「北」の恫喝で緊張高まる朝鮮半島
2013
市政5月号
(全国市長会)
 


「ならず者国家」北朝鮮がまたも、核を弄び、過激な言葉で日米韓を恫喝し、挑戦的な姿勢をエスカレートさせている。北朝鮮は近日中に、ミサイル発射実験を強行するとの見方が強まった。3月末には、朝鮮労働党中央委員会総会が開催され、トップの金正恩党第一書記が、核能力を強化する方針を強調し、「核保有国」として米国と相対する姿勢を明確に打ち出した。北朝鮮は最近、小型化した核弾頭を搭載して米本土に到達できるミサイルの開発で前進したとされている。これに対して、国連安保理は制裁強化の決議を採択、米韓は大規模な合同軍事演習を開始した。北朝鮮は自分の非を忘れて逆切れし、半島に緊張がみなぎっている。


核能力の強化を推進―中央委総会

 党中央委総会はほぼ2年半ぶりに3月31日に開催された。同総会は党大会、党代表者会に次ぐ重要な会議で、席上、金正恩氏が演説、米国の脅威に対抗するために「自衛的な核能力を強化・発展させ、国の防衛力を鉄壁に固め」、核の能力を質量ともに高めて行くと強調した。そして、人口衛星と自称するが、事実上は長距離弾道ミサイルの開発と発射実験を今後も強力に推進する方針をぶち上げた。翌日開催された最高人民会議(国会に相当)もこれを追認した。
 さらに、その後の発表では、6か国協議で無能力化した寧辺の黒鉛原子炉を含むすべての核施設を再稼働させる方針という。しかも、4月8日には、南北共同で運営されてきた開城(ケソン)工業団地の稼働の暫定的中断にまで踏み切った。

 また、金正恩氏は同総会で、核能力の強化と併せて、経済建設にもさらに大きな力を注ぎ、強盛国家を建設したいと強調した。貧窮化する一方の国民の不満を宥める配慮だが、実現性となると、疑問符が付く。

 これに先立ち、北朝鮮は朝鮮戦争の休戦協定の白紙化に始まり、南北間の不可侵の合意を破棄したり、韓国との関係は「戦時状態に入った」などと脅かし、様々の形で不安を煽ってきた。

 また、北朝鮮の国営メディアは、核攻撃でソウル、ワシントンを「火の海」にするとか、米軍基地のある日本の横須賀、三沢、沖縄も核攻撃の射程圏内にあると警告。米国に対しては、核攻撃ができる「射撃待機状態」に入るよう金正恩氏が指示した。

米韓は断固とした対応

 北朝鮮の最高指導者で軍権を掌握する金正恩氏は30歳の若輩で、実績は皆無で、国民の信頼も低い。トップ就任からほぼ一年、自分の偉大さを国民に誇示したがっているようだ。

 だから、米韓の対応は真剣そのものだ。両国は3月に、初めて局地的な軍事挑発を想定した共同対応計画に調印したし、核使用の兆候があれば、先制攻撃する戦略も検討中とされる。朴槿恵・新大統領も一歩も退く様子はない。また、ヘーゲル米国防長官は同月、北朝鮮のミサイル攻撃に備えて、ミサイル防衛網を強化すると発表。太平洋岸のアラスカ州に迎撃ミサイル14基を追加配備すると共に、本土への迎撃ミサイル配備数を5割増やす方針を発表した。

 春の米韓合同演習はフォールイーグル(3月1日から4月末、米韓両軍約21万人参加)に加え、3月中旬の10日間にはキーリゾルブ(3月中旬10日間、米韓約1万4千人参加)を実施。特に、前者には3月末、なんと核爆弾搭載可能なB2ステルス爆撃機2機が米本土ミズーリ州の基地から太平洋を横断して初参加、爆撃投下訓練の後、本土基地に舞い戻った。それにステルス性能を持つF22最新鋭戦闘機2機も韓国に派遣された。米国の断固たる決意がうかがえる。

中国との亀裂

 北朝鮮の核実験やミサイル発射実験に対して、中国は長年にわたり北朝鮮を擁護する姿勢を取り、北朝鮮制裁には異議を唱えていた。だが、近年は、次第に北朝鮮批判をあからさまにし始めた。

 国際社会の非難を無視して、北朝鮮をあくまで擁護することは外交上好ましくないと判断し出したか、或いは、北朝鮮の核とミサイルの開発が中国の安全保障にマイナスと計算した可能性がある。或いは、この両方かもしれない。今年2月の北朝鮮の3回目の核実験に対しては、中国は事前に「断固として反対」を表明、事後には、制裁強化の安保理決議に賛成するまでに硬化したのである。

 中国のこんな「変身」振りに、金正恩氏も激怒しているようだ。北朝鮮のメディアにも、名指しこそ避けてはいるものの、中国批判と容易に分かる論評が出回っていると言われる。 

 両国関係は冷却化しているようだが、こんな鬼っ子を育てた責任が中国側にも大いにある。習近平政権は反省して、北朝鮮の暴走阻止のため、適切な措置を取るべきだろう。それこそ、中国が国際的な尊敬を得る道だろう。

北朝鮮はどう出る?

 北朝鮮の過去を振り返ると、激烈な「口撃」が、必ずしも行動に結び付いたわけではなかった。金正恩時代は始まったばかりで、彼の行動パターンが読めず、米韓などの警戒心は高い。だが、軍事力で雲泥の差がある米国に真正面から対決を挑むほど、金正恩氏も馬鹿ではあるまいというのが大方の見方だ。激烈な威嚇もこけおどしで、幼稚な姿があちこち透けて見えるとの指摘もある。

 挑発するなら、ミサイル実験の他には、韓国への局地的な軍事行動が最も可能性が高い。だが、内外情勢を見ると、北朝鮮にそんな余裕はなさそうだ。ただ、瀬戸際戦略は双方を極度に緊張させ、偶発的な衝突の危険もあり、油断は禁物である。(4月9日)


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