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  BMM【Belhyud Mail Media】 No.54 2002.4.4発行   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新連載
「日本版6シグマ」による「人材育成と組織強化」
No.4 6シグマ活動の推進 

「Work Out その2」

M5型問題解決技法による
 日本版6シグマ活動の推進

 これまでの日本企業の製品やサービスの品質管理では、1970年から80年代にかけて「TQC活動」が大変顕著な貢献をした。それまでの「安かろう、悪かろう」の日本製品への悪い評判を払拭し、「Made in Japan」を購入したいと、世界の目を日本製品へ向けさせたのは、この「TQC活動」、中でも「品質管理7つ道具」を使った「QCサークル活動」であったと言って過言でない。それは、現場で働くの人達が仕事の上で困っていることを自らの問題として、主体的に解決しようというボトムアップ的な問題解決活動であった。

 しかし、経営課題として設定した「6シグマプロジェクト」は、これらの品質管理手法を使って簡単に解決できるレベルではなくなっている。現実に製造業では、機械化や自動化が進み、現場作業者の不慣れやミスのために発生する品質問題の割合は小さくなっている。製品の品質問題は、製造部門というよりは商品企画や研究開発、設計部門に起因する割合が大きくなっている。それだけに、間接費用のアップ、売上不振や収益性の低さ、悪化も含めて、問題にしなければならない「COPQ」の総額は、経営を揺るがすレベルにまでなっていることが多い。この意味で、6シグマにおける品質管理活動にあっては、経営や事業方針にまでさかのぼって、トップダウンの視点から全体的な業務の見直しが不可欠になっている。

 そこで、前号で、この6シグマ活動の展開(Work Out)にあって、「DMAIC」に代わる「日本版6シグマツール」としての「7つの問題解決ラウンドからなる『M5型問題解決技法』の活用」の有効性について提案を行った。さらに、「日本版6シグマ導入目的の明確化」のフロー(先月号参照)に沿って、「経営方針のアセスメント」から「6シグマプロジェクトの設定」までをトレースし、経営トップとプロジェクトメンバー間で問題意識を共有化する、最初の「問題提起ラウンド」について説明した。

第2ラウンド
現状把握ラウンド−その1

そこで、「問題提起ラウンド」に次ぐ2番目の問題解決ラウンドは、「現状把握ラウンド」である。これは「DMAIC」の「M」の部分に相当すると考えてよい。この現状把握ラウンドにおいては、「6シグマプロジェクト」に関連して、次の3つの視点から把握すべき課題がある。つまり、「COPQ」、「VOC」、「CTQ」の把握である。以下、その必要性と実際的な方法論について、順次紹介することにしたい。(参照図表1「問題提起Rから現状把握Rへ」)

「COPQ」の視点から
  プロジェクトの重大性を認識する

目に見える
 「COPQ」は氷山の一角 

 先ず、「6シグマプロジェクト」が、どれだけ切実で重大な経営課題であるかについて認識を深めるために、もう一歩踏み込んで、特に「COPQ」の視点から、その現状を定量的に把握しなおすことを提案したい。「COPQ」の把握とは、製品やサービスの提供において、その品質が不良であったために、クレームが発生し、その結果どれだけ直接的、間接的に無駄なロスが放出されたかを計上することである。あるいは研究や開発の段階において、関連する業務の品質が不良であったために、どれだけ研究開発費が予算をオー バーしたか、あるいは販売計画がどれだけ未達であったか、その結果どれだけ機会損失が生じたか等について、金額換算することである。

 一般に発生した不良品の損失や後始末にかかる目に見える形で放出されたコストは氷山の一角に過ぎない。はっきり目に見えない形で失われた機会損失やその後の信用回復にかかる費用を含めると、直接的損失コストの3倍から5倍にもなると言われている。

 「日本版6シグマ」では、この「COPQ」を金額で換算し、その金額の大きさを認識することによって、「6シグマプロジェクト」の経営課題としての位置づけをはっきりさせ、全体の問題解決への結集力を高めようとしている。

「COPQ」の算定方法

 A社は、化粧品や洗剤、食品を広く生産し、顧客に直接販売をしている。どの製品も競争力があり、これまでは顧客からダントツの評判を得てきた。しかし最近、顧客数が増大し、売上も上がるにつれて、苦情や不満が絶えなくなっている。営業担当者は顧客からの声だけに放置するわけにもいかず、手に負えなくなって品質保証部の応援を依頼するケースが増えている。営業部門は、ここ数年来、こうした顧客からのクレームへの対応に忙殺され続けており、この状態から何とかして脱却したいと思っている。顧客からのクレームがが少なくなれば、これまで懸けてきたクレーム処理経費も節約できるし、本来の営業の活動に専念でき、もっと販売金額も上がり、利益も出せるはずだからである。     

 ここにA社の営業部門が作成した「COPQ」の算出基準(参照図表2「A社のCOPQ算出基準」)がる。「COPQ」を金額換算するにあたっては厳密さを求める必要はない。現場の視点から、比較的はっきりしている部分、想定される部分に分けて、先ずは目に見えるはっきりした直接的ロスコスト部分を明確にし、全体の金額をざっと把握してみることで十分である。

