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  BMM【Belhyud Mail Media】 No.55 2002.4.24発行   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新連載
「日本版6シグマ」による「人材育成と組織強化」
No.5 6シグマ活動の推進 
「Work Out その3」
      
問題解決技法による日本版6シグマ活動の推進

第2ラウンド
  現状把握ラウンド−その2
  
「VOC」に対応できない
  内部要因「CTQ」を絞り込む
 先の第4稿の「現状把握ラウンド」では、「COPQ」の発生は、結局のところ顧客ニーズ「VOC」へのミスマッチが原因であり、その改善課題を探るために、顧客の側から発信されたクレーム情報をもとに、「VOC」の本質を認識し、対応すべき的を効果的に絞り込むことの必要性とその方法について紹介した。

 次は、絞り込んだ「VOC」にどう対応するかである。現場では「VOC」に100%対応すべく努力しているが、いつも不十分で、同じようなクレームが繰り返され勝ちである。この「VOC」に上手く対応できない理由、つまり、経営や業務システムの欠陥や組織の競争力の弱さ等、製品やサービスの品質に影響を与えている「内部要因」を広く把握し、その上で定量的かつ論理的にクリティカルな要因「CTQ」を絞り込み、根本的な解決策を探らなければならない。

「CTQ」の絞り込み方
 B社はもともと家電メーカーである。これまでTQC活動も盛んで、他社の手本にもなってきたが、最近では中国などへの工場移転が進み、国内の品質管理活動は壁につきあたり、製造現場の志気は下降気味である。そうした反省を踏まえ、最近異分野に進出し、新規製品「C」の国内製造、販売を開始した。しかし、品質が一向に安定せず、長い期間、収益未達が続いている。特に品質不良による無駄なコスト「COPQ」の流失が無視できないレベルにまで達している。そこで、B社では、この新商品「C」の収益化が緊急の経営課題であるとして、「6シグマプロジェクト」を設置し、製造現場を中心に、「日本版6シグマ」的なアプローチを試みることになった。

 先ず、これまでに新製品「C」に寄せられたクレーム情報を整理し、対応すべき「VOC」を絞り込んだ。顧客の根強い不満やクレームの繰り返しには、製造工程や関連する業務に何らかの欠陥や弱さがあったからである。製品の品質向上と安定化のためには、「VOC」への対応を前提に、これらの欠陥や弱さを探り、製品の品質不良に重大な影響を与えている内部要因「CTQ」を絞り込むことになった。

■問題点の全体を把握
 ところでここで大事なことは、一気に問題点を絞り込む姿勢を捨てることである。同じようなクレームを繰り返してきたのは、それなりにはっきりした要因があったからであるが、その要因を的確に掴み切れなかったためである。従ってこの段階では、「CTQ」を安易に急いで決めつける前に、気楽な気持ちでクレームや品質上の不良を引き起こす原因になっていると思われる業務やシステム上の現実的な問題点、つまり「問題と思われる事実」を広く浅く集めてみる。

 もちろん、こうした事実を100%集め切ることは不可能であるが、製品やサービスの現場や関連業務や経営のあり方まで含めて、直接的、間接的に品質不良の原因と思われる事実を、可能な限り広く集めてみる。その上で簡潔な文章に記述する、つまりデータ化し、ラベル化する。先ずこの準備が不可欠である。これらのアナログ情報こそが、クレーム発生の内部要因、すなわち「COP」を探る実際的な手がかりになるからである。

■問題点の評価と
   重点領域の絞り込み
 あとは、先の稿で紹介した「VOC」の現状把握プロセスと同一である。各データをグルーピングし、グループごとに、個々のデータが言わんとしている内容を探り、共通している本質的な意味を浮き彫りにし、これを簡潔でわかりやすい文章にする。つまり、各グループを代表する「表札」を作成し、その何枚かの「表札」でどのような問題が「CTQ」として考えられるか、その全体像を大きく捉えてみる。(参照図1「新製品Cの全体的な問題点の把握」)

