ジャック・ウェルチ
「6シグマ経営」

No.1、2戦略
2本の柱
People Out、Work Out

No.1、2戦略
 GEの「6シグマ」の導入は、1995年であった。従って直接的関係は薄いが、1981年、ジャック・ウェルチはGE社のCEOに就任と同時に、その後の「GE版6シグマ」の布石となった「ある戦略」を発表している。
 20世紀半ば後半まで、アメリカは、鉄鋼、繊維、造船、テレビ、計算機、自動車等の分野で、世界市場を支配していた。しかし、日本の低価格、高品質製品の追い上げを受け、輸出力は急激に弱体化していた。
 ウェルチは、これからは国際的な視野を持つ企業が、次々と世界の舞台に飛び出してくると予測し、こうした競争に勝つためには、生産性の低い事業は整理しなければならないと考えた。
 そこで、ジャック・ウエルチは、21世紀に世界でトップレベルを目指せる事業に絞って重点化することとし、それ以外の事業は譲渡するか、撤退するという戦略をとる決意を行った。「No.1、2戦略」である。

People Out
 「6シグマ」の成功によって、GEを世界トップレベルの企業に導いたジャック・ウェルチは、21世紀にふさわしい企業に向けて、社員一人一人に厳しく自己変革を迫った事が、その強烈な問題意識とリーダーシップとともに伝説的な語り草になっている。
 
 ウェルチは、経営トップの理念や方針、価値観を理解し、自らの業務を革新的に創造する社員を重視した。そして、そうした路線に対応できない多くの社員を整理した。その結果、80年代の終わりには、「GE社はスリムで活力あふれる企業に生まれ変わった」と言われている。この時点で、実に10万人の従業員がGE社を去ったのである。

 ウェルチの組織変革に対して、コロンビア大学のカービー・をウオレン教授は、やや揶揄の意を込めて「ずいぶん大量の人員を整理(People Out)したね。さて、仕事の整理(Work Out)はいつになるのかね」と尋ねたというエピソードが伝えられている。

①People Out

 
ウェルチは、「No.1,2戦略」をもとに、生産性の低い事業とともに大量の管理職や従業員を厳しく整理することになった。つまり、カービー・ウオレン教授の言う「People Out」である。
 しかし、「People Out」は、人員の解雇だけを意味するものではない。会社の経営理念や方針、目標を理解し、業務を革新的に改善する社員や組織を重視するという、ウェルチの強力なリーダーシップに支えられた人材育成、組織変革の施策でもあった。

Work Out
 一方で、ジャック・ウェルチは、カービー・ウオレン教授の「仕事を整理する(Work Out)」というアイデアを大いに気に入っていた。
 そこで、ビジネススクールの教授やコンサルタントを雇い入れ、大変な熱意を持って、GE内部の業務がよりよく行われるための方法の研究を開始した。そして全社を挙げて、この方法を容赦なく、無限に追求していく作業を「Work Out」と呼ぶようになった。
 その後、「Work Out」は、GE社におけるすべての現場の「DMAIC」による問題解決を目的とした小集団活動として発展し、製品の品質管理にとどまらず、経営のあり方や業務品質を革新するための「GE版6シグマウエイ」として確立されていったのである。 

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