「2025年の崖」の警鐘に応えて
日本企業で働く
社長から社員まで
全員必携

新日本版6シグマ経営
ガイドブック


第3章

ボトムアップ型
「新日本版6シグマ経営」
2大課題
 

「People Out」
 「M1型組織」から「M5型組織」へのモデルチェンジ!

 世の中には、さまざまな目的と形態を持った組織がある。家庭も学校のクラスも組織だし、組合や自治会や同好会も組織である。企業や官庁にも大小さまざまな組織がある。
 ベルヒュード研究会は、世の中に存在する組織を分類し、「M0型組織」から「M5型組織」までの「6つの組織」(図1)をモデル化し、「困った組織とどうつきあうか」(ダイヤモンド社)を発表した。

ここでは、世界の企業に一般的なトップや上司の「指示、指令」で動く組織を「M0型組織」、日本の成長拡大路線を支えた「和と協調」の組織を「M1型組織」としてモデル化した。

日本企業の「M1型組織」は、若者や女性を中心に働く人達の意識や価値観、働き方の多様化で、「指示待ち」に戻ったり、「好き嫌い」で動く人間が登場する「M2型組織」や「羞恥心」を行動基準とし、気が進まない仕事からはオリてしまう人間が登場する「M3型組織」へと変容し、弱体化してきている。
 
 
今日の日本企業は、グローバルな競争時代を迎えて、また、IT化時代に入って、情報の共有化が進む中、深く根ざした「M1型組織」から脱却し、多様な人材が互いに認め合い、情報を共有化し、自由闊達にアイデアを出し合い、課題を設定し、行動する「自立型人間集団」としての「M5型組織」が期待されている。
  
 確かに、日本の企業にも「新しい価値」の実現をめざし、やる気のある「M4型使命感人間」の登場は見られる。だが多くは、「M0型組織」や「M1型組織」の旧勢力に飲み込まれ、「M2型好き嫌い人間」や「M3型羞恥心人間」を戦力化できず、挫折し、敗退しているのが現実である。

 「M4型使命感人間」が挫折し、敗退し、去って行く際の最後の言葉は、通常「さようなら」である。しかし、ベルヒュード研究会は、日本企業は、多様な自律型人間で構成する、問題を解決するための簡便な「道具」を持った「M5型組織」をつくらなければないとして、「M4型使命感人間」は「さようなら」ではなく、中国語の「再見(サイチェン)」がふさわしいとした。

 J・ウェルチは、「販売する商品が原子力発電プラントであれ、キャンディーバーであれ、違いはさ
さいなものた」として、21世紀への生き残りをかけ、業種、規模を問わず、これまでのアメリカ企業に一般的な指示・命令で動く組織を否定し、日本企業が世界にった「和と協調」の組織をも越えなければならないとしている。
 それは、経営の「No.1、2戦略」を踏まえ、社員が「経営方針、目標」をよく理解し、自由闊達に意見を出し合い、迅速に結論を出し、行動する「小さい会社のフラットな組織」をモデルとした「M5型組織」をめざすというものであった。


 J・ウェルチは、「6シグマ経営は、社員にかかっている」として、次のように熱く語りかけている。
〇自分の仕事に自覚を持って欲しい。
〇仕事の指示を待っているようでは困る。
〇自分で意志決定していい。
〇自分たちの運命は、自分たちの手の中にあるのだ。
〇自分たちも経営に参加しているという気持ちをもって欲しい」

 
J・ウェルチは、こうした語りかけに応えられない社員は辞めてもらうという、「People Out」という強い施策によって「M5型組織づくり」をめざしたのである。
 しかし、日本の企業では経営トップに、J・ウェルチのようなパワフルなリーダーシップを期待することは一般的に困難である。当時、GE社が日本に160億ドルの投資をしたことについて、「なぜ、日本に進出するのか」と問われ、「日本には教育水準の高い労働力がある。規制もある。規制のいい加減な国にいけば規制のありがたみがわかる」といって、中国やロシアと日本との違いを語っている
 そして、「日本がこの先3年間で、どんな姿になるかは予測できない。しかし、これから5年から7年の間に、活気ある強力な日本企業の姿があらわれるはずだ。マットに沈められているという思いをバネに、経営と社員が協力して働く企業があればだが」と語っている。
 さらに、「頭のよい国は、自分達なりの打開策が分かっている。それは生産性の高い、オープンな組織社会をつくることだ。日本はその状態になりつつあるのではないか」と期待している。
しかし、「日本の企業は、
根底から変わろうとしているが、ホワイトカラーの生産性の低さには、目に余るものがある」という厳しい指摘を忘れていない。


- 図1 -

6つの組織モデル
ー 困った組織とどうつきあうか ー

組織モデル

主な特徴

M0型

唯我独尊、指示命令の組織

組織は滅私奉公型人間を求める
社員は上司の指示命令で動く

M1型

タテマエを善とする組織

組織はタテマエ重視の協調型人間中心になる

M2型

好き嫌いがまかり通る組織

組織は好き嫌い優先で動く人間に手をやく

M3型

羞恥心がまかり通る組織

組織はイチオリタ人間の登場で無力化する

M4型

存続が危ぶまれる組織

組織に無手勝流の改革派が登場する

M5型

モノの道理を原則とする多様な人間の集合組織

組織は問題解決技法を道具として、改革が進む。





2「Work Out」
 ボトムアップ型
 「新日本版6シグマ経営手法」
 「BSTプログラム」の体系化!

