フィンランド旅行記
森と湖と白夜、音楽
そして親切
第14回

ミッケリ(Mikkeli)
その2

次の日にまた広場を通りかかると、40代後半かなと思われる男に声をかけられた。
「日本から? ロンドン・オリンピックでは日本はいくつ金メダルをとると思うかね」
「そうですね、水泳の北島くらいかなー」
「ユードーは強いじゃないか」
「えっ、ユードー?ああ、柔道ね。どうかなー、昔は強かったけど」
「体操はどうだ」
「そうですね。内村は有望かな」
「遠藤は強かったねー」

途切れることなく日本選手の成績データが出てくる。
嬉しいがちょっと付き合いかねて、いい加減なところで逃げ出した。

日本で、「フィンランド人は親日的で、それは日露戦争でロシアを打ち負かしたため。その証拠に、フィンランドにはアドミラル・トーゴー(東郷元帥)という銘柄のビールがある」という話をよく聞いていたが、スーパーでもカフェでも、Stockmannのデパ地下でも見たことはなかった。ずいぶんと昔のことではないだろうか。

この日はゲルギエフ音楽祭のコンサートだが、夕方まで時間がたっぷりあるので、INFOで貰ったミッケリの観光案内パンフをみたら、Charming Gardens というページがあった。ミッケリの町の周りにはいろいろな美しい庭があるようで、Kenkavaro's organic gardenなら歩いて30分くらいなので行ってみた。やはり迷ってしまって、何度も人にたずねて、やっとたどり着いた。
そこは湖の畔にある瀟洒な木造の家の庭で、花盛りであった。特に牡丹が見事だった。テントの下で作業をしている東洋系の若い女性がいたので何気なく近づいたら、「写真をとりましょうか」と日本語で話しかけられた。フィンランドの大学で勉強して4年になる日本人女性であった。(写真

「ええ、去年の夏休みには皿洗いのアルバイトをやってました。今年は、伝統手芸のフォーラムに参加したいので、ここにいます。」

そういいながら、白樺の皮を丁寧にはがして、籠をつくる素材を準備するべく手を動かしている。

「フィンランドは徴兵制です。高校卒業すぐに1年間の兵役をすませる人が多いです。兵隊は週末には家に帰ります。お二人がカヤーニで目にされたのは、そんな場面じゃないでしょうか」

「フィンランドの冬は暗いと云いますが、8時すぎから4時前くらいまでは、まあまあ明るいですから、私はそれほどとは思いません。」

時折訪れるフィンランド人となにげなく会話している様子から、彼女がフィンランドにすっかり溶け込んでいるのがよく分かった。持っていた柿ピーを一袋進呈して別れた。町へは"列車バス"で帰った。


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