本邦研修
3年度


研修期間
2007
213日 ~ 228

研修対象者
貿易開発省中小企業開発局幹部職員1名
商貿易工会議所幹部職員1名
商工会議所幹部職員1名
中小企業支援ビジネスプロバイダーコンサルタント4名


概要

講義は、経営の基本、管理技術の基礎を主とした。管理技術では、「QC7つ道具」を実際に使用した経営診断、商店街診断のケーススタディに多くの時間配分をした。

  中小企業への視察訪問は、わかりやすい課題について、情報を開示し、経営者と率直に質疑応答できる企業を選んだ。訪問前に訪問先に関する概要説明、解説を行い、実際の具体的課題を観察しながら、その課題及び解決方法、将来の課題等、帰国後実戦使用できる内容にした。 

 中小企業支援関連機関としては、支援の実務が分かり易い神奈川中小企業支援センターを1機関に絞り視察訪問した。

 講義内容は、アルメニアにおける「JICA」の派遣講師によるトレーナーズトレーニング研修内容を確認し、重複を避け、実務的な研修とした。


主な講義内容

(1)経営理念とその重要性

 経営理念は、会社の存在意義や使命、会社の経営目的を表現したものである。経営理念は、社会の理法や自然の摂理にかなった正しい社会観、人間観に根差したもので、 社会が大きく変動しない限り、長期間変らないものと理解される。企業にとって経営理念は、経営者及び社員の行動の基本、基準であり、建前ではなく、これに向かって進む本音であり、壁にぶち当たったときに判断の基準となるものである。従って、企業活動の全てが経営理念と矛盾してはならないと解説した。その上で、各社の経営理念事例、経営理念の作成手順を紹介したた。

(2)財務管理

 アルメニアにおいて、二重帳簿は常識であるが、正しい財務情報が提示されないと正しい経営診断ができないことを強調した。財務管理は、経営の基本として、講義で説明した。経営管理では、「モノの流れ」と「資金の流れ」を中心とする財務管理を解説した。

(3)観光事業

 アルメニアは、旧ソ連邦の時代から観光産業が中心であった。アルメニアにおいて観光産業は維持向上重要である。神奈川県の観光事業の概要について。神奈川県観光振興課長より神奈川県の観光産業について説明を受けた。

(4)創業・起業支援

 神奈川中小企業センターの創業、企業支援制度について説明した。人材育成面では、起業家セミナーや経営塾、資金の提供面では、起業家資金や設備貸与制度や設備資金貸与制度、商品の販売面では、受発注商談会や取引斡旋支援制度を紹介した。

(5)労務管理(社内研修制度 人事評価制度) 

 日本企業の社員教育、ビジネスキャリア資格制度を紹介した。ビジネスキャリアは、事務系従業員を対象とする人材能力に関する資格認定制度で。厚生労働大臣が認定した民間教育機関の行う講座を受け、中央職業能力開発協会の試験に合格して得る資格制度である。

(6)工場診断・商店街診断ケーススタディ

 研修生は、コンサルタントとしての実務関係者が多い。製造業、観光事業、商店街に関するケーススタディは、今後のコンサルティング実務に活用できるように、できるだけ多くの業種に関するケーススタディを準備した。
 特に製造業では、コンサルタントとして応用可能な事例として神奈川県の経営支援制度を活用して、赤字決算事業の会社の問題分析から解決までの具体的な手順を解説した。

 製造業における品質問題の解決に、管理技術の活用は欠かすことができない。特に問題の分析では統計的手法が重要である。企業から品質問題の解決の依頼があったことを想定して、品質問題の実例をもとに「QC手法」を使って解決する方法を体験してもらった。「QCの7つ道具」の中から、使用頻度の高い「パレート図」、「ヒストグラム」の作り方を解説し、実際に作成し、研修生が帰国後活用できるようマニュアル化し、提供した。

  

2 課題検討討議

 経営コンサルタントが抱えている課題と悩みに関する問題について討議を実施した。当異業種交流連携協議会のベテランコンサルタント4名が担当した。講師は、自分の経歴や経験談を約10分間話題として提供し、得意分野を研修生にアピールし、各自の課題に最も適切な講師を選んで質問できるよう配慮した。

 各講師は、経営顧問をしている企業の問題点の解決事例をケーススタディの形式で資料化し、解説した。実際の講義では、すべて実名で行ったが提供した資料では、具体的な課題や問題の内容は、社外に対して秘密保持の関係から公開ができないので企業名もアルファベット頭文字での表現とした。

