中韓の対日共闘で混迷
ー東アジアー
2014
市政10月号
(全国市長会)

 東アジア情勢がまるで、おもちゃ箱をひっくり返したような大混乱に陥っている。中朝同盟に日米韓の連携で対抗するという、これまでの安全保障の枠組みが崩壊してしまったからだ。今や、中朝関係は冷え切り、これと連動した形で中韓は蜜月状態で、対日共闘で結束している。北朝鮮は対日接近に孤立脱却を目指し、南北関係は緊張が続く。変われば、変わるものだ。
 これは南北朝鮮、それに中国に相次いで新しい指導者が登場したことと無縁ではない。脆弱な国内基盤の強化を狙って、北朝鮮が核やミサイルで軍事優先政策を突っ走り、中韓が大衆迎合的な反日政策を基軸に据えたことが引き金となった。しかも、アジア重視に転換したはずのオバマ米政権はどうも対中対応に優柔不断な姿勢が目立ち、アジアの混迷を一層深めている。


対日共闘を組んだ中韓
 2013年春に相次いで国家のトップに正式に就任した中国の習近平・国家主席(党総書記)と韓国の朴槿恵・大統領が対日共闘に踏み出したのは、予想外だった。特に、朴大統領はずっと「対日関係の修復に動く」と期待されていたのに、就任直後に突然「反日の闘士」に変身した。両首脳とも求心力の強化に反日を利用したかったのだ。
 今年7月に習主席が訪韓、朴大統領は大歓迎した。習主席の北朝鮮訪問はまだで、金正恩第一書記と会う前の訪韓である。盟友の朴大統領が「反日」で如何に貴重な存在かが分かる。両首脳は会談で、「慰安婦」問題での協力を約束、対日圧力の一層強化で合意した。

 こうして、中韓は歴史問題を理由に安倍首相との首脳会談をずっと拒否している。中国は日米韓の提携にくさびを打ち込み、離間を図るのが狙いだ。日米は朴大統領の対中傾斜に警戒的で、米韓同盟にひびが入りかねない。
 中国は自分の「アジア安全観(アジアの安全はアジアの人々が守る)」への同調や、日米主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗する、中国版の「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への加盟など、「米国外し」を韓国に求めた。だが、朴大統領は対米への跳ね返りを恐れ、言質は与えなかったようだ。
 中韓の蜜月には、韓国内でも、批判があるようだ。思想的にも異なる中国に振り回されるのがオチで、戦略眼のない朴大統領の軌道修正も必至という見方もある。

中国離れ、日本接近の北朝鮮
 北朝鮮の核やミサイル実験に対して、国際社会で批判が高まり、中国もこの国連決議違反の我が儘を庇えなくなった。これが両国関係に微妙な影を落としていた。
 そこに、2011年末に金正日総書記の死去を受けて、3男の金正恩氏が弱冠29歳で後継者となった。怖いもの知らずの同氏の登場で、両国間の緊張が激化した。そして、昨年末、両国間の決裂を決定付けた事件が起こった。金正恩第一書記が事実上のナンバー2で、親中派の筆頭だった叔父の張成沢氏の粛清に踏み切ったのだ。中国は北朝鮮を遠隔操縦できる大物を失い、ついにさじを投げたのだ。

 北朝鮮側も、韓国に擦り寄る習政権には金第一書記が怒り心頭だ。今年1月から4月まで、中国から北朝鮮への石油輸出が停止中というから、中朝関係は予想以上に悪化している。そこで、北朝鮮は孤立からの脱却のため日本との関係改善に踏み切り、日本人拉致被害者の救出に執念を燃やす安倍首相との間に、拉致問題の全面的解決で合意したのだ。北朝鮮の回答は近く出るはずだが、これ次第では、日朝関係は新たな段階に進む可能性もある。事実、北朝鮮は日本がミサイルの標的ではないと弁明したとも言われ、有効ムードの醸成に躍起だ。

 米韓は安倍政権が核やミサイル問題を放置したまま、制裁解除に踏み切ることに深刻な危機感を抱いており、日本は慎重な対応が必要だ。ただ、特に、韓国は日朝関係の好転、さらには、北朝鮮の李外相が15年ぶりの訪米発表などに、米朝の接近の動きを嗅ぎ取り、韓国外しの危機に怯え、対日外交の修正に発展する可能性もある。

オバマ政権の危険な対中融和
 オバマ政権はアジア重視戦略を打ち出したものの、イラク、シリアなど中東やウクライナ問題を抱え、掛け声倒れの批判に晒されている。アジア地域の不安定化をもたらした主要な元凶である中国に対して、何かこれまでと違った断固とした対応策を取っていないからだ。また、9月初めのライス米大統領補佐官の訪中について言えば、わざわざアジアまで来るのだから、中国と緊張関係にある同盟国日本にちょっと立ち寄ればいいのに、素通りしてしまう。
 こういうオバマ政権のやり方が米国は日本を軽視しているとの印象を中国に与えるのだ。USAツデ―紙の8月の世論調査では、中東やウクライナでの紛争の多発に絡み、オバマ政権の外交・安保政策が強硬さに欠けると見る人々の割合が54%に達したという。その上、米国による対外介入の拡大への支持が深まったという。

 それでも、米国ではこのところ、厭戦気分が相当高まっている。オバマ政権の外交・安保政策を見ていると、日米安保条約上の日本防衛の義務をどこまで本気で果たしてくれるのか、疑問さえ感じさせる。旧ソ連の脅威が深刻な頃、欧州は駐留米軍の引き留めに苦労したものだ。米軍が駐留していてこそ、その地域の防衛に米国も本腰を入れるからだ。
 米国の世論如何で、アジアでもおなじような事態が起こる可能性がある。中国などの軍事的な脅威は間違いなく今後も続くと見られ、米軍基地移転や集団的自衛権問題よりもむしろ、在日米軍の引き揚げ問題で日本が大騒ぎというような状況がそのうち起こり得ることを十分想定しておくべきだろう。(9月3日)


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