アラブの習慣と文化

妻は4人まで許す本来の意味 

中近東やアラビアの話になると、「イスラム教徒は四人まで妻を持てる」という話が面白半分に話題になる。トルコの王様スルタンのハーレムの話が有名であり、これが大きく影響しているようだ。しかし、現実は大分違っている。

結婚するためには、男性は女性のファミリーに結納金を支払わなければならない。結納金もその男性の収入の一年分以上に相当するほど大きい。結婚したい男性本人がビジネスで成功していたり、親が金持ちであれば、結納金も納められる。しかし、通常結婚するためには、自分で働いて結納金をためなければならない。結納金が払えないために、結婚していない男性は中近東に多い。

 中近東ではないがイスラム社会のエジプトでも結納金が払えないために独身でいる男性が非常に多いと聞いた。イスラム教徒の結婚相手は、たいてい親が決める。結納金を払えない相手との結婚は親が許さない。従って、男性がお金を溜めるまでは結婚できない。イスラムの社会には、恋愛結婚は少ない。だから「駆け落ち」もない。
 
 その昔、この地域で戦争が続き、男性の多くが戦死した。そのために、戦争未亡人や孤児が増加し、生活ができなくなってしまった。「彼女達の生活の面倒を見るために、生活力のある男性は四人まで妻を持って良い」と、モハメッドが定めたという。

 当時は、奥さんの姉妹など親戚筋の未亡人や子供まで、みかねて引き取ったことが伝えられている。現在実際に二人、三人の女性と結婚している例は少ない。四人の妻を持てるとされているが、二人以上の妻を持つ場合、精神的にも、物質的にも、経済的にも、すべて平等に対応しなければならないというイスラム教のきまりがある。すべて平等に対応することは、特に経済的にかなり難しい。
 平等に対応しなかった場合に、どのような罪でどんな罰をうけるのかは残念ながら聞き漏らした。ただ、第一夫人に子供が出来ないために、もう一人の妻をめとりたいと理由で二人の女性と結婚している男性はいるようである。二人や三人の奥さんを持っているケースは、現在は、まずいないといってよい。


お金がなくて結婚できない男性も多い

  サウジアラビア以外に住むイスラム教徒にとって、聖地であるメッカやメジナは一生の間に一度は訪問をしたいところである。お金があれば、毎年でも訪問することができる。インドやパキスタン、ヨルダン、シリアさらに北アフリカのスーダンなどから、毎年、数十万人のハジ巡礼者が聖地メッカやメジナへ訪れる。巡礼目的で来た際に、滞在許可、労働許可をとって住み込んでしまう出稼ぎ人も多い。これらの出稼ぎできているイスラム教徒の友人にも、二人以上の奥さんのある人はいなかった。

例外は、商売に成功した一部のサウジアラビア人である。アラビア商人には、商売が上手な人が多い。原油以外に輸出するものがないので、輸入販売が商売の中心となる。
 彼等はハジ巡礼者のためにメッカやメジナを訪問する外国人向けに、海外から膨大な量の生活物資や電気製品を輸入する。周辺国の巡礼者は、自分の国では気に入った製品が安く買えない。サウジアラビアへのハジ巡礼者にとって、一生に一度の海外旅行である。巡礼者は、ラジカセ、テレビ、ビデオデッキ、炊飯器などを購入し、土産として自国へ持ちかえる。
 
 この金額は膨大な金額になる。サウジアラビア商人の商売は、自国の人たちへの販売ではなく、ハジ巡礼者への販売で成り立っている。彼等、海外との貿易で成功したビジネスマンは商談のために度々海外へ出掛ける。これらの成功したビジネスマンには、エジプト、英国、アメリカに、第二夫人、第三夫人、第四夫人と、いやそれ以上にたくさんの奥さんを持っているケースがあるようだ。これらは、あくまでも例外中の例外であるが。


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