3中小企業支援機関訪問

  神奈川産業振興センターの事業年度計画書の提供開示及び予算を含めた実務的な詳細の説明を受けた。経営総合相談では、具体的相談に関する具体的内容と件数などデータを開示して説明した。使ええる金額には大きな違いがあるので、そのまま実際に応用することは難しいかもしれないとの感想があった。 

4経営診断ケーススタディ

 第三回の研修は、コンサルタントやトレーナー対象の経営診断およびケーススタディ主体の研修にした。ケーススタディは11社を原則とし、訪問前に企業に関する概要説明、解説を講義の形で実施した。訪問視察では、できるだけ実際に現場で課題及びその解決方法、将来の課題などを解説してもらう方法をとった。

(1)課題テーマ別ケーススタディ

①クレームと経営責任
 最近、工業製品だけでなく食品についても品質問題が多く発生し、回収せざるを得なくなっている。ここ数年のこれらの品質問題を取り上げ、その原因、対応について、経営責任の観点から解説した。

②現場改善と小集団活動
 改善という言葉は、日本語であるが、そのまま世界の生産現場の生産管理や品質管理の工程で使用されている。製造現場での診断や指導に長い経験と実績のある講師が「改善とは何か」、「改善がなぜ必要なのか」を解説した。

③労務管理
 企業内で労務管理上発生するいくつかの例を挙げて、その対応方法を解説した。職能資格制度と成果主義導入の資料も提供した。

④創業支援
 事前に要望のあった創業支援について、日本の支援機関やコンサルタントが実施している事業計画書の作成方法、創業時に必要な届け出書類、経理事務の手続き、決算書の作成など、創業する際に必要な知識を解説した。

(2)製造業視察とケーススタディ

 講師がアドバイザーをしている各種製造業の問題解決事例をケーススタディし、作業のマニュアル化の実際を提供した。

①S工業株式会社
 S工社は、大型表示装置を製造販売する会社である。工場の現場を視察しながら、問題点の解説を受け、工場の会議室にて、診断の手法について資料を基に詳細な説明を受けた。
 また、
経営理念、ムダの排除、5Sのスローガンは、工場内各所に掲示しており、毎月の売上高は、社内の食堂に掲示して公表している実態を見てもらうことができた。



S社での記念撮影


畳敷きの和室に座しての食事に招待戴いた    

TS株式会社
 工場見学は可能であるが、経営実態を公表できないとする珍しい企業である。特別視察の許可を得て案内することができた。この会社独自に実施している「4S」の状況やスローガンなどを工場内に掲示してある改善活動の実態を見てもらった。

③株式会社BSZ
 BSZ
は、自動車修理工場の一つ。自動車の修理だけでなく、オークション販売を行う会社であり、夏の海で使用するジェットスキーの修理も行っている。

⑤有限会社TK商店
 日本特有な食料品である豆腐やこんにゃくなどを製造する食品製造業である。豆腐を製造する全体の工程の説明を受けた。

(3)観光施設視察とケーススタディ事例

 「ソレイユの丘」は」ディズニーランドや大型レジャー用公園・遊園地とは大きく異なる神奈川県の観光施設の一つである。当公園は、PFI方式で運営しているのが特徴である。視察の前に、歴史的背景や経営母体を説明した。「ソレイユの丘」に入場し、講師が解説を加えながら実際に視察した。視察後、今後の課題など解説し、討議した。

 PFI方式とは、「Private Finance Initiative」の頭文字をとったもの。公共事業を実施するための手法の一つ。民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法。地方公共団体が発注者となり、公共事業として実践している。

(4)商店街視察とケーススタディ事例

 横浜市で歴史が長く、大変にぎわっている。今回の講義で使用し、提供した資料は、アルメニアの商店街診断にもそのまま使用できる価値の高いものである。実際にこの元町商店街を視察しながら、問題解決の事例を解説した。



元町商店街の視察

研修生の感想
BSPトレーナー 経営者の妻
今回の研修で得た知識を自分の会社に応用したい。

②商工会議所幹部
日本で習得した知識は中小企業と仕事をする時に、人材育成、研修や経営相談の時に使う。

BSP会社社長
会社が実施しているコンサルティング業務を通して、アルメニアに浸透させる。

④トレーナー BSP経営者の妻
自分たちのコンサルティングサービスと研修内容の質を見直したい。

⑤若手女性研修者
自分の会社の同僚たちや会社経営者を対象の研修に使いたい。実際に応用して事業を成功させたい。




研修生全員と講師の記念撮影