図表2「A社のCOPQ算出基準」

・クレーム発生状況を確認するための営業マンの出張費用
・品質保証部門等から担当者を派遣する出張費用、同行営業マン
 の出張費用
・不良品の検査、回収、輸送費用
・不良品の修理、廃棄費用
・不良品の交換費用
・不良品の製造、販売コスト
・社内での連会議費用

 クレームは電話等で営業部門に入り、担当者へ回される。担当者は、丁寧に内容を聞かなければならない。顧客も好きで文句を言っているわけではない。商品に期待した満足が得られなかったために文句を言っているはずである。顧客の反応によっては、お詫びに行かなければならない。営業で対応できずに検査担当とか品質保証部を同行しなければならない時もある。製品の回収を要求されることもある。これら一連の対応には、すべてコストがかかる。これらは、目に見えて直接的にかかるコストである。この外に、解決するまでは本来の営業の仕事に手がつけられない場合もあり、その機会損も無視できない。簡単な交換やお詫びでは済まず、顧客を失う場合もある。その信用失墜を挽回する費用となると計り知れない。

 しかし、ここではいたずらに正確で詳細な金額換算にこだわる必要はない。なぜなら「COPQ」は、現状の大きな問題点を把握し、改善策を実施し、少しでも早く、目に見える形で「ロス金額」を小さくしていくことをねらいとした、営業や製造部門における1つの「管理指標」であるからである。その意味で、現実には「目に見える主な直接的ロスコスト部分」をはっきりさせるだけで十分である。

「VOC」の視点から
  改善課題のマトを絞り込む

クレーム情報は「VOC」そのもの

 現状把握ラウンドにおける二番目の課題は、顧客ニーズの把握である。一般にクレームはニーズの裏返しであり、製品やサービスに対する「VOC」をもっとも率直に表現したものである。こうしたクレームの発生の状況をいかに的確に把握するかは、その再発を防止し、「COPQ」を改善するために、さらに顧客満足度を上げ、売上を拡大するために、極めて重要な課題である。

 「6シグマプロジェクト」では、「COPQ」の大半は顧客からのクレームを処理するためにかかる直接的、間接的コストだと言ってよい。この「COPQ」を限りなく小さくしていくためには、顧客の声「VOC」、とりもなおさず「クレーム情報」を正しく把握し、改善課題を的確に設定し、解決しなければならない。そのためには、「どんなクレームがどのように発生しているのか」、つまりは「顧客は我が社の製品やサービスにどんな不満を持っているのか、どんな要望を持っているのか」について、顧客の声「VOC」を本質的かつ定量的に把握し、これを大胆に絞り込み、最有利に対応できる体制をつくっていかなければならない。

「VOC」の把握の仕方
 TQC活動で一般的な層別法

 A社の品質保証部門には、長年にわたって顧客から営業部や顧客窓口を通して寄せられた情報が整理、蓄積されている。品質保証部門のリーダーシップや指導で、各部門のQCサークル活動も活発である。下記に示す4つ図表は、昨年一年間のクレーム情報の全体を整理、集計し、件数の多い順に並べた「集計表」と、その一部を「パレート図」(問題となっているクレーム等を現象や原因別に分類し、件数や損失金額等の多い順にならべ、その大きさを棒グラフであらわし、累積曲線で結んだ図」にしたものである。(参照図表3「A社の層別によるクレーム分析」) 

 A社の例では、昨年のクレーム発生件数は全体で648件と大量かつ多岐にわたっている。しかし、図表3に示したような「分類基準」で集計し、パレート図化すれば、クレームの発生状況が良く見えてくる。

 最初の集計表では、「洗顔用石鹸F」、「受注業務」、「化粧品U」、「洗剤B」に関するクレームが多く、全体の半分近くを占めていることがわかる。だが、これだけではそれ以上のことはわからないし、クレーム解消のために打つべき手も見えてこない。そこで、クレームの発生部門別や製品別に、つまりクレームをもっと「層別」して見ようということにしたわけである。

 この「層別」は、これまでのTQC活動で、極めて一般的に行われてきたクレーム発生に関する現状把握方法である。A社の例で見れば、この「VOC」つまり、「クレーム情報」の層別分析によって、「洗剤工場」、中でも「洗顔用石鹸F」と「洗剤B」にクレームが集中していることを突き止めることができる。さらに、この2つの製品の問題を解決すれば、「洗剤工場」に関するクレームは、80%以上解決できるという見通しも得ることが可能になる。TQC活動における、こうしたクレーム情報の把握の仕方の基本的特徴は、製品別や部門別、工程別等の「クレーム分類基準」によって層別し、品質管理において問題解決に取り組むべき「マト」を大きく掴むところにあるということができる。

