KJ法による
課題のコンセプト化
に求められる
弁別力・同定力


KJ法の位置づけ

 ベルヒュード研究会は、「M5型組織:問題解決力ある組織」をいかにつくるかについて、日常的な日本語によるコミュニケーションによる「Critical Thinking Approach」をベースにした「M5型問題解決技法:BSTプログラム」を体系化しました。
 この「BSTプログラム」では、「KJ法」を使って、「具体策」をラベル化し、「課題」をコンセプト化し、「A型図解化」し、戦略的的な問題解決を行います。課題設定の不十分さは、「Critical Thinking Approach」で補い、80点位の問題解決を保証する「Semi-Exact Science」という位置づけを行っています。


「KJ法」による
創造的情報処理プロセス

基本は表札づくり

 「KJ法」は、川喜多二郎元東工大教授が発表した創造的な情報処理をベースにした問題解決技法です。「KJ法」を使った「課題設定」のための「情報処理プロセス、次の3つのステップから成っています。

第一ステップ
広く具体策を受け入れ、率直かつ丁寧にその意味するところを理解し、的確に「
ステートメント化」する。
 

 例えば、部下の言いたいことを十分聞いてやり、「結局、君はこういうことをいいたいのか」と確認しあう姿勢や力が大事です。
 
第二ステップ
同じような意味の情報を集め「
グルーピング化」する。

 ここでは、一端「同じようだ」と認識した情報について、それぞれが意味するところの微妙な「違い」がわかる力が必要です。この力を弁別力といいます。各銘柄のビ-ルの味の違いがわかる力のようなものです。
 
第三ステップ

複数の同じような意味の情報間の違いを明確にした上で、その情報が持つ具体的な部分を捨て、それぞれに共通した本質的な部分を発見し、その内容を「表札」として的確に表現する。
 
 この共通した本質的部分を浮き彫りにし、表札をつくる力を
「同定力といいます。会社等の組織で言えば、上司が頼りない部下にも仕事をまかせられるのは、結局、部下と自分との間に共通した部分を認識し、同定できるからだと言うことができます。


背景としての
湯川博士の道程理論序章

  博士は、創造性の問題解決の手がかりが「類推」の能力に見い出させるとして、市川亀久弥氏が、この「類推」の問題を「等価変換論」という形に発展させたとして評価しています。
 博士は「ニュ-トンがリンゴの落ちるのを見て、なぜ月は落ちてこないのかを疑った」という話をもとに、「リンゴと月の運動の違いを認めた(
弁別した)上で、両者の運動に共通した本質を類推(同定)しようとして、万有引力(表札)を発見した」という趣旨の説明を行っています。


「2つの話」の紹介

第一は
小椋佳さんの「弁別」と「同定」に通じる話

 つい昨日の「TBS・サンデ-モ-ニング」で、小椋さんはやまとことばの
「ふるまい」という言葉をもとに、自分らしくふるまい、生きることについ「弁別」と「同定」に通じる話をされていました。

 これまでの組織の中で、人々 にとって、自分らしくふるまい、生きることは、かえって不自由なことであった。しかし、和と協調を暗黙に強制する組織のタテマエを
断る(ことわる)勇気が必要だ。断るとは、異なる(ことなる)に通じ、自分と周囲の「違い」を主張することである。
 
 和も協調も
異なる人々理り(ことわり)をもとに一緒になる(同定)ことではないだろうか。この意味で自分らしく「ふるまう」とは極めて創造的な生き方である。


第二は
法隆寺夢殿の救世観音菩薩像

「和を以って尊し」話
 「M5型組織」の中で、「和と協調のM1型組織」からの解放についてふれました。この組織観はとりもなおさず、聖徳太子の「和を以て尊しとなす」という思想と対峙せざるを得ません。
 
 このことに関連して、哲学者の
梅原猛先生が「隠された
十字架」の中で、次のような趣旨のことを述べています。
 
  聖徳太子の現し身と言われる
 救世観音は、光背が直接釘で頭
 に止められている。

   
  哀れな太子よ、あなたの子孫
 を殺した者の子孫は、一族の相
 次ぐ不幸におののき、太子自身
 にあなたの子孫達の鎮魂を行わ
 せようとしいる。
  
  怒れ、太子よ。あなたの内面
 に鬱積している怨念を、激しい
 行動を伴う怒りに変えよ。

  あなたは仏教という理想をも
 っていた。「和を以て尊しとな
す」と17条憲法の中で言っている。
 
 あなたの理想は「和」だ。怒り、恨みはあなたの理想に反する。
しかし、太子よ、あなたは知っている。和という言葉は、現支配者にとってはいつの場合も有利であり、被支配者にとってはいつも不利であることを。和とは忍従の別名である

 あなたの霊を薄暗い八画堂に押し込め、行動の自由を奪い、子孫の鎮魂を行わせようとしている、この残酷きわまる屈辱を、あなたは和を以て耐えようとするのか。和の道徳を捨てよ。
 
 
太子よ、今こそあなたは、和の精神を捨て、忍従を捨て、微笑を捨て、あなたが説いた道徳を、今、あなた自身が弊服のごとく捨てねばならない

 太子等身大のこの仏像には、救世観音という名がつけれている。その名ゆえに、太子は屈辱を受けた人間に許される唯一の権利である怒りすら奪われてしまったのか・・・・・・・・。


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