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  BMM【Belhyud Mail Media】 No.53 2002.3.7発行   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新連載 

「日本版6シグマ」による「人材育成と組織強化」

No.2
  6シグマ活動のための
 5つのガイドラインと基本フロー

日本版6シグマと
 5つのガイドライン
 アメリカの「6シグマ」には、「QC」の時代から「COPQ」(Cost Of Poor Quality)と「CTQ」(Critical To Quality)という2つの重要な指導概念がある。つまり、品質不良のために放出される無駄なコスト「COPQ」を極限にまでゼロに近づけるために、品質不良に大きな影響を与えている内部要因「CTQ」を絞って解決するという考えである。

 「日本版6シグマ」でも、この2つを極めて重要な指導概念として位置づけている。前号で既に紹介したように、「日本版6シグマ」は、「第1変曲点、第2変曲点」の認識をもとに、「NO.1、2戦略」の実現を目標に、「People Out」と「WorkOut」の路線に沿って、「COPQ」を改善するために、「CTQ」を絞り、経営トップ層と現場が一体となって展開する問題解決活動である。(参照:先月号図−2「日本版6シグマの背景」)

 そこで「日本版6シグマ」では、この「COPQ」と「CTQ」に、「VOC」( Voice Of Customer)と「GQ」(GoodQuality)と「SSP」(6sigmaProject)を加えた指導概念を、すなわち、一連の問題解決活動を効果的に進めていくために不可欠な「5つのガイドライン」として設定した。(参照:図−1「日本版6シグマ 5つのガイドライン」)

(1)GQ(Good Quality)の追求
 「6シグマ」は既に述べたように、統計的に言えば100万個の製品中3.4個程度の不良しか出さない品質レベルを目標としている。「日本版6シグマ」では、この6シグマレベルの品質を「GQ」(Good Quality)」と呼ぶこととした。そして「日本版6シグマ」は、この「GQ」レベルの品質を、スピーディに、確実に、ローコストで実現するための問題解決活動であるとして、「GQの追求」を第1のガイドラインとして設定した。

 ところで、「GQ」という概念には、次のような「2つの視点」が必要である。第1の視点は製品やサービスの品質の平均をいかに高いレベルに上げるかである。第2は、同時にそうした高いレベルにおいて、製品やサービスの品質のバラツキをいかに小さく押さえるかという視点である。この意味で、「日本版6シグマ」では、製品やサービスの品質向上のための改善を模索し、実現するだけでなく、その改善の成果を維持、管理していくことがもっと重要な課題になってくる。

(2)COPQ(Cost Of Poor Quality)の認識
 では、今なぜ、「6シグマレベルのGQ」の実現をめざさなければならないのか。「日本版6シグマ活動」のための第2のガイドラインとして、あらためて「COPQ(Cost OfPoor Quality)の認識」という概念を位置づけしたい。この「COPQ」という概念にも、先の「GQ」との関連で、次のような「2つの視点」が必要である。

 1つは、「製品やサービスの品質が不良であることによって発生し、放出される無駄なコストの重大性を認識する必要がある」という視点である。品質不良が発生すれば、その改善や後始末に直接的、間接的にかかるコストの総計は、大変大きいものになる。無駄なコストとして放出される「COPQ」が、いかに大きい額になるかを把握し、これをゼロに近づけることが、極めて今日的な経営課題であるという認識が重要である。

「COPQの第1の側面」
・不良品を発見するための費用
・不良品を選別するための費用
・不良品の修理費用
・不良品の廃棄費用
・不良品の製造コスト
・市場に出た不良品の回収費用
・販売上の機会損失
・信頼回復のための費用

 2つ目の視点は、製品やサービスの供給に関連する「業務の品質」、言い換えれば業務の生産性が低いために発生し、放出されるコストや失われる機会損失を無視してはならないということである。

 製品やサービスの開発から生産、供給までの全体的な関連業務の効率性の問題である。初期の計画や競合他社と比較して、スピードと確実さとコストにおいて、どれだけの水準であったかという視点である。現実には、この全体業務の効率の低さが、「COPQ」に大きさな影響を与えている。また、今日グローバルな低価格化競争が進行する中で、販売価格のアップやコスト低減の努力はほぼ限界に達している。この意味で、ここ当面は、「COPQ」をいかにして限りなくゼロに近づけていくかは、極めて重大な競争課題になってくるはずである。

(3)VOC(Voice Of Custmor)の重視
 「GQ」を実現し、「COPQ」を改善するためには、顧客は何を「GQ」と考えているかをはっきりさせなくてはならない。つまり、顧客の声「VOC(Voice Of Custmor)」の重視である。「COPQ」の大きさは、「GQ」と「VOC」の乖離の大きさによって決まる。また、この乖離の大きさは、「COPQ」としてのロス金額の大きさだけでなく、今日の経済環境下では、即座に顧客の信頼喪失につながりかねないという点で切実である。そのために「日本版6シグマ」では、第3のガイドラインとして、「VOC(VoiceOfCustmor)の重視」を取り上げている。「COPQ」を限りなくゼロにするということは、顧客の声である「VOC」を重視し、これに可能な限り応えていくことである。