 ただ、このような「層別」は、大量かつ多岐にわたって発生しているクレームの前段階的処理方法としては有効であるが、「顧客は当社の製品やサービスに、どんなニーズを持っているのか」、つまりは、「当社の製品やサービスは、どんな欠陥を持っているのか」を本質的に把握しようとする段になると無力である。従って、せっかく「マト」が上手く絞れたとしても、これまでの現場の改善活動では、モグラたたき的な個別的で表面的な問題解決に終始しがちであった。もちろん、現場のボトムアップ的なQCサークル活動としては、それなりに評価されるが、こうしたアプローチ方法に本質的な課題解決までを期待することは困難である。

日本版6シグマ的アプローチ方法

 本来的に顧客はわがままで、そのニーズに際限はなく、クレームは自ずと多岐にわたるるのが普通である。その意味で、対処療法的なクレーム処理だけで不十分である。それなりの成果は上がっても、本質的な解決にはならず、いつまでもモグラたたき的な個別的対応に追われることになるからである。

 そこで、同じくA社に寄せられた洗剤関連に次いで多かった販売システム関連の「160」のクレーム情報を例に、「日本版6シグマ」では、このような「VOC」をどのように集計分析し、本質を把握するのか、またどのようにして対応すべき「VOC」を絞り込むかのかについて、以下紹介することとしたい。

第1ステップ

■情報のデータ化

 A社の受注、発送、代金請求、キャンペーン、広告宣伝等販売システム関連の「160」のクレームは、営業部門や顧客窓口の担当者によって収集され、記述された「生のアナログ情報」がベースになっている。(参照図表4「A社の販売システム関連クレーム生情報例」)

 もちろん、顧客の声を100%正確に記述することは不可能であるが、これらのアナログ情報がクレーム情報、すなわち「VOC」の原点である。日本版6シグマでは、「VOC」把握のために、先ず、顧客からのクレーム生情報を個別に具体的に簡潔な文章に記述する、つまりデータ化する。ここでは、特定の領域のクレームに偏ったり、また発生頻度にとらわれたりせず、360度の視点から、最近発生している様々なクレームに率直に耳を傾け、その意味をよく理解し、1つずつできるだけ簡潔でわかりやすい文章で表現できる情報処理力が求められる。

第2ステップ
■データのグルーピング

 A社の販売システムに関するこれらのクレーム情報は160個ある。これらを個別に正確にデータ化できたとしても、あまり多すぎて、結局どんなクレームがどのように発生しているのかわかりにくい。また顧客は本質的に何を問題にしているのかを把握することも難しい。

 そこで、これらのデータをラベルに転記し、机の上にバラバラに並べ、あらためて一枚一枚をじっくり読んでみる。個々のデータが何を言わんとしているのかを頭の中でイメージしながら、似たようなラベルを集め、いくつかのグループに分けていく。ここでは、顧客は結局何を言いたいのかについて、予見を持たず、軽い気分で、無理なく似たラベルを集め、大きなまとまりにしてみる。

3ステップ
■表札作り

 VOCの本質的意味の把握

 次は、各グループごとに、個々のデータが言わんとしている内容を探り、共通している本質的な意味を浮き彫りにする。これを簡潔でわかりやすい文章にし、一枚のラベルに記述する。これが「表札」である。つまり、この表札によって、内容が共通しているとして集められた何枚かのラベルを代表させる。

 「表札をつくる」ということは、言い換えれば、グルーピングされた何枚かのラベルを、それぞれに共通した本質的な意味を浮き彫りにした一枚のラベルによって置き換える作業である。このグルーピングと表札づくりを順次繰り返すことによって、160枚のクレームデータを、それぞれの本質的な意味を損なうことなく、最終的に6枚か7枚の表札で代表させることができる。こうして最終的に集約された表札をもとに、顧客クレームの基本的な意味合いをコンセプト化し、そのコンセプトに対応した形で業務改善課題を設定することが可能になる。(参照図表5「A社の販売システムに関するクレームの基本的コンセプトと業務課題例」)

第4ステップ

■「VOC」の定量的把握

 第3ステップで明確にしたいくつかの「VOCの基本的なコンセプト」は、発生しているクレームの本質的な意味を要約したものである。逆に言えば、発生している個々のクレームを「VOC」の本質的意味をもとに分類、すなわち「層別」するための「基準」であるということができる。

 そこで第3ステップでは、この「基準」をもとに、あらためて、過去あるいは今後において、ある期間に発生した個々のクレームを層別し、定量的に把握した結果によって、今後重点的に対応すべき基本的な「VOC」を絞り込むことが可能になる。この日本版6シグマ的アプローチ方法では、個々のクレームをバラバラに追いかけるのでなく、「VOCの基本的なニーズ」を基準として、個々のクレームを束ねることによって、結局、今後クレームの発生を撲滅するために、「何を改善すべきか」を本質的に捉えることがねらいになっている。     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
     BMM【Belhyud Mail Media】 No.54 2002.4.4発行
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          【WEB】 http://www.belhyud.com/0.htm
          【MAIL】 jin-inoue@belhyud.com
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                【発 行】 ベルヒュ−ド研究会
                【編 集】 井 上  仁


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