中国に対抗、日米同盟強化
2015
市政6月号
(全国市長会)

 戦後70年のゴールデン・ウィークの安倍首相訪米によって、記念すべき年にふさわしい日米提携の強化が実現した。当然ながら、主要な仮想敵国は日米にとって最大の脅威の中国である。従来は、米国には日本防衛の義務はあるが、日本側は憲法解釈上、米軍を支援できなかった。だが、今回は、その解釈の変更によって、集団的自衛権の限定行使が認められ、それが可能になった。特に、存立危機事態と判断される場合には、「日本以外の国に対する武力攻撃」に日本が対処できるようになったのである。新しい日米防衛協力の指針はこれを踏まえており、日米同盟は双務性が強まったわけである。

 しかも、中国の日本威嚇の標的となっている東シナ海の尖閣諸島の防衛義務について、米国側が再確認しており、中国の脅威全体に対する日米間の戦略的な安保協力体制が実現した。特に、中韓が煽っているいわゆる歴史問題についても、日米政府間に「過去よりも、将来が重要」との見解の共有ができたことは、日米同盟の絆を物心ともに一層強めるのに役立つと見られる。歴史で日米離間を策した中韓の試みはこれで頓挫を余儀なくされた。


すべてに中国の影がちらつく
 今回の安倍首相の訪米に関係する公式的な目玉となる行事は3つあった。時系列的に挙げると、第一は、外務・防衛担当の閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)での新しい日米防衛協力の指針(ガイドライン)についての討議とその合意である。第二は安倍首相とオバマ米大統領との日米首脳会談。第三は米上下両院合同会議での日本の首相としての初の演説だ。

 日米首脳会談では、二国間問題の他にも、同盟強化に関連した重要な議題があった。日米両国が早急な合意作りを目指す環太平洋経済連携協定(TPP)の今後の進め方、それに、中国が主導するアジア・インフラ投資銀行(AIIB)への今後の対応をめぐる意見の交換があった。さらに言えば、中国が領有権を主張する南シナ海の大掛かりな岩礁埋め立て、いわゆる「海の万里の長城」問題も見逃せない。いずれも、日米両国だけでなく、アジア・太平洋地域、さらには世界的な平和と安全に影響を及ぼす重要な案件ばかりだ。

日米の利害が一致
 日本はここ数年間、東シナ海に浮かぶ沖縄県の尖閣諸島の領有権に挑戦しようとする中国の野望への対応に苦慮している。しかも、今年は戦後70年とあって、中国の習近平政権は韓国の朴槿恵大統領と組んで、靖国神社参拝、歴史認識、慰安婦などの問題で様々の要求を突き付け、日本を追い詰めようと懸命だ。

 また、尖閣諸島に関しては、中国は艦船を日常茶飯事のように同諸島近海に派遣し、領海侵入などの嫌がらせを繰り返している。しかも、南シナ海でもベトナム、フィリピンなど沿岸諸国と深刻な紛争を引き起こしている。 

 このような情勢のため、第二次安倍政権になって以来、日中首脳会談は昨年秋までずっと開催されず、両国間には冷たい空気が支配していた。今年4月のバンドン会議で2回目の首脳会談が実現、習主席は昨年秋とは一変、笑顔で会談に臨んだのだ。だが、法の支配を無視した、現状変更の中国の動きは続いており、如何にして、中国による離島の占領などを阻止するかが日本にとって喫緊の課題となっている。

 他方、オバマ米政権も一時は米中間に「新しい大国関係」を、との中国の呼び掛けに傾いたこともあった。だが、その狙いが巧妙にアジアから米国を排除して覇権を奪取しようという身勝手な戦略であることが分かって、米国も警戒感を強めている。

 しかも、オバマ大統領は数年前から、アジア地域の繁栄と中国の台頭を見て、アジア・太平洋地域への回帰路線(リバランス政策)を打ち出し、中国による各種の現状変更の動きの阻止に重心を移し始めている。

 このような戦略転換の中で、米国も日本の重要性が分かってきた。日本はアジアで唯一、中国と対抗できる総合的な力量を有し、日本との安保協力は不可欠だ。万が一、ここで中国の軍門に下ると、アジア地域から米国のプレゼンスは一掃され、永久に復活できないと悟ったのだ。米国の財政不安もある。

 中国に対する日米両国の利害が一致したのである。欧米の一部マスコミでは、安倍首相に対して「歴史修正主義者」といった批判もあるが、ここはやはり日本とタッグを組むのがベストというオバマ政権の政治判断が安倍首相の訪米を成功させたと言えよう。

たじろぐ中韓
 日米同盟の強化は、日米の離間を策してきた中国の習近平政権にとっては、大きな誤算である。また、中国と共闘する韓国の朴槿恵大統領にとっては、様々の内政問題も抱えており、深刻な事態だろう。あまりにも執拗な朴大統領の対日非難に、米国政府もうんざりだし、中国主導のAIIBには参加したものの、米国の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に関連して、米中二股外交の咎めに苦悩している。

 日本を深追いし過ぎたことが、日米同盟の強化という逆効果を生んだわけだ。中国が繰り返す様々の威嚇的な行動が、日本国民に反中感情を高め、憲法解釈の変更を側面から支援した形なのである。

 韓国の朴大統領は就任以来、慰安婦問題などを条件とし続けており、安倍首相との首脳会談は未だに実現していない。中国の習主席はすでに2回安倍首相と会談しており、朴大統領は中国にうまく梯子を外された感じだ。朴大統領の日本非難のお先棒を担いだ韓国のマスコミも今頃になって大統領批判に転じ始めたようだが、戦略眼ゼロで事大主義の朴大統領がもたらした弊害の修復は、至難の業だろう。だが、誰も同大統領には同情しそうにない(5月5日)


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