「組織IQ」という概念
  -H県経営者協会での講演から-

      
  アメリカのIT社会の現状から学ぶことで、日
本社会が、「M5的なIT組織モデル」を実現できる可能性とそのためのアプローチ方法について考えてみたい。

  ここでは、日本で翻訳された「スマートカンパニー、eビジネス時代の覇者の条件:著者 Haim MendelsonJohannes Ziegler ダイヤモンド社」を参考にしながら話を進めていきます。
   

アメリカの
ベンチャー企業から学ぶ


  アメリカでは、インターネットによる新しい経済、「ニューエコノミー」が現実のものになってきています。
 デジタル化された情報は瞬時に駆けめぐり、企業と顧客の関係は今まで考えられなかったほど親密になり、ビジネスプロセスは、従来とはまったく違った情報処理技術に支えられた「eビジネス」になってきています。
 
 この新しい経済(ニューエコノミー)の下では、混沌とした試行錯誤を余儀なくされ、これまでの経済原則や勝ちパターンが通用しなくなっている。アメリカでも、成功の先陣を切っているのは、ほとんどが「情報処理技術」に強いベンチャー企業です。

既存企業に目はあるか  
  しかし、著者は、「
このような激変する環境の中で、既存のビジネスを確立してきた企業はどうしたらいいか」について、真正面から取り組んでいます。
 そして、「既存の企業にとって重要な鍵は、eビジネス戦略を練り、それを実行できる能力を組織的に身につけることである。」と言っています。
 つまり、「先の見えない市場で成長するには、素早い意志決定と実行が必須となる。そのためには、市場の変化を把握し、得られた知識を共有、昇華させ、素早く課題を設定し、組織が一丸となって実行して行くことが求められる」と言っています。   
 しかし、アメリカでも既存の多くの組織は旧態のままだという。

〇経営トップは変化を先取りしている市場とのパイ
 プをもっておらず、ニューエコノミーへの変化や
 「eビジネス」に対する理解や感度が低い。

〇中間管理職は情報ブローカーとしての権益を守る
 ことに汲々としていて、市場より社内に目が向い
 ている。

〇現場の担当者は、市場の変化に接していながら気
 がつかない、気がついていてもどんな意味があり
  、どう行動すればいいかわかっていない。
 
 著者は、こうした従来からの「M0型、M1型的組織体質」を克服できない限り、「eビジネス」への対応はおぼつかないと言い切っています。


組織IQ」という概念を    

 著者は、「電子的に結びついた精緻な情報ネットワークを構築するだけでは十分ではない、競争力の真の源泉は、社員であり、カルチャーであり、組織構造である」として、次の組織IQという概念を紹介しています。

組織IQの定義
  「組織IQ」とは、敏速に情報を処理し、実行可能な意志決定ができる能力である。今後の「eビジネス」の経営は、次の「5つの能力」を持たなければならない。

 (1)外部情報を認識する能力
 (2)情報で意志決定する能力
 (3)内部の知識流通、共有化を円滑に行う
    能力
 (4)コアコンピタンスにフォーカスし、残
    りをパートナーに任す能力
 (5)全体のネットワークの一部として機能
    する能力
    

「STプログラム」に裏付けされた
「M5型組織」の問題解決力 
 「組織IQ」の概念は、「M5型組織」が持つ武器「STプログラム」に通じるものがあります。

 先の見えない「eビジネス」で成長するには、素早い意志決定と実行が必須であり、そのためには、市場の変化を把握し、得られた知識をもとに戦略的な課題を設定し、スピーディに解決を図る組織力が問われます。
 つまり、「STプログラム」を経営全体で共有し、プログラムが持っている問題設定力、問題解決力をスピーディに実現できる力を「組織IQ」と言っていいのではないだろうか。


 STプログラム
「2つ」のステップ

 第一は、標的顧客、顧客ニーズ、独自の製品、製品、サービスを絞り、経営方針、目標(シエア、売上高、利益等)を設定し、現場と共有化するステップです。

 第二は、経営方針、目標をもとに、現場が戦略的な基本的課題を設定し、解決するための実行体制をつくるステップです。
 
 ここでは、内外からの情報の収集と共有化によって、価値の高いナレジ(知力:具体策、課題)を創出できる組織力が必要です。


 「M5型組織」は、簡便な日本語での「話して考える」、「聞いて考える」、「書いて考える」という日常的なコミュニケーションをベースにした「STプログラム」によって、「知力」の創造が可能であるとしています

 今日のIT、AI時代にあっては、企業や業界は、それぞれに得意とする専門的なコアコンピータンスを持った人間や組織の集合体になってきていると考えられます。この世界では、リーダーがもっとも確かな意志決定者であり、組織は比較的小規模集団の集合体になるというイメージがあります。
 今日のアメリカの「e経営論」の中心となっている「組織IQ」という概念は、「STプログラム」という「道具」をもって、「M5型組織」の問題解決をリードする「ナレジマネジメント力」に通じると言っていいのではないかと考えます。


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