの能力や年齢が上下に連続して、数珠繋ぎになっている。日本企業で順番に階級を上り詰めて、組織のトップマネジメントになったとしても、そのリーダーのすぐ下や周辺には、入社当時一緒に仕事をした先輩や同期のメンバーがたくさんいる。そのために、企業経営者とはいえ、強い指示命令を出し、リーダーシップをとれる構造になっていない。大きな変更を伴う「改革案」を出せば、あるときは反発を受け、あるときは無視され、効果を発揮できないで終わる。強い指示を出せるのは、個性のある、ある意味では癖のある者が経営トップになったときのみである。順番に階級を上り詰めて、日本企業の組織のリーダーになった場合は、強力なトップダウンで経営は難しい。
米国の企業では、MBA取得者が、将来経営を担当することを前提に入社してしかるべき部門の仕事をし、更に経営に関する能力を高め企業の経営者となる。経営者層と従業員層の間に、最初から経営に関する姿勢や考え方に大きな相違があるため、トップダウンの経営が可能である。米国の企業と風土の異なる日本の企業においてGEでジャックウエルチが成功したシックスシグマを、そのまま日本企業へ適用しようとしても難しい理由がここにある。

日本企業のタテ社会構造では、大方のメンバーの考え方が非常に似ており、ボトムアップで出された提案を採用し、経営を進めて行けば部下からも反発を食うことはなかった。この社会構造は、右肩上がりの成長期には、"行け行けどんどん"で成功し、元気が良かった。
事業部制の特徴を生かして発展してきた松下電器グループは、この高度成長期においては、各事業部が互いに開発力を競い合って成長し、大きな成功を収めた。典型的なボトムアップの経営であった。そのために同じような製品を複数の事業部で開発し、販売されることがあり、販売ルートで同じブランドが競合する矛盾さえ発生した。バブルで一時技術者が不足したとき、同じ企業グループの中で競争させたため、同じような製品開発に二重に技術者が存在し、"無駄な投資をして"という非難もあったが放置された。ボトムアップで競合するシステムは、右肩上がりの状況では問題とされなかった。しかし、21世紀に入って、二重投資された人材が余剰人員となって、今回のリストラ(早期退職制度の実施)の対象となった。その上、関連会社を子会社化して、トップダウンが徹底しやすい組織体制に変更する方針を打ち出した。

日産自動車においては、ゴーン社長のトップダウンのリーダーシップで経営改革を成功させた。日本企業でトップダウンが受け入れられ、うまく機能するのは、社長とそれ以下の組織に上下関係としてのギャップが大きくある場合である。もし、従来の組織の中で日本人社長が、ゴーン社長のように同じ方針を出していたら、組織はしらけ、機能を発揮しないと思われる。工場閉鎖や下請企業の大幅削減は、従来路線の日本人社長で行っていたら、"人間の機微を理解しない鬼や悪魔"として非難ごうごうで終わったであろう。日産自動車の元日本人トップマネジメントは、日本におけるこのタテ社会組織の特徴や問題点を十分理解していたために、自分では改革するのをやめてフランス人ゴーン社長の力を利用せざるを得なかったのである。この意味では、日産自動車の旧経営陣は、正しい選択をしたといえる。

ボトムアップとトップダウンを上手に組み合わせた
新しい問題解決手法「日本版6シグマツール」
タテ社会組織で、ボトムアップの風土が染み付いている日本の企業において、5年や10年で変革させることは簡単ではない。特に製造業では、現在中核を占める中間管理層の多くは、TQCやTQMで一度はアメリカの品質を凌駕したという成功体験があり、その変革は更に難しい。アメリカのシックスシグマは、トップダウンという組織風土の中で強いリーダーシップにより実践して成功している。いくらすばらしい管理技法とはいえ、アメリカの経営管理システムを強いリーダーシップの発揮し難い風土の日本企業にそのまま取り入れても、定着させることはたやすいことではない。
ベルヒュード研究会は、「日本型6シグマツール」である実践的なツール「M5型問題解決技法」を開発した。これは「W型問題解決フロー」を改善したもので、GE版シックスシグマのDMAICというアプローチ方法に代わるものである。COPQを限りなく小さくすることを前提にして、テーマにかかわるメンバーがVOCとCTQをセミエグザクトサイエンスとしてのアナログ情報処理技法で自ら検討し、SSPを絞り込んでゆく。そして、課題であるSSPを明確にする。このグループの課題SSPを解決するための最適案と実行計画を作成し、トップマネジメントに提案する。提出された案をトップマネジメントは、責任を持って検討し、決裁する。決裁は、権限委譲であり、決裁された案はマスターブラックベルトが中心となって、自信と確信を持って実行する。「日本版6シグマ」は、トップダウンで強力なリーダーシップの取ることが難しい日本企業向けのボトムアップとトップダウンを上手に組み合わせた新しい問題解決手法である。


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