 この図解は、品質不良をもたらす内部要因としての「CTQ」の全体像を定性的、構造的に把握した例示である。図1は、B社は、新製品「C」の品質保証力の向上を図る上で、おおよそ4つの問題点を抱えていることを示している。そこで、先ずどの問題点から手をつけるべきか、何に絞るべきか、重点検討領域を評価し、決定する。

 ここの検討は、厳密な正確さにこだわるよりは、関係者の問題意識をもとに大胆に進める方がよい。通常は「SUG」の3つの視点からのざっとした「セミ−エグザクトな評価」で結論を出すことをお進めしたい。(「SUG」とは。S:Seriousness−切実さ、U:Urgent−緊急性、G:Growth−将来の問題性)

 なお、B社は、新製品「C」について、「同じような不良品を外部に安易に流出し続けている」という現状を深刻に受け止め、「不良解析力が弱いため工程内検査基準が未確立で、不良品を安易に流出させているとともに、前工程へのフイードバックも遅れ、同じ不良を繰り返している」という問題を最重点検討領域と決定した。

■CTQの論理的絞り込み
次は、先に重点化した領域に絞って、ある期間に発生し、発見された様々な製品やサービスの不良に関わる事実としての「問題点やトラブル」をさらに詳しく収集し、同じようにデータ化し、ラベル化し、グルーピングする。その上で「表札」をつくり、品質不良を引き起こしている本質的な内部要因「CTQ」をコンセプト化する。このように「CTQ」をコンセプト化する目的は、既に述べたように、経営や業務システムの欠陥や組織の競争力の弱さ等、製品やサービスの品質に直接的、間接的に影響を与えている様々な問題点ををバラバラにではなく、「層別」して大きく把握するための「フレーム」が欲しいからである。そこで次は、この「フレーム」をもとに、ある期間を単位として、発生し、発見された不良に関わる問題点、トラブルのデータ群を層別し、定量的に把握し、今後重点的に解決すべき「CTQ」と個々の「問題点やトラブル」をワンセットにして決定する。

 B社の新製品「C」に関しては、先に見たように「工程内組立製品の不良解析力と検出力が弱く、不良品の放出を防止できていない」、「前工程に対して、この解析結果を適切にフイードバックできず、同じような不良を繰り返している」という2つの本質的な「CTQ」が浮き彫りされ、特に、「製造部門としての工程内不良解析力、検出力の弱さ」がクローズアップされることになった。しかし、その後の検討で、新製品「C」は多種多様な技術と大量の部品で構成され、生産技術の面から見て技術集約度の高い製品であり、「不良解析力、検出力を急激に改善することは本来的に困難である」という意見が大勢を占めることになった。そこで、「最終組立以前の前工程での発生不良対策がモグラ叩きに終始し、同じ不良が繰り返され、結果的に、これらの不良が安易に次工程に持ち込まれ、最終組立工程に混乱をもたらしている」という「CTQ」を重視し、当面製造部門として徹底しなければならないことは、「前工程で発生している不良やトラブルの発生原因を根本的に解決し、これらを最終製品組立工程に極力流入させないようにすることではないか」という結論になった。

 このように、日本版6シグマ的アプローチは、顧客からの「クレーム」への対応と同様に、現場の「問題点やトラブル」の解決においても「モグラ叩き的な対応」を否定している。基本的な「CTQ」を基準に、個々の「問題点やトラブル」をセット化し、結局、現場内部に存在する基本的な要因を本質的、定量的に把握し、論理的に絞り込むことによって、品質力向上体制を根元的に系統的に改善、改革していこうとするものである。

第3ラウンド
  具体策ラウンド

基本的課題設定の
 「手がかり」を探る

 製品やサービスの品質不良をもたらしている「内部要因」、すなわち「CTQ」を絞り込んだ後は、その「CTQ」を根元的に取り除くために、基本的にどんな課題を解決しなければならないのか、その課題をコンセプト化するための「具体的な手がかり」を探る「具体策ラウンド」に移行する。

