フクシマの記録と提案
原発被災者の歩み
これまでの3年、これからの3年
ごせやける、許さんにえ

言叢社 新刊 


著者紹介

井上 仁(いのうえ じん)
福島第一原発第5号機、6号機が位置する福島県双葉町生まれ。東京大卒
現在、「日本版6シグマ」 による企業、自治体等組織の経営、行政革新等のプロジェクトマネジメントを支援するベルヒュード国際経営研究所を主宰。
18歳までの幼年、少年期を双葉町で過ごす。実家を一人守っていた78歳の義理の姉が福島県白河市で避難生活を送っている。これまで故郷の皆さんと歩んできた被災者の生活再建、被災自治体の再興への取り組み「ごせやける許さんにえ」を言叢社より発表。
 この3月、当出版を再出発点として、「13のフクシマ復興再生課題」を設定し、国や県、被災自治体の復興施策への提案をめざす、全国的な規模での「フクシマ復興応援ネットワーク」を立上げ、事務局を務める。


書評

先日は、ご本を購入させていただき、早速読みました。
こちらの『ごせやける許さんにぇ』(言叢社)は、僕なりにフェイスブックなどで宣伝させていただきます。「ふる雪は 積もり やがて消える ふる核は ただ 積もるだけ けっして 消えることはない」泣けてきます

井上さんはもともと川喜田二郎さんの情報処理論にも精通されておられ、またプロジェクトマネジメントのご経験が深いので、なにより、今回の避難地区の方々の現状把握、意見把握に関して、プロセスごとの定性情報を丁寧に掬い上げて、それを要点化させていく手法そのものに感心しました。
定量的なアンケート調査はいくつもありますが、それは「調査のための調査」であって、結論ありきに誘導するだけのためのものであることはいつも苦々しく思っているので、井上さんの手法に改めて納得した次第です。
しかも、井上様ご自身が、双葉町に深く関係しておられながら、動機論は別として、この間の粘り強い作業は、自らも客体化しながら進められていることは、敬意に値します。(
10.8 広本


福島第1原発事故によって、福島県浜通り地方の多くの住民は、古里や生活基盤を奪われ、長期にわたる避難生活を強いられている。副題は「フクシマ原発被災者の歩み・双葉町から」。同町出身の著者は、「7000人の復興会議」にオブザーバーとして参加する等して、事故発生後3年間にわたって住民の苦しみを追った。そして、今後の3年が生活再建への正念場だと説く。
公開された双葉、浪江町の住民の意向調査から、避難生活を余儀なくされている人たちの声を分析。被災自治体に共通する思いを「五つの復興再生課題」として絞り込んだ。
具体的には、「避難生活で一人の犠牲者も出してはならない」、「損害賠償問題に決着を」、「希望する地での住まいの補償」を挙げる。
他に被災自治体の復興・再生課題として「魅力ある『仮の町』づくり」や、「帰還のため、低線量地区に復興活動拠点をつくる除染」を掲げる。
しかし、賠償問題は決着がつかず、除染も進んでいないのが現状だ。著者は、五つの課題に対する実行マスタープラン(基本計画)をつくるための「フクシマ復興ネットワーク」へを呼び掛ける。

安倍政権が原発推進を掲げる中、フクシマの問題は、わたしたに投げ掛けられた大課題だと主張する。タイトルの「ごせやる」は福島県の方言で「腹が立つ」という意味。怒りや無念さといった住民の思いは、事故そのものだけではなく、その後の国や東京電力の対応にも向けられている。(河北新報


今後3年 支援者正念場
双葉出身 井上さん 本出版「町や村の再建道筋を!」

「海や祭り、民謡、地域の付き合い・・・。すべてが忘れがたい故郷。そう簡単に捨てられない」。高校卒業まで双葉町で育った井上さん。原発事故が起きるまで年1、2回の帰省で墓参りをしたり、盆踊りに顔を出したりするのは、心安らぐひとときだった。「私も故郷を奪われた準犠牲者だと思っています」

本の題名「ごせやける」は、理不尽さに対する憤りを表す福島の方言だ。前半部分の「これまでの3年」では、双葉町民らの苦しみの声を振り返りながら、支援者、行政の動きもつぶさに記録した。
井上さんは事故から1年余り、双葉中学校のOBとともに、埼玉県加須市の旧騎西高校に集団避難した町民の直接的な支援にたずさわった。子どもたちの学習環境づくりや、茨城県つくば市の公務員宿舎への移住などにかかわった。「経済的な問題だけでなく、気持ちの整理に深くかかわる重要なこと」と考え、東電への損害賠償請求の手続きを弁護士に相談できる仕組みもつくった。

1年を過ぎたころから、町の復興計画作りにもかかわる。長年やってきた企業経営や行政改革の工程づくりのコンサルタント事業の経験を生かし、町民から集まった生の声をデーターとして整理し、課題を洗い出した

この間、「できるだけ町の人に寄り添い、要望を吸い上げ、自立を支援したい」と思ってきた。だが、3年たった今、「力のある人はある意味で町から離れ自立していく。一方、そうではない人は、町全体が消滅するかもしれないという状況の中で、ますます先が見えなくなり疲れ果てている」と感じる。

「被災者にもう一度前を向いてもらえるよう今こそわれわれのような応援部隊が道筋を付けなくては」。その決意で、本の後半では今後3年で取り組む課題を整理した。これ以上関連死の犠牲者を出さないことや、損害賠償問題の決着は「すべての被災者に必要な最優先課題」だ。

