M5型
問題解決技法

基本となる
KJ法による
課題のコンセプト化


M5型問題解決技法の基本フロー  
 「M5型問題解決技法」は、次の6つの「情報処理プロセス」で構成されています。

第一は、
経営の方針や目標を明確にし、全体で共有化するプロセス

第二は、
経営の方針や目標について、部門別に現状がどうなっているか、広く事実を集め、データ化するプロセス

第三は、
部門別に、現状把握を踏まえ、具体的な行動課題(具体策)を広くデータ化するプロセス

第四は、
部門別に「具体策」をもとに、「KJ法」で「基本的課題」を設定し、「A型図解化」し、「戦略的課題」を設定するプロセス

第五は、
部門別に、「基本的課題」別に、個々の具体策を見直し、「実行計画」を作成するプロセス

第六は、
部門別に「実行計画」別に進捗管理を行うプロセス


基本的課題設定ラウンド
に絞って
KJ法による表札づくり  

 「基本的課題設定ラウンド」は、問題意識をもとに、現状把握を踏まえ、ブレーンストーミングでラベル化した「具体策」をもとに、「グルーピング→表札づくり→グルーピング→表札づくり」を繰返し、最終的に5~6個の「基本的課題(表札)」をコンセプト化し、ラベル化するラウンドです。
 
 その上で、各「基本的課題」間の相互関係を明確にし、全体の空間配置を決定する。空間配置の決定にあたっては、論理的に「左右対象」配置を原則とする。


表札づくりの基本

①幅広く関心を持つ
 「何としてでも、問題を解決したい」という問題意識を持って、自分の持ち合わせの情報や枠組を越えて、皆が持つ情報やアイデアや知恵に幅広く関心をもって、積極的にラベル化します。
 幅広く関心を持って、あれこれと解決の手だてを広範な視野から真剣にラベル化するエネルギーは、問題意識の強さに比例します。

②情報を独断的にねじ曲げない
  自分が言いたいことを的確にラベル化したり、相手の言いたいことをラベルから的確に読み取ることはやさしい事ではありません。

 特に会社の中では、部下の意見や情報は、上司には不十分にしか伝わらないことが多いものです。
 部下からの情報が、上司にとって都合の悪い場合もあります。躊躇や遠慮があったり、緊張したりして、また伝えたいことが十分咀嚼されていなかったりして、あいまいな表現になっている場合も珍しくありません。
 上司も、自分にとって都合の悪い情報に出くわすと、「君、そんな事はあり得ないよ。本当はこういうことなんじゃないか」等とねじ曲げてしまいがちです。
 
 ラベルが言わんとして情報をねじ曲げてしまうということは、自分にとって未経験なことや一面的な理解しかできていないことに対して、独りよがりのドグマテイックな見方や考え方を、部下に押しつけていることになります。
  

③情報の不十分さを補う
 部下とのコミュニケーションでは、上司はフランクな雰囲気で、むしろ思い切って謙虚になる姿勢が大切です。
 ラベル化された情報の意味は、本来的に多様であり、価値ある情報が隠されている場合もあります。そういう意味で、いつの場合でも、情報自体の曖昧いさで、お互い分かり合おうことには限界があっるものです。

 「君の言いたいことは、こういうことかな。こんな理解でいいかな。僕はこう思うけど、君はどうかな」、「いや、そうじゃないんです。こういう事なんです」というように、双方が確認を取りながら、対話を共振させれば、表札づくりで、相互に納得のいく合意を得たり、新しい発見をすることが容易になります。
 
④情報を弁別する
  情報については、よく「価値のある情報」、「価値のない情報」という分類的な言い方がされます。部下が顧客から取ってきた情報や部下からのアイデアや提言等、多くの情報が「平凡だ。こんなことは分かり切っている。おかしい、こんなはずはない」等という上司の評価で乱暴に棄てられてしますことが多いものです。
 
