米イラン両首脳が久々の電話会談
2013
市政11月号
(全国市長会)
 

米国とイラン両国の首脳が9月末、電話を通じてだが、久々に直接話し合った。この会談はニューヨークでの恒例の国連総会に出席するために訪米したロハ二・イラン大統領に、オバマ米大統領の方から電話を掛けて実現したものだ。イランに1979年に革命が起こり、イスラム政権が発足して以来ずっと、双方の首脳の接触は皆無なので、なんと30数年振りかの歴史的な直接会談なのだ。両首脳は両国関係に刺さったトゲであるイランの核問題の早期解決を目指すことで合意した。だが、これ以外には、何も具体的な合意は成立しておらず、今後の交渉に待つしかない。しかも、双方ともに和解を阻みかねない深刻な障害を抱えており、信頼回復は容易ではない。


核問題の早期解決で合意
この会談が実現したのは、ロハニ大統領の帰国の直前だった。マンハッタンから車でケネディ空港に向かう途中のロハニ大統領に、オバマ大統領がホワイトハウスの執務室から電話したのだ。通訳を含めて15分間という短時間だった。

ロハニ大統領は1週間ほど、ニューヨークに滞在していたのに、なぜこのような中途半端な形になったのか。そこら辺の奇妙さが、現在の両国間の微妙な関係を反映しているのだ。

ロハニ大統領は8月に就任したばかりだ。超過激発言で有名な対米強硬派のアフマディネジャド大統領の任期満了に伴い実施された6月の大統領選挙で、大方の予想を覆して、対米強硬派の候補連中を破った。対米関係の改善に意欲を見せていただけに、今回の初の訪米に大きな期待を掛けていた。

迎える形のオバマ大統領もシリア対応の失敗もあって、ロハニ大統領の訪米を心待ちにしていたはずだ。当然ながら、準備の時間も十分あった。関係筋によると、ホワイトハウスからは、オバマ大統領が国連演説のためにニューヨークに行く際に、ロハニ大統領と実際に会い、握手する姿を見せ、会談といった可能性を示唆するような色々のシグナルがあったと言う。だが、結局は各方面への衝撃度をできるだけ薄めたいという意図からか、地味な形の「会談」に落ち着いたのだ。ロハニ大統領が国内の対米強硬派への影響を慮った結果という。

ともあれ、短時間の会談ながらも、「核問題の早期解決」という最低限の合意はできた。だが、ロハニ大統領は「ウランの濃縮活動はイランの権利だ」と主張して譲らず、具体的な成果はほとんどなかったようだ。

制裁解除が狙い
ロハニ氏が大統領選で勝利した最大の理由は、核問題に対するイランの姿勢に不満を持つ米国などが主導して国連制裁が実施され、イランの経済状態が悪化、イラン国民が強い不安と不満を抱いていることにある。

制裁措置が及ぼすイラン経済への打撃は深刻だ。主要な歳入源である原油輸出の大幅な減少に加え、金融分野での対外決済に問題が生じ、輸出入に障害が波及、イラン経済全体が停滞状態に陥ったのである。だから、ロハニ大統領の狙いは何よりも対米関係を改善して、制裁の緩和・解除につなげ、イラン経済の再生という有権者の期待に応えたいというのが本音だ。

だが、そのためには核問題で、欧米諸国やイスラエルを満足させる回答を準備しなければならない。このためには、イランがこっそりと核兵器を製造するのではないかという欧米諸国の懸念を払しょくする必要がある。

ロハニ大統領は3か月、或いは、6か月で米国などとの交渉を片付け、信頼関係を確立したい構えだ。だが、同大統領は国連演説の中で、核兵器を保有するつもりはないと強調しながらも、濃縮活動はイランの権利だと主張した。これでは原則的に濃縮活動の全面停止を求める欧米諸国との交渉は容易には進展しそうにない。しかも、核拡散防止条約に加盟して、国際原子力機関の現地査察を認めるよう求める声も強い。欧米諸国は北朝鮮のように核開発の抜け道が残らないかと、特に神経質になっているのだ。

国連安保理の制裁措置はイランに圧力を加える最大の武器であり、欧米諸国は核問題でイランの明白な譲歩がなければ、簡単に制裁解除には踏み切らないだろう。制裁と核の二つの問題は並行的に処理する必要があり、信頼関係の構築が不可欠だ。

様々の障害
今後のイランの核問題解決には、双方とも様々の障害を抱えている。イランの場合には、イスラム国家の守護神を持って任ずる革命防衛隊などの国内の対米強硬派の出方が見通せない。ロハニ大統領が核問題で余りにも譲歩し過ぎるならば、隠然たる影響力を持つ強硬派の間から強い反発が出ると予想され、ロハニ大統領は抑えきれまい。そこで、カギを握るのは外交、安保問題に決定権を有するハメネイ最高指導者が今後どう動くかが焦点だろう。

他方、米国側はやはり、中東の盟友イスラエルの動向が気になる。ネタニヤフ首相はロハニ大統領の帰国直後に訪米、イラン接近に釘を刺した。イランへの警戒心を隠さず、制裁措置の緩和や解除など論外との考えだ。イランが米国との関係改善を狙うのも「核兵器開発のための時間稼ぎ」だと不信感を露わにしている。また、米国と強い軍事協力関係にある、スンニ派のサウジアラビアなどの湾岸諸国も米国とイランとの接触に渋い顔だ。

米、イラン両国の和解は中東地域の緊張緩和を含め双方に多くの利益をもたらすが、核問題と制裁の取引を成功させるには、越えなければならない障害の厳しさは並大抵のことではないようだ。(10月3日)


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