アラブの習慣と文化

ガソリンより高価なミネラルウオーター

 日本には、"湯水のように使う"ということばがあります。最近は、渇水期に水不足が新聞をはじめマスコミをにぎわすことがありますが「水と空気はただ」と感じている日本人は多い。
 快適な生活をするために、水の供給は欠かせない。我々は、水道の蛇口をひねればふんだんに水が使えるが、砂漠の中近東では、水は貴重品である。周辺は海であり、海水はある。しかし、海水をそのままでは生活用水として使用できない。砂漠の真ん中では、水がないので代りに砂を使うと言われるほどです。

海水を真水に変えるために、淡水化プラントを建設し、大変なコストをかけている。日本では洗濯に飲料水を使用し、すすぐ際にも新しい水を流しっぱなしですが、サウジアラビアでは、このようなことはまず、考えられません。炊事用の水もいかに少ない量を有効に使い、無駄を少なくするかを工夫している。

 私は飲料水は、ミネラルウオーターを購入していましたが、すべてギリシャなど欧州からの輸入品で、確かに、水の値段より、ガソリンの値段の方が安い位でした。 
 たいていの日本人の家では、ミネラルウオーターの入った段ボールをたくさん購入し、水には困らないように備えていました。自然環境の厳しいサウジアラビアでは、日ごろから栄養補給と十分な休養による体力の維持に努めるとともに、水分の摂取を怠らないよう留意する必要がある。
 自宅では、ミネラル・ウォーターですが、会社では通常の水道水です。飲用等に利用する場合には、十分に沸かします。ガフアというアラビアコーヒーと紅茶がありますが、たいていの日本人は、紅茶を好んで飲んでいました。砂糖をたっぷり入れたねっとりとした甘い紅茶ですが、喉が渇くために1日に何杯も飲んだものです。

 当時、 たいていの家の庭には、地下に水のタンクを備えられていました。私が住んでいたフラットでは、縦2メートル、横3メートル、深さ2メートルほどのコンクリート製の水のタンクがありました。公共的な水道水の配管は、ここに接続されていました。
 しかし、水道局の貯水槽から遠く離れたところまでは十分に届かず、地下の水の貯水槽が満杯になったことはありません。時々思い出したようにちょろちょろと供給される程度でとても日常生活に足りる量ではありませでした。
 水なしでは生活できませんので、自分で市販の水を購入しなければなりません。町外れには、水を供給するタンク車が並んで買いに来る客を待っています。この中から、値段の安いタンク車と交渉して水槽へ配達してもらいます。我々日本人が自分で購入しようとすると、高い値段を要求されますので、私はスーダン人に購入を依頼していました。


水をたっぷり使える日本人の生活は贅沢

 ある時、シャワーを浴びていて、水が塩辛いのに気が付きました。サウジアラビアの水は、海水浄化装置で作られ、塩辛い筈はありません。水の販売業者が海水を混ぜたに違いありません。水の購入を頼んだスーダン人の使用人に、この塩辛い水をなめさせ、購入する前に確認するように頼んだこともありました。

 いつもタンクの中を覗いて水の量を確認しておかないと、シャワーを浴びれなくなり、洗濯にも困ります。シャワーや洗濯用の水は、庭にある水槽の水をモーターで屋上の小さなタンクに吸い上げ、通常の水道の蛇口から出して使用します。屋上のタンクは、直径1メートル、深さが1.5メートル位の鉄製でした。屋上のタンクの量が少なくなるとポンプで自動的に吸い上げるようになっています。昼間の気温は摂氏40度を超えるので、屋上の水タンクは直射日光を十分に浴びてあたためられ、シャワーに丁度良い加減のお湯が出てきます。 
 
 日本では、ほとんどの家では、飲料水も洗濯用の水も区別していません。夏の暑い日には、上水道の水さえ庭に撒いたり、たっぷりのお湯で肩まで浸かったお風呂など、我々は、中近東に住むアラブ人の何倍もの水を使っています。このように水を豊富に使える日本人は、実に贅沢な生活をしているということになります。


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