極東に新たな変化の兆
2015
市政1月号
(全国市長会)

 2015年に極東情勢が新たな展開を見せそうな国際的な兆しが出てきた。その一つの出来事は、米国の中間選挙で、野党共和党が上下両院で多数派となり、与党の民主党が大敗を喫したことである。これでオバマ大統領は2年の任期を残して、事実上のレームダック(死に体)化してしまった。
 2期目後半における歴代の米大統領の伝統的な行動は、歴史に名を残す業績作りに邁進することだ。その点で、オバマ大統領の北朝鮮への出方が大きな関心の的となりそうだ。もう一つの出来事は、第2次安倍政権誕生以来、初めての安倍首相と習近平国家主席との日中首脳会談がやっと実現したことだ。これで、日中間の軋轢がすっかり解消するわけではないが、日中の関係改善への動きは各方面に波紋を及ぼすだろう。 


民主党が大敗

 
11月4日に実施された米中間選挙の結果、注目の上院(定数100)では、共和党が少なくとも52議席を獲得して、8年ぶりに上院の支配権を奪回した。下院(定数435)でも、改選前から多数派だった共和党がさらに約10議席も伸ばした。同時に実施された知事選挙でも、共和党の躍進ぶりが目立ち、非改選分と併せて、全国51知事のうちで31の知事を占めた。

 この原因については、二期目の大統領の中間選挙では、概して、野党側が有利とはされているが、今回の場合は、同時にオバマ大統領の不人気が議会や知事選にマイナスの影響を与えたとの見方が強い。民主党の候補の間では、このような事情から、オバマ大統領への応援演説の依頼を避けるケースがかなりあった。

 他方、共和党候補は民主党候補者とオバマ大統領が一体であるとの主張を展開して、有権者に民主党離れを促す戦術を取った
 この民主党の大敗で、オバマ大統領は2年の任期を残して、事実上、レームダック的な存在になったようだ。上下両院を共和党に抑えられては、オバマ大統領好みの政策や法案に固執することはできないし、閣僚や高級官僚の政治任命でも、上院で共和党の反対で承認を得ることができなくなる。

 共和党は環太平洋経済連携協定(TPP)ではオバマ統領との協力を表明しているが、医療保険改革(オバマケア)や違法入国者への対応については、あくまでも反対の立場を貫くと宣言しており、オバマ大統領は苦しい立場に追い込まれそうだ。

 このような状況の中で、オバマ大統領は不人気な外交安保政策の立て直しを目指して、ヘーゲル国防長官の更迭に踏み切った。ウクライナ、シリア、イスラム国(ISIS)への対応で大統領と意見の相違が限界点に達したことが原因とされており、事実上の解任のようだ。米メディアの報道などを総合すると、ヘーゲル長官はホワイトハウスのオバマ大統領の側近グループによるマイクロ・マネッジメントに嫌気がさしていたとされており、新議会では後任の承認問題で一波乱ありそうだ。

 こういう状態の中で、オバマ大統領が考えそうなのは、歴史に名を残すために、大統領が比較的強いフリーハンドを持つ外交案件で思い切った行動に乗り出すことである。その場合、一番その可能性が高いのが北朝鮮との関係正常化問題である。あの保守派のブッシュ前大統領も興味を示したし、クリントン元大統領も、政権末期に北朝鮮との正常化工作に懸命になった。いずれも、実らなかったが、今回は金正恩第一書記の北朝鮮側も中国との関係が冷え切っているだけに、米国との関係正常化に意欲を燃やす可能性がある。事実、最近、北朝鮮は拘束米国人3人を解放し、この件で、なんとクラッパー米国家情報長官がわざわざ交渉のために平壌まで出掛けたのだ。北朝鮮と中国の関係冷却化、日本人拉致被害者問題を通じて北と日本との接触の緊密化、それに「難しい立場」にあるオバマ大統領といった状況を総合的に考えると、米朝正常化秘密交渉に最適の環境にあるかもしれない。

久々に日中首脳会談

 安倍首相と中国の習近平主席との日中首脳会談が実現したのは11月10日のことである。なんと3年振りで、第2次安倍政権では初めてである。

 場所はアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開催された北京で、国際社会からも懸念が抱かれていた異常な状態にやっと終止符が打たれたことになる。日中関係の主要な阻害要因になっていた沖縄県石垣市の尖閣諸島をめぐる対立や安倍首相の靖国神社参拝に抜本的な打開策が打ち出されたわけではないが、これまでの異常な状態に風穴を開ければ、日中双方の戦略的な互恵になるとの認識が両国の指導者にあったことは間違いない。

 首脳会談冒頭の写真撮影では、両国首脳、特に習近平主席の硬い表情が目立ったし、緊張した状態で握手する両首脳の背景には、両国国旗も見えなかった。

 首脳会談に先立ち、日中両国は環境作りのためと称して、4項目の合意事項を発表したが、日中間に尖閣諸島をめぐり領土問題が存在するかどうかについては、双方に都合よく解釈できるような曖昧な表現で処理されていた。また、靖国参拝問題については触れられていない。両国政府間で何らかの暗黙の了解があることを窺わせる。

 首脳会談の実現は関係改善への「大きな一歩」で、今後、徐々に改善が進むことになるだろう。中国と対日共闘にのめり込んだ、戦略観のない韓国の朴槿恵大統領はこれに大きな衝撃を受けたようだ。この直後から、韓国政府は突然、手のひらを返したように、日本政府との接触に非常に前向きな姿勢に転じたようで、今後、日本をめぐる極東情勢は大きく変化する可能性が出てきた。(12月4日)


back