具体策の収集
■360度の視野から

 このラウンドでは、「CTQ」の解決に有効と思われる行動上の具体的な手がかりを広い視野から気楽に数多く列挙してみることが中心になる。決め手になるようなスーパーなアイデアを求める必要はない。ここでは質よりは量である。関係者に集まってもらって、ブレーンストーミングで360度の視野から、思いつくままに役に立ちそうな具体策は出してもらい、どんどん取り上げる姿勢が大切である。

■具体策のデータ化
 具体策は「〜を〜する」という表現で、個別にステートメント化し、ラベル化する。具体策は考え方や思いや願望ではなく、実際に行動したかどうか客観的に確認できるものでなければならない。。また、具体策は一般的な内容でなく、実際的な場面を想定して、固有名詞も極力使って、可能な限り具体的に個別的に記述することが好ましい。例えば「仕事を部下にまかす」という具体策は一般的過ぎる。「誰に、どんな仕事を、どうまかすのか」まで、具体的、個別的に明確にすることが好ましい。なぜなら、具体的、個別的であればあるほど、「CTQ」を解決するために、「何の目的で、何に、どのように取り組むのか」についての考察が、それだけ容易になるからである。

第4ラウンド
基本的課題設定ラウンド

「SSP」のコンセプト化
 「CTQ」を絞り込み、これを根元的に解決するということは、これまでの経営や業務システムについての考え方を否定し、これからの競争に勝てるあらたなシステムを構築し直そうとする、現場主体の問題解決活動である。その成功は、現場の視点で、「何のために、何を、どのように解決すべきか」、つまり、「6シグマプロジェクト」実現のために解決しなければならない基本的課題を、どれだけ厳密に設定できるかにかかっている。M5型問題解決フローの前半でもっとも重要なラウンドである。そこで、次は先の具体策ラウンドで準備した具体策をもとに、解決すべき基本的課題、つまり「SSP」をコンセプト化する「基本的課題設定ラウンド」に移行する。

コンセプト化で
  威力を発揮する「KJ法」
 既に、「VOC」や「CTQ」を絞り込む現状把握ラウンドで、個々にラベル化したデータをもとに、グルーピング、表札づくりを繰り返し、最終的に5枚から6枚程度の表札に集約し、図解化する手法は体験済みである。これは一般に「KJ法」と呼ばれる手法がベースになっている。KJ法は個々のデータの意味を峻別し、それぞれに共通する本質を引き出し、コンセプト化する、いわゆる発想的情報処理技法である。このKJ法の威力を発揮させるためには、もとになるデータを「問題意識ラウンド」、「現状把握ラウンド」、「具体策ラウンド」というように各ラウンド別に分類し、ラウンド別に「グルーピング、表札づくり、図解化」を行うことである。なかでも、「具体策データ」をもとに、基本的課題を発想し、コンセプト化するラウンドは比較的容易で、発揮する威力も大きい。そこで、このラウンドに限っては、こうした情報処理ルールの原則の遵守がコンセプトのシャープさに与える影響が極めて大きいという理由で、一部繰り返しになるが、あらためてそのルールを明記しておくことにしたい。

コンセプト化の手順

■具体策のグルーピング
@手元にあるラベルをトランプのように切って、バラバラに並べる。データに対する期
  待や思いを一旦断ち切ることが大切である。因果関係や分類的な並べ方をしては
 いけない。 ただ、何も考えずにバラバラに並べる。
A今度は、このラベルで、「どんなことが言えるか楽しみだ」というような気持ちで、上
  から悠然と全体を見下ろす感じで、一枚一枚のラベルを読んでいく。先を急がず2
 〜3回は読む。
B個々のラベルの内容をよくイメージし、似ているラベルが見つかったら、手を添えて
  寄せていく。重ねてはいけない。集まったグループを外に持ち出してはいけない。
  一枚の ラベルを手にしながら、似ているものを探すという集め方もしてはいけない。
これらは先入観や最初の決定にとらわれないで、自由に考え、いつでもやり直しが
 できるようにするために不可欠なルールである。

