難題抱える米中
ー2014年の展望ー
2014
市政1月号
(全国市長会)
 

アジア地域での日米対中国の軍事的な対立が一段と先鋭化している。中国が領有権問題などで自己主張を強めているためだが、その背景には、強大な軍事力の誇示と並んで、政府に対する国民の高まる不満の解消という深刻な狙いもある。今年11月末には、中国は東シナ海に、尖閣諸島の上空をも含む新たな防空識別圏を設定、不測の事態を誘発しかねない危険な措置を取った。中国の膨張主義に対抗するため、オバマ政権はすでにアジア回帰(PIVOT)によるプレゼンスの強化に乗り出しており、中国の動きに困惑しているアジア諸国は米国の回帰に安堵の表情だ。だが、最新の米議会の報告書は、中国の軍備近代化と米国防予算の削減によって、この地域での米軍の抑止力が低下していると指摘、対中警戒感を露わにしている。来年2014年に予想される米中両国の国内事情を追い、アジア・太平洋地域への影響を探ってみた。


国民の不満で不安定化―中国

 名実ともに中国の最高権力者となった習近平総書記は、今年秋の中央委員会第3回全体会議(3中全会)を成功裏に乗り切り、中国共産党の権威確立のためにかなり思い切った政策を打ち出したようだ。積極的な改革姿勢を見せなければ、党と政府がもう持たない状況だからだとも言われている。

 会議では、当然ながら、国民が抱く主要な不満、すなわち、党や政府の役人の汚職、国民の所得格差の問題などについて、習総書記は公平性を確保する必要性を力説したが、本当にやる気があるのか、国民は疑心暗鬼だ。なにせ、中央や地方の幹部の間では、地位を利用した汚職が蔓延、子弟の留学や外国送金が日常化し、簡単には是正できそうにないという。

 他の注目すべき点は、まず、経済改革の中心である資源の配分に関して「市場原理が決定的な役割を果たす」旨、力説したことである。これまでの「社会主義市場経済」理論を一歩進めたということだろう。だが、具体論はないし、依然として国営企業が「主要な」存在だと認識しているのを見ると、大きな期待はできそうにない。

 だから、社会、人権、汚職に対する国民の不満は今後一層内攻し、さらに大きな爆発に発展する可能性が強い。

 そのような不満を少しでも緩和させるのに役立つのは、一人っ子政策の緩和と強制労働の廃止だろう。

 不満は国民一般に広がり、あちこちで騒乱が相次ぎ、しかも、少数民族の怒りの爆発も深刻な問題だ。3中全会の開催直前に、北京の天安門広場で、毛沢東の巨大な肖像画付近まで、ウィグル族のグループが車を突入させ、数人の死傷者を出した事件は、漢民族に対する怒りの激しさを物語る。チベット族などその他の少数民族も不信感を増幅させている。共産党の威信は地に落ちたのである。

 今回の会議で「国家安全委員会」を発足させたが、これも危機意識の表れだろう。一部では米国の国家安全保障会議(NSC)に範を取ったとも言われ、対外政策は勿論、国内の不満分子への厳しい対応が予想される。

 国内の窮状を考えると、本来ならば、習近平政権は日本と事を構える余裕などないはずだ。しかも、対日強硬策で民意を宥めるといういつもの手法に頼るのでは、展望はない。だが、国民がこのからくりに目覚めるまで、習主席による対日正常化は難しいかもしれない。

次期大統領選を占う中間選挙―米

 しかし、米国の方も国内情勢は厳しい。今年10月に起こった連邦政府機関の一部機能の停止問題は、世界中をびっくりさせた。一応、共和党の譲歩で債務上限引き上げ法案が成立し、債務の返済不履行(デフォルト)という最悪の事態はぎりぎりで回避されたが、問題を先送りしただけのこと。来年1月半ばから、再びこの問題が表面化する。

 これほど事態が悪化したのは、いわゆる「小さな政府」を信奉する共和党、特に、その中の過激派の「ティーパーティ(茶会党)」と、社会福祉を重視する「大きな政府」論者の民主党との間に埋めがたい大きな溝があるからだ。特に、共和党の本流がこの過激派連中に引きずられ、民主、共和両党の政治闘争は一層激烈化している。

 2014年秋の中間選挙との絡みもある。中間選挙は2年後の大統領選挙の行方を占うという点から、重要な政治的な意味を持っている。だから、民主、共和両党とも中間選挙の勝利に照準を合わせ、来年初めの債務上限引き上げ問題への対応を考える。

 そのカギは、今回の債務上限引き上げをめぐる両党の対決が米国民にどのような印象を与えたかにある。押しなべて言えることは、「ティーパーティ」の手法は、世界中を奈落の底に陥れかねないリスクがあるというのが有権者の不安だ。共和党の保守本流の議員たちが、最後には過激派と袂を分かったのはそのためである。

 ただ、共和党がこのような戦略を打ち出したのは、オバマ大統領の目玉商品である「オバマケア(公的医療保険制度)」憎しの感情が原点にある。この制度に対する国民の不満に加え、同制度用の新システム構築の失敗もあり、オバマ大統領も苦しい状況にある。今年秋には、内外政策の躓きでオバマ支持率が39%にまで下落した。

来年1月の債務上限問題の攻防では、共和党は過激派グループを抑え込み、責任ある政党イメージを売り込みたいところだ。だが、そうなると、党内の亀裂が深刻化しかねない。他方、民主党にとっては、人気の剥落したオバマ大統領は選挙ではお荷物だ。中国が一層自己主張を強めている折、来年の米国は、内政に翻弄され、対外政策への影響が懸念される(12月4日)


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