習近平体制が発足
中国
2013
市政1月号
(全国市長会)
 

中国の最高指導者だった胡錦涛・党総書記(69)の任期切れを受けて、11月開催の中国共産党大会で、習近平・国家副主席兼党中央政治局常務委員(59)が正式に後任に選出され、今後2期10年トップに君臨することになった。習総書記は軍を統括する党中央軍事委員会の主席の兼務も決まり、来春開催の全国人民代表大会で国家主席にも選ばれる予定で、党、軍、国家の3分野の最高ポストをすべて掌中に収めることになる。
中国では、経済発展の過程で貧富の格差が一層拡大している上、党・政府内に広がる腐敗が深刻な政治・社会問題となっている。この点で、腐敗一掃に習総書記への期待は大きい。高級幹部の子弟グループ、いわゆる太子党に属し、指導力よりも調整力を買われて抜擢された習総書記が果たしてどう対応するのか、中国共産党の将来が掛かっている。


胡、江両氏の権力闘争
党大会開催前から、胡総書記の後継はすでに習氏、ナンバー2の温家宝首相の後は李克強・筆頭副首相(57)というのが既定路線だった。だから、この2人を除く残り5人の中央政治局常務委員(今回から定員7人に減員)のポスト争いが見どころだった。

事態を複雑にしたのが、重慶市のトップ、薄煕来党委書記(中央政治局員)だった。太子党の野心家で、今度こそ常務委入りをと、色々画策、毛沢東礼賛の派手なキャンペーンなどで全国的に知名度が高かった。ところが、今春、同書記の子分の前公安局長の米総領事館駆け込み事件が発覚。これが契機となって、同書記の妻の谷開来女史による英人実業家殺人事件まで明るみに出て、書記と政治局員双方のポスト解任にまで発展した。

この事件は、経済格差の拡大に警鐘を鳴らし、貧しくても平等だった毛沢東時代への回帰を訴えた薄氏が主役とあって、大きな反響を呼んだ。この事件について、一部では、薄書記追い落としの陰謀説まであり、収拾には、胡政権も大変苦労した様子。このため、秋の党大会の開催時期が遅れたし、人事にも微妙な影響を与えたようだ。薄書記は、10年前に引退したが、未だに生臭い保守派の江沢民前総書記(86)に近いとされる。引退後も影響力の維持に腐心する胡錦涛氏と江氏とのポスト争いは、舞台裏で熾烈を極めたようだ。習近平・新総書記はこの対立の狭間で、成す術なかったらしい。

実を取った胡錦涛氏
そんな習氏だが、胡・江両派の対立で漁夫の利を得た点もあった。江派の突き上げで、胡氏が党中央軍事委員会主席の座を手離さざるを得なくなり、習総書記の手にこの強力なポストが最初から転がり込んだのだ。常務委人事でも、江氏が意気盛んで、太子党や上海閥をかなり押し込んだようだ。だが、習近平、李克強両氏を除く、新常務委員5人全員が60代半ばだ。だから、定年との絡みでこの5人全員が5年後には引退となる。

胡氏は軍事委主席を手離し、常務委で江氏の巻き返しを許したが、平の中央政治局員には自分の息のかかった共産主義青年団系の、60代前の若手の逸材を幾人か維持した。彼らは5年後の党大会で常務委員に昇格でき、この中から、ポスト習の最高指導者に選ばれる道を開いたのだ。政治局内で留任の汪洋広東省(57)、新任の胡春華内モンゴル自治区(49)両党委書記らがこれに当たる。中央委員となると、一層、共青団出身の勢力が強い。

それに、胡氏の「科学的な発展観」が歴代指導者の指導思想と並んで行動指針に格上げされ、党規約に盛り込まれたことでも、胡氏は影響力を残すことができる。こう見ると、胡氏は表面的には大幅後退の印象だが、長期的視点でみると、習近平政権の次を狙う上で有利な地歩を確保したようだ。

腐敗が党の崩壊の引き金に
胡総書記は大会冒頭の政治報告の中で、権力の腐敗や収賄が党と国家を崩壊に導く恐れがあると強く警告した。習・新総書記も就任直後に、腐敗問題を早急に解決すべきだと訴えた。

10月中旬、米ニューヨーク・タイムズ紙は中国の温家宝首相の母親ら親族がなんと27億ドル(約2、150億円)相当もの巨額の蓄財をしたと報じた。それに先立ち、米ブルンバーグ通信は習近平・国家副主席の親族もすでに資産が300億円にもなると報じた。さらに、例の薄煕来書記の巨額の海外送金もマスコミを賑わした。

温家宝首相の場合は、清廉潔白で政治改革に熱心な指導者との印象があっただけに、この報道は衝撃的だ。同首相はこれを否定、中国政府は同紙のネット版を閲覧不能にするなど嫌がらせをしているが、同紙は証拠を握っているのか、ひるまず、追撃の様子だ。

経済大国とはいえ、中国の人口の多くを占める農民たちの貧困振りはすさまじく、それと対照的に、指導部の金満振りは驚くばかりだ。ほとんどの指導者が子女を米英の有名私大に留学させている。ネットのお蔭で、どんな情報も一般国民の目に触れ、政府や党に対する信頼感は地に落ちている。習近平政権は2020年までに所得倍増の計画だが、これは経済格差を更に悪化させかねない。

腐敗に対する胡錦涛氏の危機感は本物だろうが、それなら彼自身なぜ在任中に断固手を打たなかったのか。太子党の習総書記にも、腐敗撲滅に蛮勇を振う意思と腕力があるとは到底思えない。さすがの中国共産党も権力の腐敗から自壊への道を辿り始めたようだ。難局に立つ習総書記が対日強硬策を続けて国民の目を外に逸らそうとするのか、それとも、融和路線に転換して、国内の改革に精力を傾注するのか、困難な選択を迫られている。(12月1日)


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