第2章 日本経済は、 ここ30年「ゼロ成長」が続く |
1 日本は「6シグマ経営」に学ぶ 「ベスト・プラクティス運動」に乗れなかった 日本経済は、1980年代、ものづくりの面で世界の企業を圧倒倒していた。それは、製造現場の社員が「QC7つ道具」を使って、情報を共有し、知恵を出し合い、設計や技術部門も巻き込んで品質問題を解決する「QCサークル活動」によるものであった。 今日アメリカは「6シグマ」から「IT」、「AI」へという経営革新によって、従来型大企業の再生とベンチャー企業の創出に成功し、再び世界市場を大きく支配している。 アメリカをはじめ世界経済の復活は、J・ウェルチの「21世紀のIT時代に合致したビジネスの仕組みをつくる」という「6シグマ経営」の様々な成功から学ぶ「ベスト・プラクティス(Best Practice)運動」の広がりによってもたらされたと言って過言ではない。 一方日本は、20世紀後半、国際的な世論の批判を受け、国内需要の拡大、海外製品の輸入拡大、海外生産へのシフト等、輸出中心型から国際協調型への構造転換を図ることになった。 新たな競争時代を迎え、日本にも「6シグマ」の導入方法とともに、J・ウェルチの「経営哲学書」や「6シグマ」による「戦略ノート」の実践本が次々と紹介され、「6シグマ経営」の導入は、大企業を中心に大きな関心事ととなった。 しかし、「6シグマ」が一部大手メーカに導入されることはあったが、深く定着し、中小企業から小規模企業者の経営にまで広く日本の企業に広まり、浸透することはなかった。 |
2日本企業の経営プラクティス力 調査63ケ国中最下位という悲惨な評価 今日世界の企業は、「6シグマ経営」の延長線上のもと、「デジタル経営」に挑戦する時代になっている。アメリカの企業を先頭に、世界の企業は、「IT化」から「AI化」まで、「デジタル経営」の導入を競いあっている。 「AI:Artificial Intellgence」は、ヒューマンエラーの回避が難しい分野や顧客対応に大量の人手がとられる分野で、多様なビックデータをコンピューターに学習させ、パターン化し、ベストの作業方法を自動化し、エラーのゼロ化を図ろうとするものである。 「センサー」と「インターネット」を接続した「IOT(Inteli gence of Things)」と呼ばれる機器分野では、質の高い大量のデータを収集し、分析し、「家庭電器製品」や「スマートスピーカー」、「自動運転システム」等を開発する「AIビジネス」が生まれ、既に世界的なビジネスになっている。多様なビックデータをコンピューターに学習させ、社員に代って確かな「ヤリトリ」をしてくれる「対話型AI:Chat GPT」、すなわち「人間ロボット」も実用化段階に入っている。 しかし、「日本企業のビジネス効率性」についての「世界競争力年鑑 2021」によれば、日本経済は1995年以来ゼロ成長が続き、日本企業の国際競争力の総合順位は、かつての世界トップの座から、63位中34位へ転落という悲惨な状況にある。 今日、世界のビジネス界で重視されている「デジタル技術の活用による業績向上」、「意志決定へのビックデータの活用」は、最下位レベルの評価である。 さらに、①「意志決定の速さ」、②「機会と脅威への素早い対応力」、③「あらたな機会への柔軟な適応力」という、世界で最も重視されている「ビジネスの効率性」に至っては、63ケ国中60位代の評価である。 |
3経済産業省が 「DX推進ガイドライン」を発表 「2025年の崖」の警鐘を鳴らす! 経済産業省は、日本企業が世界的なビジネス競争において、悲惨な低迷状況にあるとして、2018年、「DX推進ガイドライン」を発表した。 「DX:Desital Transformation」とは、日本の企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデル、さらには企業の組織文化を変革し、競争上の優位性を確立することである」と定義し、「日本の企業が、『DXを進めるための課題』を克服できなければ、将来的に大きな損失を生むことは容易に予測できる」として、これを「2025年の崖」と警鐘を鳴らしている。 日本の企業にとって、経済産業省の「DXを進めるための課題」とはどいうものか? 「DX」の「革新は、顧客や社会のニーズに対応し、 |