中小製造業「A社」 ー人材育成の視点からー 6Sigma Activities 日本生産管理学会 |
中小製造業の多くのトップから、「我が社の社員は上からの指示待ち人間が多くて困る」という声をよく聞く。取引先からの品質やコスト要求が一段と厳しくなる中で生き残っていくためには、社員一人一人が会社の方針や目標をよく理解し、その実現のために、それぞれの持ち場で課題を設定し、問題解決に取り組んでくれる頼りになる組織をつくっていくことが一番の近道。 中小製造業A社における「日本版6シグマ」について、その活動の中心的な役割を果たすリーダーの育成問題に絞って、具体的な取り組みを紹介したい。 |
A社は「地域の発展に貢献する」を経営理念とする、瀬戸内海臨海工業地帯の大手メーカー数社を中心に製品の組み立て、輸送等のサービスを提供する中規模企業である。大手の下請け的な立場にあるが、先代の社長時代からトップ自らの営業力によって取引規模を拡大してきた。 しかし、大手企業を取り巻く経済環境の悪化とともにA社に対する品質、コスト、安全面等からの要求は一段と厳しくなり、また地域を越えて競合会社の進出も顕著になっている。 そこで社長は、トップの営業力だけでは、顧客の維持・開拓が困難な時代になってきたとして、これまでの指示命令、管理型のマネジメントスタイルを反省し、特に幹部職は、請負現場の責任者として、顧客からの厳しい要求を自分たちの問題として自覚し、責任をもって解決することで、請負業務の維持・開拓につなげて欲しいと要望するようになった。 1-1 M0型 1-2 |
(1)6シグマプロジェクトの設定 先の研修で、幹部職層は経営トップ層と経営方針や目標、さらにその実現のために解決すべき「基本的課題」を明確にした。次は、各部門の責任者として、「基本課題」の全体に対して、部下をどのように巻き込み、問題解決的に取り組むの体制をいかにつくるかである。 そこで、「基本課題」の全体を「6シグマ課題:SSP」として、解決に取組む研修に入った。この研修は、トップダウンの形で、幹部職を「SSP」全体の責任者、各社員を個々の「SSP」の担当として、任命するところから始めた。 (2)6シグマツールの実践的習得 モトローラーやGEに見る「6シグマ」は、品質改善やコスト低減、安全対策に向け、業務革新課題を設定し、「DMAIC」という「Critical Thinking Approach」を行う。 A社における研修では、この「DMAIC」に相当する「W型問題解決フロー」をベースとした「M5型問題解決技法」を、「6シグマツール」として習得することから入った。 「M5型問題解決技法」とは、「W型問題解決フローに沿って、「問題提起ラウンド→現状把握ラウンド→具体策ラウンド→基本的課題設定ラウンド→最適解決策作成ラウンド→リスク対策ラウンド→実行計画作成ラウンド」へとたどり、それぞれのラウンドで、ブレーンストーミング、統計手法、KJ法、KT法、パート等を活用した「Semi-Exact Science」としての「ST(ソリューションテクノロジー」である。 |
(1)トップダウンの重要性の自覚 日本の製造業の強さは、現場の社員が協力して主体的に目標を決め、会社のため、自分のため、生き甲斐や働きがいを求めてがんばる」というボトムアップ的な目標管理や品質管理小集団活動によるところが大きかった。 しかし、日本製造業の多くは、さらなる低コスト化、高品質化を実現できなければ、生き残っていけない環境にある。「何を目標とすべきか、何を解決すべきか」は、現場社員のボトムアップ的なやる気や生き甲斐や働きがいだけに期待するようなレベルのものではなくなってきている。 |