オバマ大統領の本気度を探る中国
2014
市政7月号
(全国市長会)
 

 今年5月に入ってから、中国の挑発行動の激化によって、南・東シナ海一帯の緊張が一段と高まっている。中国はこれらの海域に対する一方的な領有権の主張を固定化させることが狙いで、南シナ海ではとりわけ、ベトナムとフィリピン両国、東シナ海では日本との間で深刻な摩擦が生じている。4月末には、アジア回帰路線をぶち上げながらも、これまで看板倒れと揶揄されていたオバマ米大統領が4月末には、日本、フィリピンなどを歴訪、中国に対抗する米国のアジアでの存在感を発揮したばかりだ。
 中国の覇権主義的な挑発行動には、この地域への米国の「介入」の効果を消すと共に、オバマ大統領の決意の程を探ろうとする意図が透けて見える。それだけに、国際世論に耳を貸さず、「法の支配」をも無視する中国の覇権主義との戦いは、重要な分岐点に差し掛かっていると言えよう。


ベトナムが強く反撃
 中国はベトナムと領有権問題を抱える南シナ海のパラセル(西沙)諸島近くで海底油田の開発を本格化、石油掘削施設を設置し、5月初めから作業を一方的に開始した。ベトナムはこれに激怒し、同諸島近海に海軍や海上警察の艦船を約30隻派遣。この海域にはすでに、100隻以上の中国側の艦船や漁船や貨物船が待機していた。

 その後、同諸島近海で両国船舶の衝突事件が繰り返された上、中国の無法振りに怒ったベトナム国民がハノイ始め、各地で反中国デモを展開。多くの中国企業が襲撃され、死傷者も出た。中国政府は中旬からベトナム在住華僑の救出に乗り出し、派遣船舶などで数千人が引き揚げたとされる。

 中国側は5月末には掘削の第二段階に進み、作業海域をさらに拡大している。双方の間では小競り合いが続いており、中越両国とも引き下がる気配はなく、緊張は激化するばかりだ。

瀬戸際戦術で日本を脅迫
 中国は東シナ海でも日本に対して、危険な瀬戸際戦術に乗り出している。5月下旬、沖縄県に属する尖閣諸島の北方空域で、中国のSU27戦闘機(機動性に優れ、ミサイル搭載可能)2機が、情報収集のため公海上を飛行中だった自衛隊機2機に対して、異常接近した。うち1回はなんと約30メートルまで接近したというから、まさに「常軌を逸した(防衛省)」行動だった。小野寺防衛相が「一つ間違うと偶発的な衝突事故に繋がりかねない危険な行為」と中国側に強く抗議したのも当然の措置だ。

 現場は日中の防空識別圏が重なり合う空域(中国側は昨年11月に尖閣諸島上空を含む空域に一方的に設定した)。中国は自衛隊機が中露合同軍事演習を妨害したためだと反論しているが、どうも、ためにする反論としか思えない。即応態勢を制限された自衛隊機の弱みを見越した脅迫行動以外の何物でもなかろう。

中露が「便宜提携」
 こんな我が物顔の横暴な振る舞いに、周辺諸国の中国評価は悪化するばかりだ。そこら辺が分かっていないのか、それとも、分かっていても意に介さないのか、気になるところだが、共産党独裁で、裸の王様の習近平総書記の哀れな姿がそこにある。

 その窮状の中で助けを求めた先がロシアのプーチン大統領だ。「ウクライナ」で世界中から総スカンを食い、孤立状態の同大統領も二つ返事でOK。同大統領は知名度のほとんどない「アジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)」首脳会議への出席にかこつけて訪中した。会議そのものはほとんどニュースにはならなかったが、「歴史の改ざんと戦後秩序の破壊に反対」という日本非難に焦点を合わせた中露首脳会談の共同声明、合同軍事演習、それにロシア産天然ガスの対中輸出協定の締結で、日米への牽制と当てつけにそれなりの効果があったようだ。

 習総書記はこの会議で「アジアの問題はアジアの人々が処理し、アジアの安全はアジアの人々が守る」とぶち上げ、米国を排除した中国主導の新アジア安保構想を披歴した。ただ、自慢の新構想も我田引水が目立ち、会議では白けた雰囲気が漂ったようだ。

反中提携に横の広がり
 中国の無法振りにアジア全域に反中ムードが広がっている。中国の横暴に悩む国々の間に次第に連携の動きが伺えるのだ。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は5月中旬にミャンマーでの会議で、南シナ海における事態に深刻な懸念を表明(外相会議)すると共に、すべての関係諸国に対して自制と武力不行使を求め、緊張を高めるような行動を手控えるよう要請した(首脳会議)。中国に対する厳しい警告で加盟国の意見がまとまったことに、さしもの中国も相当の衝撃を受けたはずだ。その後、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議でも、安倍首相が呼び掛けた「法の支配」の原則に基づく解決に多くの支持が集まった。

 日本政府も集団的自衛権問題などで防衛態勢の強化を粛々と進めると共に、ASEAN諸国との協力を強化している。ただ、問題は頼みの綱米国の対応だ。オバマ米大統領は陸軍士官学校での最近の外交演説でも、軍事力の行使を伴わない紛争の解決という持論を力説した。厭戦気分の強い米世論に沿った形だが、「平和的な解決」の念仏を唱えるだけでは、無法者中国を抑止できないだけでなく、米国への信頼が地に堕ちる。
 海外派兵に至るまでには、様々の選択肢がある。「大統領は本気だ」と受けとめられる、断固とした対抗措置を米が提示できなければ、中国は更なる膨張のお墨付きを得たと錯覚しかねない恐れがある。(6月3日)


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