大接戦続く
米大統領選挙
2012
市政9月号
(全国市長会)
 

今秋の米大統領選挙の投票日(11月6日)まで約100日となった。民主党は、米国史上で初めて黒人としてホワイトハウス入りしたオバマ大統領(50)が再選を狙う。共和党からは今年初めからの長丁場の厳しい予備選挙を勝ち抜いて、事実上の大統領候補となったミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(65)が一騎打ちを迫る。
現在のところ、各種の世論調査結果によると、両者の対決はオバマ大統領がリードしてはいるものの、ほんの僅かの差で、大接戦状態が続いている。8月末から9月初めに掛けて、共和、民主両党は党大会を開催し、正式に候補を確定すると共に、副大統領候補を選ぶ。そこから本番の選挙を目指して本格的な選挙戦に突入する。どちらが当選してもおかしくない状況だけに、選挙戦ではどぎつい中傷合戦がさらにエスカレートするとみられ、早くもその後遺症が懸念されている有様だ。


経済手腕を誇るロムニー候補
共和党のロムニー前知事は裕福な家庭に育ち、嘗ては一夫多妻制を認めていたことから偏見を持たれていたモルモン教徒だ。だが、そのウリはビジネス界で一旗揚げた経歴だ。その成功の手法を使って、米国経済の再生を実現すると大見えを切っている。

確かに、現在の米国は、2007年の米国の住宅バブルの破綻が引き起こした世界金融危機の深刻な打撃から未だに回復するには至っておらず、病み上がりの状態で四苦八苦している。そこに、欧州の財政危機が加わり、脆弱な状態にあり、のたうちまわっている。如何に米国経済を回復させ、雇用を増やせるか―これこそ有権者が政府に期待する最大の課題となっている。

それなら、経済に強いと自画自賛するロムニー候補への有権者の期待が大きいはずである。2008年の大統領選挙では、共和党のマケイン候補は国防・安全保障問題はプロだが、経済はからきしだめとの審判を有権者から下され、経済に強い方のオバマ民主党候補が選ばれた。だが、オバマ大統領も3年経っても、これといった効果的な処方箋を書けていない。それだけに、経済のプロを自任するロムニー候補への期待がいやが上にも盛り上がるはずだが、現状はどうもそういう風ではない。

空気の読めない坊ちゃん育ち
有権者のほぼ65%もが経済の再建こそ一番大事と認める状況でありながら、ロムニー候補が有権者から支持と信頼を勝ち取れない―これはどういうわけか、だれもが気になるところだ。このような疑問については、次の様な原因が指摘されている。

第一は、弱者や貧しい人々への配慮が行き届かないという「空気の読めない」人間だとの見方がある。確かに、予備選挙の最中も幾つかの問題発言が飛び出したものだ。ロムニー語録のほんの一部を紹介すると、こんなのがある。
「セーフティ・ネットがあるから、極貧層のことは心配していない。本当に苦しいのは中間層だ」
「妻は(高級車の)キャデラック2台を運転している」
これが大統領選挙に出馬し、選挙運動に懸命の候補の発言か、とだれもが思い、反発するだろう。

第二は、こんな庶民感情を逆撫でして平気な顔だから、オバマ大統領陣営によるネガティブ・キャンペーンの格好の餌食になっている。裕福な育ちで、庶民のことなど関係ないという意識の持ち主という類のテレビ・コマーシャルが繰り返し放映され、有権者の間にそんな印象が定着してしまったのだろう。

色あせたオバマ人気
オバマ大統領の支持率は就任以来ほぼ3年半の間に大幅に低下してきた。就任直後には63%の高率だったが、昨年には一時これまで最低の41%に落ち込んだ。それから、ある程度持ち直しているとは言え、7月末のギャラップ社の調査では46・8%と、未だに40%台に止まっている。はっきり言って、これでは再選も危ぶまれる状況にある。投票前までに50%を上回らなければ、対立候補のロムニー氏の人気度にもよるが、かなり深刻な場面になる。

同大統領は前回の選挙では「変革」を合言葉に選挙戦を戦い勝利した。だが、主要な支持層である社会的弱者の間に今や、オバマ大統領が期待通りの変革を実現してくれなかったとの失望感が高まっているのだ。
2010年の中間選挙で、共和党が下院で過半数の議席を占め、上院でも議席を増やし、民主党が「大敗」を喫した。このため、議会での与野党の対立が激化、オバマ大統領の変革への努力もなかなか実を結ばなかったという背景もある。

それに、特に、経済についてはマケイン候補よりもましという理由で当選したオバマ大統領は期待外れだったという事実が重くのしかかる。失業率は一時の9%台より下がったとはいえ、未だに8%台という高率が続いている状態では、国民も一層財布のひもを締めざるを得なくなる。

7月末の米経済統計でも、今年4−6月の国内総生産(GDP)は1・5%の伸びに止まり、1−3月の2.0%を下回り、減速した。消費の伸び悩みのためだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にも3回目の景気刺激策を打ち出すかどうかが注目されているが、大統領選との絡みもあり、バーナンキFRB議長も慎重にも慎重を期すことになりそうだ。今後の景気指数を睨みながら見極める構えだが、こんな微妙な状況だけに、選挙戦は最後の最後までもつれ込みそうだ。(8月3日)


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