発表抄録
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要約 ここでは、製造業における革新的な品質向上とモノづくり活動としての「日本版6シグマ」について、特に「5つのガイドライン」を基本にした人材育成と組織強化課題について紹介することとしたい。 |
日本版6シグマとTQCの違い 日本の企業経営には、「日本版6シグマ」に類似した管理手法として、製造現場を中心とする「目標管理」と「品質管理」をドッキングさせた「TQC活動」がある。しかし、両者間には、次の2つの点で、根本的な違いがある。 (1)「TQC活動」は、欧米の企業に追いつけ追い越せの時代、社員が仕事のやり甲斐や生き甲斐を求めて、自主的に自発的に取り組んだボトムアップ的な活動であった。 (2)「日本版6シグマ」は、グローバルな競争に勝ち残っていくために、コスト低減や顧客満足度アップのために、各部門が解決すべき「6シグマ課題:業務革新課題」を設定させ、社員に挑戦させ、成果は正当に評価し、報えるというトップダウン的問題解決活動である。 |
アメリカ企業の「6シグマ」 アメリカの企業が日本の「TQC」に対抗して取組んだ「6シグマ」には、「VOC(Voice Of Custmer)」、「CTQ」(Critical To Quality)」、「COPQ(Cost Of Poor Quality)」という3つの重要な概念がある。 「顧客の声:VOC」を重視し、品質不良やコストアップに影響を与えている内部の不良要因「CTQ」を明確にし、解決することによって、無駄なコスト「COPQ」の発生を極小にする、つまり「100万個の製品中、3.4個程度しか不良を発生させない、6σレベルの品質保証レベルを実現する」という考え方である。 |
次は、「日本版6シグマ」における基本的な「5つのガイドライン」である。
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(2)COPQの認識 |
(3)VOCの重視 「GQ」を実現し、「COPQ」を改善するためには、顧客は何を「GQ」と考えているかをはっきりさせなくてはならない。顧客の声「VOC」の重視である。「COPQ」の大きさは、「GQ」と「VOC」の乖離の大きさによって決まる。また、この乖離の大きさは、「COPQ」としてのロス金額の大きさだけでなく、今日の経済環境下では、顧客の信頼喪失につながりかねないという点で切実である。 そのために「日本版6シグマ」では、第3のガイドラインとして、「VOCの重視」を取り上げている。「COPQ」を限りなくゼロにするということは、顧客の声「VOC」を重視し、これに可能な限り応えていくことである。 (4)CTQの絞り込み 現実的に「VOC」を重視するということは決して容易なことでない。「VOC」の大事さはわかっていても、不注意や実力不足でいたずらに「COPQ」を大きくしてしまっているのが普通である。 「COPQ」には、必ずはっきりした原因がある。ものづくりやサービス提供の現場のみならず、経営方針や意志決定のあり方、関連部門の業務のあり方全般にわたって存在している。 「日本版6シグマ」は、「CTQ」を、「VOC」に十分対応できない理由、言い換えれば、品質不良や業務不良に関わる「内部的な要因」という意味に解釈し、第4のガイドラインとして位置づけている。 「CTQ」は「VOC」と対立し、「COPQ」に重大な影響を及ぼしている概念である。「VOC」を重視し、「VOC」を満足させるためには、「CTQ」を広く深く探り、これを根源的に解決しなければならない。 |
(5)SSPの設定、解決 次は、各部門が「VOC」と「CTQ」の現状把握を踏まえ、「GQ」の実現を目標に解決すべき「業務革新課題」を設定し、その解決に取組む。「日本版6シグマ」では、この課題を「SSP:6シグマ課題」と命名している。 「SSP」は、トップダウンで設定された「経営方針や経営目標」を実現するために、全部門が解決しなければならない「現場の課題」である。「日本版6シグマは、決して理想の追求ではない。一般に「VOC」は無限であり、その要望に100%応えることは本来的に不可能である。また、「VOC」に対応するためには、「時間、資金、人、アイデア、技術、問題意識・・・・」等の制約条件が多くあるのが普通である。 そうした制約の中で、「何のために、何を、どこまで、いつまでどうする」というを「戦略的課題」の全体をステートメント化したものが「SSP]である。 |
「日本版6シグマ」の実践の基本は、「5つのガイドライン」に沿って、それぞれのラウンドに沿って進めることである。 最後に |