企業経営者に
課された課題は?!


 ソ連邦から独立直後の企業は、経営面では同族経営的な企業が多く経営基盤は脆弱であった。社会主義経済体制における品質管理や企業経営、海外マーケティングの不足が企業の成長のボトルネックになっているいた。しかし、多くの企業経営者はそれに気がついていなかった。


社会主義経済体制下の企業経営
主な実態

(1)経営者の問題意識の低さ、無さ?!

「事業計画とは自分で立てるもの、作るものではなく、与えられるもの」という社会主義体制下の意識が経営者に強く残っていた。経営者の中には、「我々は簡単に頭の中を切り替えられない」とあきらめの気持ちを明言する社長もいた。製造設備がほとんどが動いていない工場で、我々の問いかけに「営業も工場も問題がない」と平然としていた経営者もいた。農耕機械を生産していた工場には、自分の会社が「問題を持っている」という意識がなく、どのように対策してよいかを考えることができない姿があった。

 工場の稼働率は下がり、30~40%になったが、これを問題としてとらえず「労働者を雇用し続けている」ことを自慢げに話す経営者も見られた。旧ソ連邦時代の方がよかったと言うだけでなく、経営者や次の世代に改善改革してもらう以外にないという経営者がほとんどであった。

(2)老朽化した設備が残った

  農機具の製造販売企業にあっては、それまで製造していた製品は、アルメニア以外の旧ソ連邦向けの大農場向け仕様の商品であり、アルメニアのようにわずか人口300万人の国の小規模の農場に使用するには、製品の性能や規模などの点で対応できるものではなかった。
 経営者は、自社製品がアルメニアの国内市場の需要の実態にマッチしていなかったことにさえ気づかず、設備の更新を怠り、老朽化した設備になってしまっていた。ソ連邦時代は、ハイテク分野を担っていたが、独立後は新製品の開発の必要性も感じることなく、設備も技術も老朽化していった。

(3)政府を信用できない経営者

 政府の企業、特に中小企業振興のための新しい施策に対して、その趣旨を理解しようとせず、会社の概要や売上高さえ隠そうとする経営者も多かった。財務諸表を公表すれば、税務署に漏れ伝わり、隠していた利益が見つかり、課税されることになることを極度に恐れていた。会社の仕事の内容や販売金額だけでなく、正しい従業員数さえ隠そうとしていた。時代が大きく変化しているにもかかわらず、経営者が政府の新しい施策を信用できない現実があった。


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