オバマ外交に厳しい試練
ウクライナ
2014
市政4月号
(全国市長会)
 

 親ロシア派のヤヌコビッチ政権が2月末に崩壊したウクライナの運命は、ロシアと欧米諸国との激しい駆け引きに翻弄され、漂流しているように見える。親欧州派の野党勢力は権力を掌握したものの、偉大なロシアの復活を夢見るプーチン大統領による「自国民保護」という大義をチラつかせた強引な巻き返しの前に、その将来は極めて厳しい。ロシアに対抗するのは、自力だけでは不可能とあって、欧米諸国、とりわけ米国に大きな期待を掛ける。
 だが、オバマ大統領は米軍の関与には終始慎重な姿勢を崩しておらず、上手を取るプーチン大統領に振り回されかねない状況だ。ウクライナを巡る米露「対決」の行方は、オバマ大統領の4月末の日本などアジア諸国歴訪を控え、中国の習近平政権の大きな関心の的となっているはずだ。外交分野で精彩を欠くオバマ大統領の真価がウクライナ問題で問われそうだ。


軍事介入を準備
 親欧州派が掌握したウクライナ政府を締め付けるために、プーチン大統領が狙っているのは南方のクリミア半島の大部分を占めるクリミア自治共和国への軍事介入である。半島の先端のセバストポリにはロシアの黒海艦隊の母港があるし、半島ではロシア系の住民が人口の大半を占める。ロシアにとっては、この地域は地中海経由で大西洋への出口となる軍事的な要衝であり、この地域の確保はロシアの生命線だ。

 すでに、親露のヤヌコビッチ政権が崩壊した直後から、クリミア半島一帯では、ウクライナから離脱して、ロシアとの合併を求める機運が高まっていた。自治共和国のシンフェロポリでは、武装勢力が国会議事堂を、また、セバストポリでは、駐留ロシア軍が地元の飛行場をそれぞれ占拠した。ウクライナ政府はこのような動きに神経を尖らせており、ロシア政府と地元が共謀してクリミア半島全体を占領しようと画策していると見ている。
 このようなウクライナ政府の懸念を無視するかのように、プーチン大統領は3月1日にロシア上院に対して、ウクライナ領内で軍事力を行使することを提案、なんとその日のうちに、上院は満場一致で、これを承認する決議を採択した。これで、ロシアはクリミア共和国への軍事介入の条件は整った。

押され気味のオバマ大統領
 プーチン大統領がいつ、どのような状況で本当にクリミアに軍事介入をするのか、或いは、欧米諸国との交渉にこれを使おうとしているだけなのか、これからの焦点はその点に移った。

 クリミア自治共和国の親ロシア派のアクショーノフ首相は平和と秩序を守るために支援の要請をプーチン大統領に出しており、後はプーチン大統領の胸三寸というところだ。

 そこで気になるのが、プーチン、オバマ両大統領の関係である。オバマ大統領は就任以来、ブッシュ前大統領の単独行動主義とは明確に一線を画して低姿勢を取った。イラクやアフガニスタンからの米国の撤退がそれを象徴する。これに対し、プーチン大統領は再登場に際し、大ロシアの夢の実現に一段と意欲を燃やしているようだ。

 今回のウクライナ政変に際しても、プーチン大統領の積極的な行動が目立った。オバマ大統領がウクライナに親欧州派の政権が誕生した際にも、強力な支持表明を渋ったのに対し、プーチン大統領は次々と新政権を追い詰めて行った。オバマ大統領が軍事介入はコストを伴うと警告したり、ウクライナの主権と領土保全の侵害だと深い懸念を表明しても、プーチン大統領は歯牙にもかけなかったようだ。米国単独でも自国の利益を守るといったガッツがなく、協調重視のオバマ外交は、プーチン大統領を逡巡させる何の効果もなかったのだ。   

 オバマ大統領は今度こそ思い切ったカードを切らない限り、ロシアの裏庭のウクライナではとりわけ、プーチン大統領の野心をくじくことはできないだろう。主要8か国(G8)からロシアを除く主要7か国(G7)は6月にソチで開催予定のG8準備会議を凍結した上、G8からのロシアの追放を匂わしたり、オバマ大統領はロシアへの制裁発動と孤立化を警告しているが、これにプーチン大統領がどう出るか、見物だ。

大局を見失うな
 オバマ大統領は4月末に日本始め、韓国、フィリピン、マレーシアを歴訪する。その前にロシアが軍事介入に踏み切ると、オバマ大統領の威信は一層低下せざるを得まい。

 オバマ大統領は中国の台頭でアジアが主戦場になるとの認識から、2011年にアジア重視路線を打ち出した。だが、アジア諸国が期待していたほどの迫力ある中国対応は出てこない。特に、第1次政権時代のクリントン国務、ゲーツ国防の両長官らが去ったのが響いてか、オバマ政権は中国の横暴の阻止というよりも、米中による円満な大国関係の維持を優先させているかのようだ。これはまさに中国ペースだ。

 日本との関係も、安倍首相が集団的自衛権の行使を可能にして日米同盟を強化しようとしているにも関わらず、靖国参拝に「失望した」とのオバマ政権の厳しい受け止め方ばかりがマスコミを賑わせている。日本の台頭が目立った1980年代後半に、米国で日本脅威論が一世を風靡し、日本叩きが流行ったが、今回の方がなんとなく寒々とした雰囲気なのが気掛かりだ。

 これでは、肝心の中国の覇権主義の阻止など望むべくもない。日米間の亀裂は中国の思うツボだ。アジア・太平洋地域で中国が覇を唱えようとしているまさにその時に、アジアで唯一最強の同盟国のトップを貶めようとする態度は、必ずや将来に禍根を残すことになろう。習近平総書記がウクライナでのプーチン流の強引な手法を学ばないよう望むばかりである。(3月4日)


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