朴槿恵女史が大統領に当選
韓国
2013
市政2月号
(全国市長会)
 

昨年末に実施された韓国の大統領選挙で、保守系の与党セヌリ党の朴槿恵女史(60)がリベラル派の最大野党、民主統合党の文在寅候補(59)を僅差で破り、次期大統領に当選した。正式就任は2月25日。韓国では初の女性大統領となる。同女史は朴正煕元大統領の長女で、親子二代にわたり、大統領を務めるのも、韓国では初めてのことである。
これで、李明博大統領に次いで、セヌリ党が引き続き、政権を担当することになる。国内的には韓国は、李政権下で拡大した経済格差の是正が急がれる。対外的には、核開発など軍事優先の北朝鮮の金正恩政権にどう対応するか、さらには、李政権末期に悪化した対日関係が重要な課題となるが、朴新大統領は「北」には強硬姿勢で、対日では、未来志向を基本に関係修復に動くものとみられている。


僅差で文候補を抑える

今回の大統領選挙で注目すべきは、両候補が同じ世代だが、全く異なった経歴や思想の持ち主であることだった。朴女史の父親の朴正煕大統領はクーデターで権力を掌握し、1963年から16年間、独裁者として君臨。日本との関係を正常化し、今も語り草の韓国の目覚ましい経済開発を成し遂げたが、妻の陸英修さん、次いで自身も暗殺された。この悲劇の朴女史は母親の死後、留学から帰国し、父親の「ファーストレディ」役を務めた。1998年のアジア金融危機を契機に、セヌリ党の前身であるハンナラ党から政界に出て、保守層を代表する政治家となった。

これに対して、文在寅候補は朴女史とは因縁浅からぬ経歴を持つ。朴正煕政権下で民主化運動に加わり、逮捕された。弁護士になり、同じく法曹界にあった若き盧武鉉氏(元統領)に共鳴、リベラル左派の盧政権成立で首席補佐官に就任。盧氏の自殺の際には、葬儀委員長を務めた。

こんな保守派とリベラル派の両候補の戦いは、経済的な格差の拡大や汚職で、任期切れ間際の李政権への批判が高まる中で幕が切って落とされた。この中で、同じ保守派の朴候補は、経済問題では格差の是正に力点を置き、対北朝鮮政策では、幾分対決色を薄め、対日関係では、未来志向の重視を正面に据えた。これに対し、文候補は財閥解体と並んで、労働者寄りの政策を打ち出し、大統領一年目に南北首脳会談を実現させるなど、いわゆる「太陽政策」を掲げた。また、対日では、日本の重要性を認めながらも、中国と連携して、竹島や慰安婦問題で強硬姿勢をちらつかせた。 

選挙戦では、当初は、第三の候補だった無所属の、「韓国のビル・ゲイツ」こと、安哲秀元ソウル大学教授がリベラル有権者層を分断する形となり、朴女史が有利に戦いを進めていた。だが、11月末に、安候補は文候補との一本化には応じなかったものの、出馬を辞退したことで、文候補が元気になり、投票直前には、朴、文両候補が肩を並べる接戦となっていた。

結局は、朴女史が51・6%の得票率で、僅差で逃げ切る形となった。50%以上の得票で大統領に当選した候補はこれが初めてである。朴女史は@地域間の均衡した発展A経済民主化B世代対立の解消、を柱とする「国民大統合」を呼び掛けており、北朝鮮の軍事的な威嚇を受けて、有権者の間に安定感のある政治を望む意識が強かったことを示すものであろう。同女史は未婚で、「私には面倒を見る家族はいない。あなた方国民が私の家族だ。大統領に選ばれたら、家族に尽くす母親のように統治して行くつもり」と述べている。

北は意気軒昂

他方、北朝鮮のトップの金正恩第一書記は権力掌握から約一年を経て、意気軒昂だ。昨年12月中旬、「人工衛星」の打ち上げに成功して、軍事優先の先軍政治という故金正日総書記の遺訓を実現したのだ。

この「衛星」は実質的には長距離弾道ミサイルだが、北朝鮮は国際社会への配慮から、平和目的の「衛星」だと言い張っている。今回初めて発射に成功した長距離弾道ミサイルは3段式のテポドン2に相当し、3段目まですべて正常に作動したようで、「衛星」らしき物体が軌道上に投入されたという。ただ、信号は確認できず、制御できていない模様。

韓国によると、この長距離弾道ミサイルは射程距離がほぼ1万キロあり、米西海岸のロサンゼルスがその射程内に入る。今後、北朝鮮が弾頭の小型化に成功すると、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルが米本土に到達するわけで、対米交渉での立場を強化した。

他方、韓国は昨年11月に3回目の衛星打ち上げ実験を予定していたが、機器の異常でまたも延期に追い込まれた。ロケット発射技術で北朝鮮が先行し、韓国は心穏やかではなかろう。

対外政策はどうなる?

北朝鮮のミサイル発射について、朴次期大統領は当選報道の翌日、党本部で談話を発表、「安全保障の由々しき現実を反映している」と指摘、安保を最優先させると強調した。日米協力を軸に、強力な北朝鮮政策を打ち出すと見られる。だが、その内容は北朝鮮の核放棄に向けた努力次第とし、李政権ほど頑なな姿勢は手控える方針。南北朝鮮双方が相手の出方をうかがうことになりそうだ。

対日関係では、未来志向を基本に、関係修復に乗り出すことになろう。ただ、同次期大統領は談話の中で、慰安婦や竹島問題を念頭に、「正しい歴史認識を土台に、和解と協力の拡大に努力する」と日本側に配慮を求めた。国民感情を刺激し易い微妙な問題であり、北朝鮮の軍事的な脅威に直面して、朴次期大統領と安倍首相双方の外交手腕が試される。


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