双葉町は96%が「帰宅困難区域」。町の調査では町を離れてもいい、離れたいという町民が九割に上る。「長期的にどうなるかは分らない。だがこの3年、手をこまぬいているわけにはいかない。町のDNAをどう守っていくか」。

魅力ある「仮の町づくり」や、移住者への住まいの保証なども今後3年でめどをつけるべきだと考える。「国や東電、被災自治体を動かす計画で実行を迫るため、専門的な知識や技術を結集したい」。本を手渡しながら同じ思いを持つ人とつながり、「フクシマ復興支援ネットワーク」として活動していく予定だ。ネットワークのメールアドレスは、fukushima-n.w@belhyud.com

【取材記者後記】
これからの3年こそ、支援者の正念場・・・。東京電力福島第一原発の事故で、全町民が避難を続ける福島県双葉町出身の井上さん(72)=横浜市旭区=が今月、これまでの被災者支援を振り返り、今後3年で取り組むべき課題をまとめた「ごせやける許さんにぇ」(言叢社)を出版した。「被災者の生活再建や村の再興の道筋をどうつけていくのか、読んだ人に一緒に考えてほしい」と願う。(東京新聞 小林由比


双葉町の歩み 一冊に
福島県双葉町出身の企業経営コンサルタント、井上 仁さん(72)が今月、東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く町の3年の歩みをまとめた「ごせやける 許さんにぇ」(言叢社)を出版した。書籍名は、福島の方言で「悔しい、腹が立つ」の意味。18歳まで町で過ごした井上さんは、「被災者をはじめ、福島の復興を考える人にぜひ読んでほしい」と話す。全国の書店で販売しており、定価2000円(税込み)。(読売新聞


3年目の3.11、いまだに15万人の難民がいると言う。 福島出身の筆者は避難所の子供たちの勉強支援、仮の町づくり、賠償請求支援などの活動に取り組んできた。その間の被災者の苦難、苦悶の歩み、国の対応、世間の温かさ、また反対に無関心の一面をドキュメント風に克明に伝えている。結果的に傍観者だった自分はこれから何をすれば良いのか! 自戒を込めて自問した時、この本は具体的な「5つのガイドライン」を示し教えてくれている。 さあ、世論の風を起こし、国を動かそうではないか。子供らのためにも。 「ごせやける 許さんにぇ!(もう理不尽は沢山だ!)」筆者の悲痛な叫びが伝わる。(松浦由武

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書店には様々な原発関連本が並び、被災者に寄り添った報道やルポも出ている。では今、この本を出版する意味は何か。原発被害者がこれまでどんな状況におかれ、どのように闘ってきたか、疲れてきたか、迷ってきたか、サポーターは何をしてきたか。そうした「これまでの3年」の事実から出発して、被害者が「これからの3年」、自らの復興計画にどう取組むかを模索した本書のようなものは、見たことがない。この本は、私たちが、被災者の悩みや望みを単なる知識として知るのではなく、自分のものとするために、間違いなく必要なものだ。(中村晃忠


著者が自らの足と目と耳で捉えた故郷の被災地の実態や復興、再生活動を記録した書籍を出版されることになった。その膨大な資料が生々しく訴える被害の大きさや遅々として進まない事態の深刻さにあらためて驚いている。原発事故は、何の咎もない方々の幸せな日常生活を奪い、支援策も被災者の立場に立って適切に進められているとは思えない。三年も経過すると、私たちの意識の中でも、被災者を思う気持ちは徐々に低下しつつある。支援の方法は色々あると思うが、大切なことは、被災地の方々のご苦労の現状を見守り続け、そして一日も早く事故前の当たり前の生活が戻ることを願う気持ちを持ち続ける事ではないでしょうか。そんな意味で、この本は大きな意義を与えてくれました。(宮本隆夫


3.11以来、残されている課題はあまりにも多い。それを落ち穂拾いのように丹念に集めたのが本書だ。何をやり、何を解決しなければいけないかが克明に記されている。フクシマ以来、大災害は放射能汚染とセットになってしまった。もはやこの新災害から逃れられる地域は何処にもない。日本の原発所在地を調べ、地震年表を見るとそれに気づく。行政、教育、医療、福祉、流通、通信、メディアなど、生活を支える仕事に携わっている方々はすべて、この書が提示する問題に取り組み、答えを用意していてほしい。(永冨秀旺


故郷双葉町への強い思い入れを持つ筆者が直に収集した事故被害の実情と被災者の日常生活、揺れ動く心情などの事実の重みは、単なる想像の世界などとは桁違いである。筆者は丁寧に膨大な被災者の生の声を整理分類し、現在、被災地と被災者が抱える問題点を集約した。そして勝手連的な活動から始めて、次第に周囲を巻き込みながら、「復興まちづくり計画」に参画し、「5つの復興再生課題」を提起するに至った。住民一人一人の思いや心の底の本心をベースとした、一方国や県、町などの行政サイドの動きも熟知した上での提案ができ上がっているので、現実的で迫力のあるものとなっている。著者は、これを双葉町モデルとして、読者の協力を得て、被災地側から自前の実行計画を提案することで、国を動かしていきたいと考えているようである。
著者がそう考えるに至る背景というより危機感について、「フクシマ問題の風化」、「故郷の完全喪失へのなし崩し的道のり」、「国の復興予算をうまく使えない」などなど心配は尽きない。「これからの3年」が正念場、読者である一般国民の支援があって初めて解決策が見つかるというのも間違いではあるまい。知恵や知見のある人々の「フクシマ復興支援ネットワーク」への参加を期待したい。(渋谷武文


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