領有権を巡る騒動
日本政府は毅然とした対応を
2012
市政10月号
(全国市長会)
 

最近、周辺諸国との領有権を巡る騒動が相次いで発生し、そのたびに日本政府の腰の引けた対応が目立つ。7月には、北方領土にロシアのメドベージェフ首相が日本の申し入れを無視して出掛けた。8月には、韓国の李明博大統領が日本政府の警告にも耳を貸さず、不法占拠中の日本領の竹島に上陸した。その直後には、香港の中国人グループが日本の実効支配下にある尖閣諸島に強引に上陸した。
いずれのケースもそれぞれ背景は異なる。それでも、周辺3国が相次いで領土問題で日本の神経を逆なでする行動に出たということは、日本側の方に、何かそのような行動を誘発するような要因があるように思えてならない。


人気回復に悪あがきの李大統領
韓国の元首として史上初めて竹島(韓国名:独島)に上陸したのは8月10日のこと。竹島は日本が1905年に島根県に編入、公式に日本領となった。戦後の51年、韓国はいわゆる李承晩ラインを設定、その内側にある同島に54年に警備隊を駐屯させ、強引に不法占拠を開始した。日本の歴代政府は韓国の反発を恐れ、この問題を事実上放置してきた。

李大統領(来年2月で任期満了)の暴挙については、政権の末期症状化が深刻化したためという見方が最も有力だ。親族を含め、側近たちが次々と汚職容疑などで逮捕され、支持率も急落した。何とか求心力の回復をと、最も安直な反日カードに活路を求め、一番の禁じ手にまで踏み込んだのだ。事実、竹島上陸に加え、天皇に対する失礼極まる発言で、支持率は大幅に回復した。

だが、自殺した盧武鉉前大統領の前例が示す通り、歴代の韓国の大統領の多くが引退後は悲惨な運命に陥っている。李大統領の見苦しい最後のあがきも、このような運命から逃れる保証にはならないだろう。大阪生まれの出自で陰口を叩かれながら、日韓間に「未来志向」の関係構築を推進してきたが、最後に、竹島に上陸した最初の大統領となった。「反日の志士」として歴史に名を残すことを狙った李大統領の大博打は、結局は両国でその浅知恵を問われることになりそうだ。

尖閣上陸を扇動した中国
この後、日本に揺さぶりをかけて来たのは中国である。標的は同国も領有権を主張する沖縄県石垣市に属する尖閣諸島だった。当初は台湾の活動家たちも抗議船を計画したが、中国側と共闘の形になることを懸念した当局が止めた。そこで、香港の民間反日団体「保釣行動委員会」の活動家たちが対日攻勢お先棒を担ぐことになった。

英国は植民地の香港を1997年に中国に返還した。ただし、50年間は自治権を認められ、その間は一国二制度が続く。段階的に中国の統治が強まり、今やトップの行政長官も中国政府の息のかかった人物が選ばれている。だから、香港の抗議船が出航するには、中国政府からのお墨付きが必要である。近年は、中国政府は船の出航を許可しなかったが、今年は、暗黙の承認を与えたようだ。このため、活動家たちは国士気取りで尖閣諸島に近づき、日本の海上保安庁の巡視船が妨害したが、レンガなどを投げて抵抗し、強引に上陸して気勢を上げた。14人が逮捕されたものの、すぐに強制送還処分を受け、香港に意気揚々と帰ってきた。

中国内ではこの逮捕を不当だとして、抑制的ながら反日暴動が各地で発生、さらには、8月27日には、北京で丹羽宇一郎大使の乗った公用車が中国人たちに襲われ、日の丸の国旗を奪われるという予想外の事件の発生にまで発展した。

機能不全の日本外交
北方領土問題については、ここでは改めて説明しないが、ロシア、韓国、中国が相次いで、領土問題で日本を痛く刺激する行動に敢えて踏み切ったことに注目する必要がある。単なる偶然ではないだろう。日本政府の機能不全、とりわけ、安全保障の根幹に関わる対外政策が未熟で、基本的な欠陥があることと密接な関連があると思える。

2009年の総選挙での民主党の圧勝を受けて成立した民主党政権は、対外政策の基本で重大な過ちを冒したのである。鳩山首相は「少なくとも県外」、「トラスト・ミー」という、今や語り草となった有名な発言で、沖縄の米軍基地移転問題を大混乱に陥れ、日米関係をめちゃくちゃにしてしまった。次の菅首相は約2年前、尖閣諸島沖合での中国漁船による日本の巡視船への体当たり事件で、中国の恫喝に屈して、その弱腰を天下に晒した。

両首相のお粗末な対応に、周辺諸国は、本来は極めてセンシティブで重大な領土問題で、日本の顔を潰しても、政府は断固とした報復措置を取らない、いや、取れないと踏んだのだ。これが3国の「嘗め切った」行動に発展したように思える。野田首相も、中国政府の影に怯えたのか、今回逮捕した中国人全員を裁判にもかけず、さっさと強制送還する手際の良さを発揮して、恥の上塗りに終始した。

さらに、大使襲撃事件でも、中国政府は国内の反発をおそれ、犯人たちに刑事責任を追及せず、行政処分でお茶を濁す方針という。しかも、野田政権は処罰で具体的に要請すれば、「内政干渉」になると懸念して、そのまま受け入れる構えとか。
こんな弱腰外交は、更なる重大な挑発行動を誘発する恐れがある。この種の問題には、毅然とした政府の対応があってこそ、再発の抑止となるのだ。その際には、一時的に犠牲が生じるかもしれない。だが、それを乗り越えなければ、屈辱の日々はずっと続くことになるだろう(9月3日)


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