 20世紀後半、日本の企業では社員や組織の創造性開発に関心が深まり、東京工大の川喜田二郎教授が提唱された「W型問題解決フロー」に沿った「累積型KJ法」という問題解決技法が流行していた。
 ベルヒュード研究会は、IT時代の到来にあって、情報の収集と創造的な処理技法を武器として、課題の設定力と解決力ある「M5型組織」をつくるという問題意識があった。「M5型組織」が「道具」とする「M5型問題解決技法」は、ビジネスの世界で使える厳密で、簡便であることが第一として、「あらためてKJ法の理論的体系化をこころみる」(有文社)を著した辻善之助氏の指導を受けていた。
 
 21世紀に入って、J・ウェルチの「People Out」による組織革新と「Work Out」による「業務革新」を両輪とする「6シグマ経営」との出会いがあた。
 それは、アメリカ企業の「指令統制」の「M0型組織」のみならず、日本の企業に伝統的な「和と協調」の「M1型組織」をも否定し、「小さな会社」の組織をモデルとして、多様な社員のやる気やアイデアや知恵を活かすことができる「M5型組織」をつくるというものであった。そして、無手勝流では駄目だとして、社員のやる気やアイデアや知恵を活かすことができる「道具:DMAIC」を重視し、社員への教育訓練を徹底したのであった。
 
 ベルヒュード研究会は、経済産業省の「2025年の壁」の警鐘を受けて、J・ウェルチの「6シグマ経営」を再び学び直し、ボトムアップ型「新日本版6シグマ経営」を体系化し、その「道具」として、「DMAIC」に変わる「BSTプログラム」を提案することになった。
 それは、「M5型問題解決技法」をベースにしたもので、川喜田二郎教授の「W型問題解決フロー」に沿って、現場のボトムアップ力で「6シグマ戦略課題」を設定し、解決に取り組む、次の「3段階」で構成するプログラムである。

第一段階 
問題提起ラウンド
経営による
ボトムアップ型「新日本版6シグマ経営」の宣言
「N0,1、2戦略」をもとに、経営方針、目標を明確化し、全社員と共有化する。

第二段階
現状把握、具体策、基本的課題設定ラウンド
各部門による
「6シグマ戦略課題」の設定
「顧客の声、内部の不良要因」の現状を把握し、具体的なアイデア
を出し合い、「6シグマ戦略課題」を設定する。


第三段階
実行計画作成、実行・進捗管理ラウンド
各部門のチーム、個人による
「6シグマ戦略課題」の「実行計画」の作成、実施
実行計画」について、担当、日程を決定し、進捗管理を行い、成果を維持、管理する。
 





W型問題解決フロー
(川喜田二郎)
 


W型問題解決フロー
に沿った
ボトムアップ型
新日本版6シグマ
経営
BSTプログラムフロー




4J・ウェルチの期待に応えられるか?
 

 
ベルヒュード研究会は、日本国の危機ともいうべき「2025年の崖」という警鐘に応え、世界企業の21世紀の生き残りを賭けた経営革新を先導したJ・ウェルチの「6シグマ経営」に真摯に学び直すことになった。
 そして、日本企業が本来強味として持っている社員のヤル気や知恵を出し合い実行する「ボトムアップ力」を具現化できる「BSTプログラム」を提案することになった。それは「BSTプログラム」を「道具」として、経営トップの「6シグマ経営宣言」を踏まえ、現場が「6シグマ戦略課題」を設定し、解決に取り組む全社的な問題解決型経営である。
 
 しかし、J・ウェルチは、「日本企業は根底から変わろうとしているが、ホワイトカラーの 生産性の低さには目に余るものがある。日本がこの先3年間で、どんな姿になるかは予測できない。だが、これから5年から7年の間に、活気ある強力な日本経済の 姿があらわれるはずだ。マットに沈められているという思いをバネに、経営と社員が協力して働く企業があればだが」と語っている。
 そして、「
頭のよい国には、自分たちなりの打開策が分かっている。それは生産性の高い、オープンな社会をつくることである」と、日本への期待感を語っている。


 最後の4章では、J・ウェルチの「頭のよい国には、自分たちなりの打開策が分かっているはずだ」という期待に応えて、ボトムアップ型「新日本版6シグマ経営」の「道具」としての「BS
Tプログラム」について、「3段階」別に使い方のポイントについて整理し、日本の様々な企業が自社の実態に則して、より簡便により確実に使える「BSTプログラム」へさらなるバージョンアップを図ることができるようにしたい。
 


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