C一つのグループは2〜3枚までが原則。全体の3分の2以上がグルーピングできる
  まで、この作業を続ける。グループにならないデータがあっても、そのままにして
  おく。最後は、グル−ピングされたデータがそれぞれ寄せ集められて、いくつかの
  グループができている状態をイメージする。

■具体策の表札づくり
@グルーピングは、「多分、同じ」と気楽に寄せたり、離したりしながら感覚的に進め
  るのに対して、表札づくりは論理的に取り組む。この違いを混同しないようにする
  ために、表札づくりにはグルーピングが一通り終わってからはじめて取り組むよう
  にする。一つのグル−ピングが終わったら、すぐに表札をつけるというやり方は絶
  対にしてはいけない。
Aグルーピングされた個々の具体策データは、「何のために、何を、どうしようとする
 ことなのか」を読みとる。
Bグルーピングされた個々のデータについて、それぞれ共通した「What」、「Why」、
  「How」の「3つの内容」をはっきりさせる。
C表札づくりは、この「3つ内容」を明確に同定し、大胆に引き出し、本質的な課題と
  してシャープに表現することである。
Dデータの持つ具体性は大胆に捨て、表札は「〜ために〜を〜する」という表現にす
  る。
E一通り表札づくりが終わったら、表札を上にしてグループをクリップでとめ、再度バ
  ラバラに並べ、第二回目のグルーピングを行い、同じようにして表札づくりまで進
 める。 この作業を繰り返し、最後に6〜7つ位の表札に集約する。
F図解をもとに、各「SSP」を「SUG」の視点から評価し、大胆に最優先で取り組む
 「SSP」を絞り込む。

■図解化
@最終的に「6〜7枚」に集約された個々の表札は、「CTQ」を根元的に解決するた
  めに取り組む必要のある課題、つまり「SSP」にあたる。どんな課題があり、全体
 としてどう取り組むべきか、「SSP」の全体を大きく、戦略的に捉えることが「図解
 化」の目的である。
A最終的な6〜7枚の表札をバラバラに並べ、一枚ずつ丁寧に読む。
B中心になるラベルを手元に置いて、関係のはっきりしたラベルを探し、どんな関係
  にあるかをはっきりさせる。次に関係ありそうなラベルを引き寄せ、同じように二つ
  のラベルとの関係を はっきりさせる。この作業を繰り返し、全部のラベルの関係
  を決定する。ラベル間の関係は「因果関係、相互関係、共通関係、対立関係」等
  である。ラベルの全体配置は、左右対称にする。

 なお、「図表4」は、B社の新製品「C」について、「前工程で発生している不良やトラブルの発生原因を根本的に解決し、これらを最終製品組立工程に極力流入させないようにする」という結論をもとに、製造部門として絞り込んだ「SSP」を一般化し、図解化したものの例示である。

「SSP」の絞り込みと定量的目標の設定

最後に、図解をもとに「S、U、G」の視点から評価し、優先的に取り組むべき「SSP」を絞り込む。「S、U、G」の評価の背景として、顧客との関係、他社との競合状況、「COPQ」の改善レベル等が考慮しなければならないが、「SSP」はこれらの要素をもとに、経営的判断で大胆に決定すればよい。その上で、決定した「SSP」について、「COPQ」を中心に、解決目標を定量的に設定するが、目標については可能な限り金額換算を原則とする。
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     BMM【Belhyud Mail Media】 No.55 2002.4.24発行
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          【WEB】 http://www.belhyud.com/0.htm
          【MAIL】 jin-inoue@belhyud.com
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                【発 行】 ベルヒュ−ド研究会
                【編 集】 井 上  仁


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