(4)CTQ(Critical To Quality)の絞り込み
 現実的には、「VOC」を重視するということは容易なことでない。「VOC」の大事さはわかっていても、不注意や実力不足でいたずらに「COPQ」を大きくしてしまっているのが普通である。
 しかし、「COPQ」には、必ずはっきりした原因がある。そうした原因は、ものづくりやサービス提供の現場のみならず、経営方針や意志決定のあり方、関連部門の業務全般にわたっている。そこで、「日本版6シグマ」では、「CTQ」(Critical ToQuality)という概念を、「VOC」に十分対応できない理由、言い換えれば「品質不良を発生させてしまう内部的な要因」という意味に解釈し、第4のガイドラインとして位置づけた。
 従って、「CTQ」は「VOC」と対立する概念であり、結果的に「COPQ」に重大な影響を及ぼしている。「VOC」を重視し、対応するためには、「CTQ」を広く深く探り、これを排除するか、根源的に解決するかしなければならない。

(5)SSP(6 Sigma Sub−Project)
 これまで見てきたように、「日本版6シグマ」は、以上「4つのガイドライン」を基本になっている。つまり、「COPQ」の大きさを金額換算することによって、「6プロジェクト」の重大性を認識する。「COPQ」を改善するために、最優先で「VOC」を把握する。「VOC」に応えるために、競合他社のレベルも調査した上で、「GQ」を決定し、障害となっている「CTQ」を絞りこむ。
 そこで、最後に「VOC」と「CTQ」を踏まえ、実現すべき「GQ」の内容と目標を決定する。「日本版6シグマ」では、この「GQ」を実現するために解決すべき課題を「SSP」(6Sigma Sub−Project)とネーミングした。「SSP」は、トップダウンで設定された「6シグマプロジェクト」を実現するために、関連業務部門が解決しなければならないとした「現場の課題」である。
 ここで大事なことは、「日本版6シグマは、決して理想の追求ではない」ということである。一般に「VOC」は無限であり、その要望に100%応えることは本来的に不可能である。また、「VOC」に対応するためには、「時間、資金、人、アイデア、技術、問題意識・・・」等の制約条件が多くあるのが普通である。そうした制約の中で、最低限、「何のために、何を、どこまで、どのように、いつまで解決すべきか」を明らかにしたものが「SSP」である。「SSP」は、最善を目指すが、決して万全なものではない。従って、「SSP」は、現場の取り組み案として提案され、「6シグマプロジェクト」の責任者によって、経営判断で最終決定されるべき性格のものである。

日本版6シグマ
 展開のための基本フロー

 「日本版6シグマ」の全体像を把握する目的で、「5つのガイドライン」を設定し、その内容と相互関係について紹介した。それでは、日本の平均的な企業の場合、この6シグマ活動をどのように導入し、展開を図ったらよいであろうか。
 詳しくは次稿に譲ることにするが、ここでは「2つのステップ」からなる基本的な手順についての概略を紹介することとしたい。第1に経営の立場から6シグマ導入の目的を明確にし、いかにして具体的な「6シグマプロジェクト」を設定するか、第2にそのプロジェクトをどのように展開し、成果に結びつけるかについてである。(図表2参照)

第1ステップ

6シグマ導入目的の明確化

(1)経営方針のアセスメント
「日本版6シグマ」は、経営トップが提示した経営課題としての「6シグマプロジェクト」の解決が目的である。それは社員の働き甲斐や生き甲斐に基づいたやる気や挑戦意欲を重視するものであるが、原則的には、かつてのQC小集団活動のようなボトムアップ的に生まれることに依存するものではない。それは本来的に、経営トップ自らが、経営課題を明確にし、社員に、熱く訴えることから始まるものである。
 そのためには、先ず経営責任者自身が、自らの経営方針をアセスメントすることから始めなければならない。例えば、SWOT分析の視点から、市場環境や内部資源の変化を踏まえ、「我が社や我が部門の事業方針にとって、何が追い風で、何が向かい風か、何が強みで、何が弱みか」を把握し、経営方針の妥当性そのもの厳しく見極めることである。
 ますます厳しくなっていくと予想される今日の経営環境下では、本来的にはっきりとした競争力のない事業には無駄な投資をすべきでないからである。
 今後5年先、10年先、トップレベルで十分やっていけるという見通しと確信を持って、すなわち「NO.1、No.2戦略」の上に立って、経営トップ自らのリーダーシップと責任で「事業革新課題と目標」を設定することこそが、「6シグマ導入」の出発点そのものである。

