2期目のオバマ政権の対中姿勢
2013
市政3月号
(全国市長会)
 

オバマ米大統領は今年1月末、60%もの高い支持率を背景に2期目の政権をスタートさせた。尖閣諸島をめぐる日中間の対立が深刻化している折、日中双方が米国政府の対中姿勢に重大な関心を抱いているところだ。海洋権益の確保を目指した中国の軍事膨張主義はアジア・太平洋地域の不安定要因となっている。オバマ大統領はほぼ一年前、この地域の重要性を認め、米国のアジア回帰(PIVOT)を打ち出し、中国の拡張政策に待ったを掛ける姿勢を明確にした。2期目のオバマ政権は特に内政面ではリベラル色を強めており、安保分野の主要な閣僚の交替によって、中国に対する強力な抑止政策が後退するのではないかと不安視する向きもある。


リベラル色濃い2期政権
米国では、再選された大統領は、画期的な業績を残して、歴史に名前を残すことに何よりも腐心するものだ。オバマ大統領も当然ながら、その例外ではない。

4年前に米国初のアフリカ系大統領として登場して以来、オバマ大統領の諸政策に世界中が注目した。だが、1期目が終わって振り返ってみると、アフリカ系初の大統領に期待、或いは懸念したほどのリベラルな画期的政策は出てこなかった。非常に地味で、穏健なプラグマティックな流れに終始したようで、ほっとした人々と同じほど、失望した人々も多いのではなかろうか。

そこら辺をオバマ大統領も十分自省したのだろう。2期目の出発点となった就任演説では、大統領選挙で余裕の勝利を収めたこともあってか、主要な支持者の本来のリベラルな期待に添いたいとの思いがはっきりとうかがえる。

外国移民の受け入れ制度の改革、学校での銃乱射防止を狙う銃規制の強化、同性愛者の権利保護など、リベラル色が濃い一連の政策が目玉になったのは、このような事情を反映した結果だと見てよかろう。

対中強硬路線
他方、米軍はイラクに次いで、アフがニスタンからも撤収する予定で、オバマ政権の対外政策の重点はアジア・太平洋に移りつつある。
オバマ大統領は就任直後は、ブッシュ前政権の対中強硬路線からの決別を強く意識し、対中融和策を前面に押し出した。

ところが、これを米国の弱体化の証拠と見た中国は、世界各地で経済大国の風を吹かせ、やりたい放題。しかも、海洋権益の獲得を目指して、アジア・太平洋地域で覇権主義に傾斜していった。南シナ海全域の領有権を主張してベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国いじめに乗り出し、また、2010年9月には、東シナ海では沖縄県の尖閣諸島沖合での中国漁船による日本の海上保安庁・巡視船への体当たり事件を引き起こした上、逮捕された中国人船長の釈放を要求、日本を恫喝した。

このような情勢に、オバマ大統領は2011年秋に米国のアジア・太平洋地域の重視政策を打ち出し、その中で対中融和から対中強硬路線への転換を鮮明にした。この方針転換を受けて、日本、韓国、オーストラリア、ベトナム、インド、ミャンマー諸国を糾合して、中国の膨張政策に待ったをかけ始めたのだ。そして、米国政府は日本の尖閣諸島に対する中国の一連の軍事的挑発に対しても、尖閣が安保条約第5条の対象となることを明確にしている。

対中融和への懸念も
だが、2期目のオバマ政権で対中強硬路線が続くかどうか懸念する向きもある。退任のクリントン国務、パネッタ国防両長官の後任人事が原因だ。   

クリントン長官はオバマ政権の対外的な顔として、世界中を飛び回り、存在感を発揮した。特に、アジア重視戦略では、先頭に立ってホワイトハウスを引っ張った。早々と中国の海洋覇権主義に警戒心を抱き、ベトナム訪問で、南シナ海での航行の自由をぶち上げた。また、米国務長官として56年ぶりにミャンマーを訪問、オバマ大統領の現職としての初訪問につなげ、同国の中国離れを決定付けた。退任直前の今年1月初めの岸田外相との日米外相会談では、「日本の施政権を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と強調、尖閣をめぐる中国の挑発的な行動を強くけん制した。

後任に指名されたのは外交問題に詳しいジョン・ケリー上院外交委員長だが、同議員は1月末に実施された上院での指名公聴会で、経済大国の中国との関係を強化したいと述べ、「アジア・太平洋地域で米軍の増強が必要だとは思わない」と言い切った。さらに「米国はこの地域にどの国よりも多くの基地を保有しており、さらに増やせば、包囲網の構築だと中国を懸念させるだけだ」と強調した。対中認識で前任者との大きな差がはっきりと分かる。

また、アジア重視路線を実務的に強く支えてきたパネッタ国防長官の後任は、チャック・ヘーゲル元上院議員だった。この元共和党議員をわざわざ指名したのは議会対策上の考慮と思われるが、問題は同元議員が現役当時、イスラエル批判を展開するなどブッシュ前政権とそりが合わず、共和党内の異端児であることだ。軍事委員会での承認公聴会では「中国の意図が不透明だ」としたものの、中国政府の強い影響下にある「チャイナ・ネット」は「ブッシュ前大統領が中国から台湾を軍事的に守ると発言した際には、ヘーゲル氏は批判した」「中国の経済大国化に警戒心を抱く人々には組しない人物だ」と歓迎し、両新長官の登場で米中関係は改善すると予想している。

安倍首相は2月の訪米では、対中姿勢でオバマ大統領が揺れないよう釘を刺すと共に、日米同盟の強化を謳い上げて欲しいものである。(2月4日)


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