複雑化する東アジア情勢
2013
市政4月号
(全国市長会)
 

昨年を通じて、東アジアに位置する日中南北朝鮮4か国のトップの顔ぶれがすべて変わった。また、この地域に大きな影響力を持つ米ロでもトップの選挙が実施された。いわば、今年からこれら6か国の首脳全員が新たな出発点に立って、緊張状態の深まる東アジア情勢に対処することになるわけだ。その中心にあるのは台頭著しい中国であり、日米は中国の、特に軍事的な脅威への対応に腐心する。中国は北朝鮮を支援して、日米韓をけん制してきたが、核開発を最優先する金正恩第一書記との間に隙間風が目立ち始めた。ロシアは中国との連携を基本としつつも、強大化する中国への警戒感も垣間見える。日本政府には危機管理に鋭い外交手腕が求められるところである。


日米同盟の復活
東アジアの不安定化の引き金になった一つの要因は、日本に2009年初秋に登場した民主党政権の外交だった。鳩山首相はそれまでの「対米依存の反省」に基づき、対中傾斜に走り、日米関係を悪化させた。老獪な中国に足元を見透かされ、尖閣諸島沖合での中国漁船による巡視船体当たり事件を契機に、中国は対日攻勢を強めた。

昨年末に選挙で圧勝した自民党の安倍政権は、対米重視路線に転換した。2期政権に入ったばかりのオバマ大統領との会談で、「日米同盟の復活」を宣言、同大統領はアジア重視路線を再確認した。「日米同盟はアジア太平洋地域の安全保障の中心的な礎だ」とのオバマ大統領の発言、懸案の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加問題での前進、両国の新外相会談における尖閣諸島への安保条約の適用再確認は、日米離間を目指す中国への強力なけん制となったはずである。

習近平政権はどう出る?
昨年11月開催の共産党大会で党のトップの総書記に選出され、党中央軍事委員会主席にも就任して、軍権をも掌握した習近平氏の対外政策についてはまだ、不明な点が多い。3月初めには全国人民代表大会(国会に相当)が2週間にわたり開催される予定で、習氏は国家主席に選ばれ、名実ともに最高権力者になる。同時に、温家宝首相は引退、代わりに李国強・筆頭副首相が昇格、閣僚も総入れ替えとなり、新しい政府の布陣が決まる。外交を含む今後の基本政策が次第に明らかになるはずだ。

習近平体制発足後も、これまでのところ、尖閣問題に変化はなく、中国艦船による尖閣諸島海域での日本の領海侵犯などが続いている。それに、1月に東シナ海の公海で、中国艦艇が自衛隊のヘリと護衛艦に合計2度、射撃の目標を捉える射撃用のレーダーを照射するという深刻な事件が発生した。中国側はこの事実そのものを否定したが、武力衝突につながりかねない危険極まりない事件だけに、これがトップの指示なのか、それとも軍部の独走なのか、はっきりさせたいところだ。

また、中国からの国家ぐるみの対米サイバー攻撃が続発しており、その発信元が中国人民解放軍の総参謀本部の部隊だとの報告書が米国で出された。同様の攻撃は日本を含め世界中で起こっている。中国はこの件についても否定しており、国際社会での中国に対する不信感は高まるばかりだ。

中国無視して核実験の北朝鮮
東アジア地域で中国と並んでもう一つの不安定要因となっている北朝鮮は核とミサイルの開発に躍起だ。今年2月半ばには、通算3回目の核実験を実施した。昨年12月の長距離弾道ミサイル発射実験に次ぐもので、米国本土にも到達する長距離ミサイルに搭載する核の小型化を狙ったもの見られ、日米韓は非難を強めている。

今回特に注目されるのは、中国の習近平政権も公然とこれに反対を表明、抗議したことである。この関連で関心を呼んでいるのは、中国共産党幹部の教育機関、中国党学校機関紙「学習時報」のケ副編集長が英紙に寄稿した論評だ。北朝鮮の核実験について「将来、中国を脅かすことになりかねない。北朝鮮を切り捨てるべきだ」と強調したのである。個人の意見ということだが、こんな見解が公然と表明されるのは異例だ。

中国は2月末の韓国の朴槿恵大統領就任式には、大物の劉延東政治局員兼国務委員(女)を派遣したが、韓国に擦り寄る中国への北朝鮮の怒りは相当なものだろう。

対中警戒心芽生えるロシア
中国は米国への対抗上、ロシアへの接近を改めて積極化する構えである。習近平総書記は国家主席就任後に、3月下旬にもロシアを訪問、プーチン大統領と会談し、両国の関係強化を内外に誇示したい意向だ。
他方、安倍首相も5月の連休前後には訪ロし、プーチン大統領と会談する予定だ。同大統領は北方領土問題を片づけたいとの希望を時々表明している。勿論、日本側の希望通りの解決案を受け入れるというわけではないが、同大統領の来年の訪日の話も出ている。

中ロ間の蜜月は2005年頃が頂点で、最近は、ロシアではその極東地域への中国の進出などから、対中警戒心が次第に芽生えつつあるようだ。数年前には中国艦船4隻が宗谷海峡を通って初めて太平洋に出たことに衝撃を受けたとされ、北方の海域への中国海軍の進出に神経を尖らせているという。
北方領土での最近の軍事力強化も日本というよりも中国を念頭に置いた措置との見方もある。日米ロの間で開催されている民間レベルでの安全保障協議に、政府代表も参加させたいとの要望がロシアから出されていると言われ、東アジア地域の安保情勢は今後、一層複雑化することになりそうだ。(3月4日)


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