フィンランド旅行記
森と湖と白夜、音楽
そして親切
第7回

オウル(Oulu)

6月25日(月)10時発の列車に乗り、12時27分にオウルに着く。一人17.96ユーロ。線路脇はひたすら白樺と針葉樹の森だった。オウルは辞典によれば、「ボスニア湾に面しオウル川の河口に位置する港湾・文教都市。人口9万8582(1987)。古くから製材業が盛んで,1930年代からはパルプの生産を始め、近年は日本にも輸出している。木造船建造に必要なタールはこの地方の重要な製品で,19世紀初頭はその輸出港として大いに栄えた。」とのことである。

市庁舎、博物館、教会などの建物はどれも美しい。駅の反対側にはバスプールがあり、スーパーのある新市街が広がっている。泊まったLasaretti Hotel は町の北にあるOulu河畔の公園の中にあって、元は醸造所だった赤煉瓦の建物を改装したもので、コンファレンスに使うことを念頭に設計されている。
特にレストランの内装や食器(すべてイーッタラのオリジナル)のデザインは見事だ。これで1泊朝食付き87ユーロは格安だ。朝食ブッフェではプレーンヨーグルトにいろいろなベリーの入ったシロップをかけて食べた。これは絶対お薦めだ。3泊した中で2日は夕食をこのホテルのレストランでとったが、料理もデザートもすごく美味しかった。僕らが食事をしていた時、いつも朝食時に使っているスペースでは近くで作業をしている人達が夕食を取っていた。めいめいが勝手にバターを塗ったパンとスープをテーブルに運んで黙々と食べている。おかわりは自由。コーヒーを飲み終えると帳場で各自払っていた。どんなスープなんだろうと、カミさんは興味津々だ。

ホテルのそばを流れるオウル川にはダムがあり、下流からダムの上流に向かって魚道が作られている。これは本当の小さな川のように造成されていて、周囲には花や植物が茂り、幾重にも曲がったり小滝があったりする。公園の風景によく溶け込んでいる。鮭が上がるとのことだ。
公園はよく手入れされているのだが一見原始林のようで、散歩道の脇には日本では高山植物であるボウフウキンポウゲ(写真)が沢山咲いていた。数十種の野の花々が見られる。クロツグミ、カササギがいる。リンゴの花が咲いている。

この公園を抜けると港近くのKauppatori(マーケット)にいたる。昼飯はだいたいはここでとった。港のほとりには小さな面白い店が並んでいる。釣道具屋があったのでひやかしに入った。

「貸し竿はある?」
「売り物だけだよ」
「この辺で何か釣れるの?」
「Pike(カワカマス)とPerch(スズキに似た川魚)だね」
「Pikeの大きさはどれくらい?」
「これくらいだよ。」と店の主人が両手を広げる。
「ちょっとやってみようか」

やおら竿を持ってキャスティングする。ルアーは見事に飛んでいく。2,3回やっていたらヒットした。しかし、バラしてしまった。私にルアーの食痕をみせて、主人は言った。「Perchだったね」。彼の写真を撮った。

INFO、市庁舎、教会、美術館、博物館などはマーケット広場から歩いてそう遠くないところにある。INFOに立ち寄って、行きたいと思っていたLiminka 湾 (Liminganlahti) 、野鳥サンクチュアリとそこへのバス便の情報を教えて貰った。教会へ行ってみる。すっきりした感じの良い教会だ。祭壇の上の壁には、左から右へ、星空、それが段々と明るくなり、また、夕空に変わる様子が表現されている。ステンドグラスも明るくきれいだ。入口にひっそりとサマーコンサートのポスターが立っていた。9月15日までに計10回開催されるとのことだ。第2回目が今日、6月26日、何という幸運なのだろう(第3回は7月10日だった)。
Ismo Hintsala というオルガニストが出演した。5ユーロ/人。この人はシベリウス・アカデミーを卒業後、パリのコンセルバトアールで勉強し、ノートルダム寺院のオルガニストをやって、現在はOuluで教育、ヨーロッパ中で演奏活動をしているとのことである。曲目は、O.オルソン「ソナタ ホ長調 作品38」、E.ギゴー「スケルツォ」、E.H.ルマーレ「アンダンティーノ 変イ長調 作品83」、T.デュボア「トッカータ」、O.メリカント「ルコウス」、そして、シベリウス「カレリア組曲から」、であった。
その後の旅行中、頭の中ではカレリア組曲が鳴り続けた。終演後、教会の外へ出てきたら中年のおばさんに話しかけられた。彼女は若い頃にケンブリッジの英語学校へ行ったそうで、生徒の中に日本人の男性もいて今でも文通しているそうだ。「大阪に住んでいるのです。フィンランドにおいでというと、近いうちにと返事はあるのですが、来たことがないんですよ。」とちょっと不満そうであった。話している脇をオルガニストが通ったので「素晴らしかったです。ありがとう。」と声をかけた。彼も笑顔で「Thank you. Have a nice evening.」といって行ってしまった。あとでサインを貰えば良かったと悔やんだ。


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