 表札づくりでは、似たようなラベルでも、本来、個々人の問題意識や価値観でラベル化された情報として、情報が持っている微妙な可能性やチガイを積極的に明確にします。

 集めた情報、集まってきた情報、寄せられた情報を大事にするということは、何よりも豊かなイマジネーションを働かせ、一個一個の情報の意味合いを率直に丁寧に受け止め、きびしく内容を認識し、弁別する姿勢を持つことです。

⑤具体性を捨て、本質を引き出す  

 部下が持ってきた情報の本質的な部分を見ようとせず、偏見を持って粗末に扱ってしまうというのには理由があります。情報の本質をベールのように覆っている具体的なものに関心が行ってしまうからです。

 例えば、「顧客からこういうクレームがあった」というラベルがあったとしまう。そこで、「B君やC君なら、その場で顧客に説明し、解決してくるのに、A君はいつもお客の言いなりだ」と、上司はかねがねA君に不満を持っていたとします。
 こうした場合、「A君からの情報」という具体的な理由で、上司は情報が意味する本質的な部分に関心が行かなくなっています。
 また、クレーム情報と言えば、どんなクレームがどれだけあったか、今月は何件に上っているかというように、顧客別やクレーム種類別に分類し、数字やグラフで表すといった仕方がなされる場合が多いものです。
 
 このような「分類し、分析する」という処理不法は、情報の具体的な部分に焦点をあてるだけで、一つ一つのクレーム情報に関して表面的な部分しか見ていません。
 それでは、それぞれの情報の具体性を棄てれば、後に残るものは何か。それは本質的な部分です。顧客にとって、なぜクレームなのか、顧客は何を評価しているのか等、ラベルの記述を通して、クレーム情報のもっている本質的な意味を探ることで、その隠された使命を見抜くことができます。

⑥情報を同定する
 一つ一つのラベルの情報に共通した本質を見抜き、表札として取り込むプロセスを同定プロセスと言います、
 上司と部下の関係で言えば、部下の意見や考え方、情報を一つ一つ弁別し、自分の意見や考え方、あるいは自分がこれまで経験したり、体験したりして得た情報と共通点があることを発見し、その共通点を明確にし、共有化するという一連の対話のプロセスに通じるものです。
 
 少々ミスがあったり、手間取ることがあっても、部下に仕事を任せることができるというのは、結局、上司が部下を本質的なところで信頼できるからではないだろうか。また信頼できるということは、部下と基本的なところで同じ部分があると「同定」できるからではないだろうか。

 ここでいう「同定-Identification」と言う言葉は、湯川秀樹博士の「同定の理論序章」の中から引用したもので。
 「先ずは、それぞれについて異なる存在として認識した上で、しかし、結局は同じことだと見る」という意味です。 
 
 湯川博士は、創造的問題解決の手がかりは「類推」の能力に見いだされるとして、「同定の理論」を提唱しています。
 「ニュ-トンがリンゴの落ちるのを見て、なぜ月は落ちてこないのかを疑った」という話をもとに、「リンゴと月の運動運動に共通した本質を類推(同定)して、万有引力を発見した」という趣旨の話を紹介しています。

 つまり、「リンゴが落ちる」、「月は落ちない」という二つの事実を明確に認識し、そのチガイを弁別した上で、しかし、「リンゴが落ちるのも、月が落ちないのも同じだと同定して、リンゴとか月とかの具体性は棄て、双方に共通した本質である「万有引力の法則」を発見したという話です。

 「M5型問題解決技法」中で、課題をコンセプト化する思考プロセスは、この同定の理論がベースになっています。
 「表札づくり」は、個々の「具体策」のラベルの意味を探り、隠された使命としての本質的な意味を引き出し、表面的な具体性を棄て、結局、「何のために、何をどうしなければならないのか」という、共通した行動の本質的な意義をステートメント化し、共有しあうプロセスです。


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