アラブの習慣と文化

酒好きには厳しいサウジアラビア
 イスラム教の国々では、アルコールは厳禁である。サウジアラビアをはじめイスラム教国ではアルコールは持ち込み禁止で、空港の税関で見つかれば没収されてしまう。
 お酒の害悪について、イスラム教のコーランに、下記の言葉が記述されている。  

「酒は大きな罪であるが,人間のために(多少の)益もある。だがその罪は,益よりも大である。」 第2章219

「あなた方信仰する者よ、誠に酒は忌み嫌われる悪魔の業である。これを避けなさい。恐らくあなた方は成功するであろう。」 第5章90。

「悪魔の望むところは、酒によってあなた方の間に、敵意と憎悪を起こさせ、あなた方がアッラーを念じ、礼拝を捧げるのを妨げようとする。」第5章91 
サウジアラビアは、「キツイ、汚い、危険」と言われる「3K」と言われる労働のほとんどを南西アジア、東南アジア及び一部の中東諸国からの出稼ぎ労働者によって行われている。
 ある時、東南アジアからの出稼ぎ労働者はどこから入手したのか、アルコール類を飲んで気持ちよく酔って街の中を歩いていました。これを紅海沿岸にある商業都市ジェッダの宗教警察に見つかり、本国へ強制送還になってしまった。


暑いサウジアラビアでは
酒で民族は滅んでしまうかも知れない

 しかし、お酒に厳しいサウジアラビアでも、昔からお酒がないわけではない。どこで造られるのかわからないが、"サデーキ"という現地で入手できるお酒がある。"サデーキ"と言うのは、アラビア語で"友達"と言う意味だそうだ。全くうまい名前を付けたものである。    
 ある時、友人が、極秘にどこからかこの"サデーキ"を入手してきた。早速、親しい者が集まって、これを飲んだ。あまりおいしいとは思えないが、アルコールの度合いは強い。しばらくアルコール類は飲んでいないからか、すぐに酔いがまわり心持ちが良くなってきた。久しぶりの"お酒"で話が弾む。ほとんどあっという間に1本の"サデーキ"は、飲み干されてしまった。

 この"サデーキ"、相当アルコールに強い人でも少し飲みすぎると二日酔いになる。良質ではないアルコールが添加してあるのかもしれない。値段は忘れてしまったが、相当高かったようである。 サウジアラビアの夏の夜空は、満天の星で実に美しい。住居のフラットな屋上で星空を眺めながら、ここでビールが飲めたら幸せだろうなあと何度思ったか知れない。

 もし、あの暑い、娯楽のないサウジアラビアで酒が自由に飲めたらどうなるだろう。酒類が自由に安く入手できたら、これは多分最高の娯楽になってしまうだろう。酒が自由に飲めれば、必ず飲むに違いない。ストレス発散と言う理由をつけて、毎日誘惑に負けるかもしれない。
 しかし、昼の暑さは毎日40℃を超す暑さである。休日に太陽の下で飲みすぎて眠り込んだら、大変なことになるに違いない。熱射病どころか干上がって死にいたる。つまり、熱中症で死亡する人が毎日のように発見されるに違いない。
 
 砂漠に生活する民族には、酒は百薬の長どころか毒薬に等しいのである。お酒がたくさんあり、安く入手が可能になり、飲み放題になれば民族は滅んでしまうかも知れない。アッラーの神が、"酒は悪魔の業とし、その罪のほうが益よりも大きい。"と判断し、禁止した理由も理解できるような気がする。

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