「人的資産の算定」をありがというございました。早速、小生も、流動人的資産と固定人的資産、さらに、能力資産の試算を実施してみました。
長く続いた不況と高齢者の給与を制限する動きの中で、5年先の給与までは読めませんが、現実を当てはめることにより、考え方を理解するのに大変役に立ちました。
「人的試算のバランスシート」は、大変面白い表現と思います。もし、小生が30代であれば、直ちに、実行マスタープランまで作成し、実践し、挑戦してみたでしょう。
ただ4つの能力が、給与とどのように結びついているか、つまり、「自己査定値」とその「ウエイト」がどのレベルにあるかの判定が難しいと思いました。業務内容と職位、その上、企業間でも相当開きが出てくると思われます。本人と会社、上司の忌憚のない話し合いと企業の中で自由に異動できる「連帯感の構築」が前提となりますね。
当面、企業の中で実施するには、貴論文に述べられていますように、社員一人ひとりを公平に評価すことと、その企業の中にどのような能力を必要とするかの標準化とディスクロージャーが課題でしょうか。
大きな企業は別として、企業や職場によっては、詳細な職務分掌が決まっていないところや決まっていても文書になっていないところも多いのではないかと思います。
さらに、「企画・提案力」、「指導力」そして、「実行力」は、能力内容は理解できますが、そのレベルの客観的な評価方法が難しいと思います。業務内容と深く結びついてくると思います。
企業間の流動化を図るためには、各企業に共通的な職務を持つ分野、たとえば、人事部門、総務部門、経理部門などから、標準化をし実践されることでしょう。
各個人が、共通の業務内容のマスター度合いにより、企業間の異動が公平で容易にできるようにするには、業務内容とその難易度、経験年数などを詳細に分類する必要が出てきます。基本的知識は、各企業毎に研修やOJTで指導訓練していることを文書化し、開示して整理することから始められると思います。
各企業の文化と習慣の違いに
課題がありそう
大きい企業に長年勤務していると考え方が、大きく偏ってくるといわれます。その企業で使用される特殊な用語が世間一般で通用すると思い込むからです。
その特殊な用語は、その企業と下請企業の間では、社員が入社する前から使用されていたために、社員に取っては、世間で当然のように通用するものと思い込むのです。最近では、その分野の機関紙、雑誌などで一般的な表現方法や用語に統一されつつあるとはいえ、文化や習慣の相違は、このようなシステムを考えるときに一つの壁になりそうです。
割合早く「人的資産の算定」が
必要になってくる
とはいえ、現実には、一部の銀行や証券会社の社員のように、倒産、合併、事業規模の縮小などにより、リストラによる転職を余儀なくされ、半ば、強制的にその社員の経験した業務内容とその能力を評価することが行われているようです。また、業務の一部がアウトソーシングされたり、派遣社員に置き換えられることによりパソコン能力でWORDやEXCELで評価され始めており、給与が決められつつあります。
社会の一部には、このような考えの先端が見え始めているような気がします。今回の貴論文は、この意味でも時期を得たものと思います。予測するよりも、割合早く「人的資産の算定」を実践するときが来そうな気がします。
労働省に、
「ビジネスキャリアー制度」がある
業務内容とその標準化に関しては、労働省のビジネスキャリアー制度があります。ビジネスキャリア制度の主旨は、次のようなものです。
「激動の時代には、ホワイトカラーの専門能力向上が企業の課題です。これまで社会一般に通用するホワイトカラー層の職務の教育基準が確立されておらず、企業毎に教育されていたのが実状です。ホワイトカラー層の職務に必要な専門的知識・能力を段階的に体系的に習得することを支援する教育訓練システムとして制度化されたものです。」
この制度では、その分野での経験年数と認定教育を修了した後に試験を行い、ある一定以上の能力を持つ人を認定する方法をとっています。
現在、認定試験が実施されている分野は、
次の10分野です。
人事・労務・能力開発
経理・財務
営業・マーケティング
生産管理
法務・総務
広報・広告
物流管理
情報・事務管理
経営企画
国際業務
この制度には、小生は、ここ2年ほど、「国際業務分野」にボランティアとして関わっておりますが、各企業での認知度がまだ不十分で、ホワイトカラー層に知られていないこともあり、受講者や受験者は少ないようです。この制度のテキストや試験内容は、4つの能力のうち「円滑で正確な業務を遂行するために必要な専門知識」の一部に結びつくのではないかと思います。
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