経営・組織・個人の新たな関係構築について
  −労働力流動化時代の組織−

  その2 
      これまでは曖昧でよかった能力要件 
   

 政府は雇用情勢の悪化が続く中で、「新規採用の創出、失業者の再就職支援、成長産業への人材移動の円滑化」からなる総合的な雇用拡大維持政策を打ち出しています。しかし、国の施策は景気の大きな落ち込みをくい止めるだけで精一杯だ。
 大企業を中心に、資本市場からはますます国際的な競争力向上につながる抜本的な人員削減策が迫られてくるでしょう。中小企業はこれまでの不況期には大企業からの失業者の受け皿になってきましたが、今日の不況が構造的理由によるもので、中小企業の雇用吸収力は著しく低下しています。新規開業数も倒産数を下回ったままです。



  こうした中で、企業が生き残って行くためには、これまでの終身雇用や年功序列路線での過剰雇用の削減に、なお継続的に取り組んで行く必要があります。同時にこれまでの採用方式も、適宜必要な人材を外部から導入する方式に転換していかなければなりません。
 
  しかし、
ここで問題なのは、「これまで企業がどんな能力や技術や意識を持った人材をどのように処遇していくのかを、むしろ積極的に曖昧にしてきた」ということです

 これまで日本の多くの企業は、「従業員に対して仕事で実績を上げる以上に、組織への協調性や従順さの方が大事だ」とする考え方や行動を暗黙に重視してきたのではないでしょうか。
 その結果「どんな能力や技術を持った人材を、どんな仕事でどのように処遇していくか」という人材を生かす上での本質的な問題については、積極的に曖昧にしてきた感があります。そして現実に、余剰労働力のリストラに取り組む中でも、この問題についての肝心な議論が依然なおざなりにされたままのように思われます。  
 
 そのために、リストラは陰湿ないじめや嫌がらせの面ばかりが強調されて、多くの人にとっては納得のいかない、曖昧なものになっています。このことが従業員の気持ちを不安にし、志気を低下させ、企業の競争力の弱体化につながっていく心配があります。当然のこととして、外にあっては、求職者の能力と求人条件の間に納得のいかない食い違い(ミスマッチ)の原因になっています。


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