フィンランド旅行記
森と湖と白夜、音楽
そして親切
第15回

ミッケリ(Mikkeli)
その3

ゲルギエフ音楽祭
ヴァレリー・ゲルギエフは旧キーロフ劇場(現マリインスキー劇場)管弦楽団の指揮者として、ソ連崩壊後の混乱から同劇場を立て直し世界的な地位へ引き上げたこと、および、その特異な風貌と情熱的なパフォーマンスでよく知られている。この音楽祭はすでに20年になるが、ミッケリで行われている理由の一つは、ゲルギエフのサマーコテージがミッケリにあるからだそうだ。7月4日のプログラムなどは以下の通り。

指揮と独奏バイオリン
Rainer Honeck (ウイーンフィルのコンサトマスター)
曲目
モーツアルト バイオリン協奏曲第5番 イ長調
モーツアルト 交響曲第36番「リンツ」 ハ長調  休憩を挟んで
シュトラウス一家のワルツ9曲 + アンコール1曲
場所
Martti Talvela Concert Hall
http://www.tourfinland.de/mikkeli_50plus.html 

6時前にホールに着いた。予約チケットの受け取りにはまだ早いので、白ワインのグラスをもって池の端のテーブルに座っていた。対岸ではまだ日光浴の人達がおり、サウナ小屋から煙が上がっている。シャンパン・グラスを持った80代半ばの感じの良い老夫婦が「一緒にいいですか」といって同席し、話が始まった。サヴォンリンナから移動してきたといえば当然オペラの話になる。
「あのオペラ祭は私たちの誇りだけれど、残念なことに、ソリストはいつも外国からなんですね。フィンランドにもいいソリストがいるのに」

僕は「失礼」と中座して、予約チケットを受け取りにホールへ入ってうろうろしていたら、「Mr. Nakamura !」と呼ばれ、なんなく手続きをすることができた。船旅の時と同様に、こんな名前はヨーロッパにはないから、相手はすぐ分かるわけだった。座席は前から5番目の列のほぼ中央、ゆったりしていて、足を曲げなくても前を人が通れる。結構ロシア人が来ている。中にはオケのメンバーの知り合いらしい人もいた。ロシア女性はおしゃれで綺麗だ。

演奏は素晴らしかった。「リンツ」の第3楽章での唸るような弦の響きには驚いた。
ウインナワルツも良かったが、ウイーンというよりチャイコフスキーのワルツのように鳴るのが面白かった。
ワルツの前にかなり長い休憩時間があり、皆さんホールのロビーのテーブルにちゃんと座ってケーキとシャンパン(あるいはコニャック)を楽しんでいた。

眺めていたら、公式カメラマンが通りかかって、「お写真とらせて下さい」という。二人でカメラに収まった。来年のプログラムに載るかも。

終演は10時過ぎだったが、まだ日が出ている。のんびりと歩いてホテルへ帰った。マーケット広場をよこぎっていると、カフェでネクタイをした男性が子供とアイスクリームをなめていた。彼はコンサートのポスターを持っていた。目が合ったので「貴方も?」のつもりで手を挙げたら、彼も笑顔でポスターを挙げて応えた。なんとなく嬉しかった。

午後11時ころ、ふと窓の外をみたら、南南東の低い丘の上に満月がいた。(写真)
月は薄明るい空を南の方へゆるゆると昇っていった。2時頃には南南西へ沈んだのだろう。


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