(2)6シグマプロジェクトの設定
次は、「6シグマプロジェクト」の設定である。「6シグマプロジェクト」は、「事業の革新課題と目標」を実現するために解決しなければならない「経営課題」であり、当然、その責任者は事業部門長クラス以上の経営責任者である。アメリカの6シグマでは「チャンピオン」がこれに当たる。
 「6シグマプロジェクト」のリーダー、つまり「ブラックベルト」は、この経営責任者によって任命される。そしてメンバーはリーダーが人選し、経営責任者が任命する。リーダーの専任化は不可欠であるが、メンバーを専任とするか兼務とするかは、プロジェクトの内容によって適宜決定すればよい。
 また、「日本版6シグマ」では、その一連の活動は、「SSPの設定」と「SSPの実現」という2段階に分かれ、プロジェクトリーダーは、この2段階の活動のマネジメントのすべてを任される。つまり、エンパワーメントである。しかし、「SSPの設定内容と実施計画」については、責任者(チャンピオン)に提案し、経営判断を仰がなければならない。「日本版6シグマ」は、あくまでも経営責任者のトップダウンの形で展開されるべきものであるからである。

6シグマプロジェクト設定の手順
1SWOT分析で経営環境変化を把握する。
2標的顧客を決定し、そのニーズを絞り込む。
3自社独自の製品、商品、サービスを明確にする。
4売上高やシエア、利益などの経営目標を設定する。
5経営目標実現のための経営課題「6シグマプロジェクト」を設定する。


SWOT分析とは
経営資源の強み(Strong)、弱み(Weak)、環境変化の追い風(Oppotunity)、向かい風(Threat)を明確にし、戦略を決める。

第2ステップ
6シグマ活動の推進

(1)Work Out
   日本版6シグマツールの実践的習得

 次はいよいよ「6シグマプロジェクト」への取り組みである。ここには、前号で触れたように「Work Out」路線に沿った「問題解決的アプローチ方法」がある。アメリカの6シグマには、「D:Definition、M:Measure、A:Analysis、I:Improvement、C:Controle」の4つのステップからなるアプローチ方法がある。しかし、このアプローチ方法では、経験的に複雑で解決が困難なプロジェクトでは行き詰まってしまうことが多い。現実のプロジェクトでは、参加メンバー間の価値観や問題意識のバラツキ、関連組織間の利害関係等の問題が複雑に絡んでおり、これらを解きほぐしながらのアプローチが欠かせない。

 そこで「日本版6シグマ」では、この「DMAIC」に代わるもっと実践的なツールを体系化した。「問題提起→現状把握→具体策→課題設定」と「最適案作成→リスク対策→実行計画作成」という「7つの問題解決場面」で構成する「W型問題解決フロー」をベースにした「日本型6シグマツール:M5型問題解決技法」である。

 「日本型6シグマツール」では、「問題提起ラウンド」で、「COPQを限りなくゼロに」という「6シグマプロジェクト」についての基本的認識を全体で共有化することから始める。次の「現状把握ラウンド」では、「VOC」と「CTQ」を絞り込み、「具体策」と「課題設定」のラウンドでは、「6シグマプロジェクト」を実現するために解決しなければならない課題「SSP」を設定する。さらに後半では、この「SSP」を確実に実行し、成果を出すための実行分担体制づくりを中心としたプロセスが用意されている。

 なお、「日本版6シグマツール」では、「Semi−Exact Science」としての情報処理技術をベースに、「CTQ」と「SSP」を自らの力でコンセプト化するステップを重視している。

 また、「7つの問題解決場面」を1つずつ決着をつけながら段階的に進めることが原則になっている。なぜなら、そうしたステップの踏み方が、参加メンバーやチームのプロジェクト課題への意識を高め、問題解決力を向上させる一番の近道であるからである。しかし、「DMAIC」の場合も同様であるが、各場面で要求される個々の問題解決スキルは、統計的手法も含めて比較的容易である。すべて実践的に学べるものばかりであることだけは、ここでは特に強調しておきたい。

(2)PeoPle Out
  問題解決力のある6シグマ組織の追求

 ジャック・ウエルチは、アメリカ企業に一般的であった「指示命令で管理される組織」を否定した。しかし、日本の和と協調をベースにした「ボトムアップ型組織」の限界も看破していた。つまり、ジャック・ウエルチは、こうした組織に固執する社員を整理し、一人一人が経営課題の解決に創造的に挑戦する、いわゆる「6シグマ組織づくり」を追求したのである。ところで、多くの日本企業の経営者は、厳しくトップダウンで全体をリードすることを苦手としている。そのため日本では、アメリカにおける以上にプロジェクトリーダーによる「6シグマ組織づくり」への期待は大きい。
 そこで、日本版6シグマの展開にあっては、経営課題をよく認識し、メンバーに熱く語りかけ、彼らのやる気や知恵を引き出し、自由闊達に課題解決にチャレンジさせることができる「6シグマリーダー」の育成と、6シグマ活動の成果を公正、公平に、かつ積極的に評価し、応える「6シグマ評価システム」の導入を中心とした「6シグマ組織の整備」が不可欠である。


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