中国からの尖閣防衛に全力を
2013
市政10月号
(全国市長会)
 


日本政府が沖縄県石垣市の尖閣諸島を国有化してからほぼ一年、これに反発した中国政府の抗議活動や嫌がらせが一層激化しているようだ。8月中旬の終戦記念日には、中国共産党機関紙「人民日報」の評論記事は「尖閣はおろか、沖縄だって日本の領土ではない」とまで言い出す有様だ。しかも、連日のように中国艦船が尖閣諸島の周辺を航行、領海侵犯を繰り返すなど、日本側の隠忍自重を逆手に取って無法の限りを尽している。日本国民の怒りは高まるばかりだ。さらに、中国側は日中首脳会談も拒否しており、このままでは両国間に偶発的な事件が起こりかねない状況だ。


沖縄も日本領土ではない?
この記事は社会科学研究の学術機構「中国社会科学院」の研究員が書いたもので、「釣魚島(日本名は尖閣諸島)は日本に盗まれたもので、同島はポツダム宣言で確定した日本領土の中に含まれていない」と指摘。中国に対して拘束力を持たないサンフランシスコ平和条約で「米国は勝手に沖縄を日本に戻す権利はない」と強調した。

党の機関紙の人民日報がこれを掲載するということは、この記事の内容を中国の党と政府が承知し、しかも、これに暗黙の支持を表明したと言ってもよかろう。沖縄の日本帰属がおかしいなどという荒唐無稽の主張をする手法は中国の、言わば、常套手段であり、他のどの国もこのような主張を支持することはないだろう。

しかも、東シナ海の尖閣諸島周辺では、中国の艦船がほとんど常時、接続水域を航行したり、時には、日本の領海を侵犯したりしている。しかも、つい最近は、幾つかに分かれていた海上警備の機能を統合して、日本の海上保安庁に相当する「海警局」を発足させており、中国は東シナ海で一段と攻撃的になる可能性がある。

さらに、両国間の長年の懸案である東シナ海のガス田問題でも、日中間の中間線の付近で、中国側が新たに7か所で開発計画を進めていることも判明している。このような日中間の軋轢は、東シナ海を極めて危険な水域に変えたようだ。

国内の政経不安も影響か?
対日脅迫戦略を展開している中国は今後どう出るのだろうか。中国は確かに、核、ミサイルに加え、高性能の航空機や空母も擁し、それにサイバー攻撃能力も高い。その力量は日本の自衛隊の水準を大幅に上回っているようだ。

ただ、その中国も13億の民を養う経済発展の推進のため平和な周囲の環境が欲しいところだろう。ただ、経済がバブル状態になり、問題含みの状況だし、格差の拡大や指導者層の汚職に国民の不満も高まっている。

しかも、習近平新政権は党内の権力闘争の不安定要素も抱えている。薄煕来・前重慶党委書記(前政治局員)の裁判では、同前書記が汚職容疑など全面的に否定し、習近平指導部との対決姿勢を鮮明にした。この結果、同被告の支持者たちを勢いづかせ、国内の政治情勢は不安定化している。また、周永康前政治局常務委員(治安担当)に近い人脈の石油利権絡みの汚職摘発が本格化している。この狙いは江沢民元総書記や薄前書記とも親しい大物政治家の周氏が最終的な標的のようだ。習政権が治安・警察権力の掌握を狙ったものと見られ、このような権力闘争の行方が対日政策にも微妙な影響を及ぼしそうだ。

日米安保と尖閣防衛がカギ
中国の軍事的恫喝を前にして、日本が比較的安心しておれるのは、日米安全保障条約のお蔭である。だから、現在の中国政府の戦略は、如何にして米国を日本から引き離すかに重点が置かれているようだ。数年前だったか、中国の高官が米国側に、ハワイを基準にして、太平洋の支配権を米中間で、東西で分け合おうと提案したという話が漏れ出た。白昼夢としか思えないような話だが、上り調子に慢心気味の中国だけに、結構本気かもしれない。

今年6月の訪米では、習近平主席はオバマ大統領との首脳会談でも、「広大な太平洋には中米両国を受け入れる十分な空間がある」と強調したという。第二次世界大戦で「戦友」の米中両大国は、旧敵国の日本など無視して太平洋を分断支配して、協調して行こうという呼び掛けのようにも見える。

だが、現在のオバマ政権の対中姿勢は発足当時とは異なる。中国の脅威に対抗するため、アジア重視戦略に転換し、日豪越印などを中核に中国包囲網を構築し、対中抑止戦略を積極的に推進している。尖閣諸島への対応は複雑で、「最終的な主権の問題」には中立だが、「日本の施政下にある同諸島は、日米安保条約の適用対象だ」というのが米国の公式の立場である。

つまり、安保条約の尖閣適用は「日本の施政下にある」からという前提条件が付いているのだ。万が一、中国軍が尖閣諸島を武力で占領し、それが恒常化すれば、日本が頼みにしている安保条約も持ち腐れになる可能性もある。

はっきり言えば、米国は尖閣諸島の領有権争いで中国との戦争に巻き込まれたくないと及び腰のようである。この米国政府の立場を知る中国政府は、日米を離間させ、日中対立で米国を「無力化」できないか、画策に懸命だ。こういう状況だけに、安倍政権は米国引き付けに全力を挙げる。憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使を可能にしようと努力しているのも、このような背景と密接に絡み合っている。

だが、本当に肝に銘じるべきは、自国の安全は自分で守るのが鉄則だということだ。離島防衛訓練、海上保安庁の強化、海兵隊創設構想はとりわけ、この鉄則に沿ったものだろう。韓国の李承晩時代の竹島の二の舞は、繰り返してはならない。当然ながら、このためには、日本の外交力の強化が伴わなければならない。(9月2日)


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