アジア重視のプーチン露大統領
2012
市政7月号
(全国市長会)
 

今年春に実施されたロシアの大統領選挙で「皇帝」プーチン首相が第一回の投票で過半数を獲得して、4年振りに大統領に返り咲いた。プーチン大統領(59)は人気が衰え気味とは言え、予想外の事態が生じない限り、さらに長期にわたり大統領職に居座ることが予想される。第二次プーチン政権の主要な目玉の一つは、ロシアのアジア部、シベリアや極東地域の経済開発となる模様で、このために、大統領直轄の国営企業の設立を認可する方針だ。この延長線上には、目覚ましい経済発展を続けているアジア・太平洋地域との連携があり、9月にウラジオストックで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議はアジア重視戦略推進の重要な舞台となりそうだ。


クレムリン支配は通算20年にも
プーチン大統領は旧ソ連の諜報機関で、泣く子も黙ると言われた国家保安委員会(KGB)の元将校。だから、普通のロシア人の知り得ない様々の西側情報に接する機会に恵まれていたはずで、共産主義社会の限界を認識できる環境にあったに違いない。あっさりと共産主義と決別したが、その狡猾な独裁的統治の手法はしっかり自分のものにしたようだ。

1999年、エリツィン大統領(当時)の電撃辞任で棚ぼた式に大統領代行となり、翌年の選挙で大統領に当選、2期8年の任期を務めた。その後は、連続3選禁止の制約を乗り越えるために、頭を働かせた。自分の仲間内で最も力のないメドベージェフ首相を大統領に推薦、自分は格下の首相に甘んじ、4年後には首相職と大統領職とを交換する密約を交わしたのだ。

その間、プーチン首相は大統領職の任期を4年から6年に延長した。だから、プーチン大統領は今後、さらに2期12年、2024年まで通算20年間もクレムリンに君臨することが可能なのである。

「極東共和国」目指す?
プーチン大統領は長期政権を実現するには、ロシアを強大な国に仕立て上げる野心的な大事業に乗り出す必要があると考えた。当然ながら、その事業は自分の支持者たちの懐を潤す利点も兼ね備えなければない。   

そこで目を付けたのが、未開発のまま放置されているロシアのアジア部、すなわち、ロシア大陸全体の60%を占めるシベリアと極東地方の経済開発である。その向こうには、目覚ましい経済発展を続ける中国、高い技術力を持つ日本が控える。国内の開発を、陽の当たるアジア・太平洋地域に連結すれば、ロシア経済全体に大きな波及効果を及ぼすことができるという皮算用だ。

このアイデアを具体化したのが、シベリア・極東地域にプーチン大統領直轄の国営企業を設立するという構想である。ロシアのメディア報道によると、この国営企業はウラジオストックに本拠を置き、特別の税制優遇措置を与えられ、各種のインフラと様々な資源の開発を優先させる。既存の国営大企業から出資させ、さらに、他の企業所有の土地をも開発する権利までも認めるという異例の特典が付与されるという。この一環として、極東開発省の新設も決まった。こんなことから、「極東共和国」樹立目指す?と揶揄する向きまである。

中国との関係強化で米国牽制
それでは、第二次プーチン政権の外交政策はどのようなものになるのだろうか。同大統領は就任するや否や、一連の大統領令に署名しており、その中に外交の指針「対外政策路線の実現について」と題する大統領令がある。

アジア・太平洋地域に関しては、シベリアや極東地域の社会・経済発展を加速するために、地域統合プロセスへの参加を拡大すると明記。対象国別では、中国との間に「平等で信頼に足るパートナーシップと戦略的関係を深化させ、、、、日本などその他のアジア・太平洋地域の重要諸国との互恵的協力関係を発展させる」と力説する。

このような書き方からも分かる通り、アジア・太平洋地域はプーチン政権にとって重要な地域とされており、とりわけ中国はその筆頭となりそうだ。実際のところ、プーチン大統領は6月5日から訪中、胡錦涛主席と会談、戦略協力の深化で合意した。その後、北京で開催の上海協力機構首脳会議に出席する。この組織は米国に対抗するアジアの拠点的な存在で、中ロの主導の下に、次第に地政学的に重要な地位を確立しつつある。また、ロシアは4月、中国と黄海で大規模な合同軍事演習を実施しており、アジア回帰を鮮明にする米国を睨み、中ロ軍事協力を誇示する狙いだ。

米国との関係はかなり冷え込んでいる。5月に米国で開催された主要国首脳会議(G8サミット)には、閣僚人事で多忙を理由に欠席し、メドベージェフ首相が代理出席した。これについて、ロシアでは「米国はプーチン大統領の優先課題ではない」と論評したメディアもあった。昨年末のロシア下院選挙におけるプーチン陣営の不正行為を厳しく追及する米国政府への面当てという側面もありそうだ。

米国とは、東欧のミサイル防衛(MD)、シリア、イランなどで、鋭く対立しており、当面は中国との共闘を見せびらかす作戦なのだろう。

プーチン大統領は「日本との北方領土問題を最終決着させたい」(朝日新聞)との希望を表明してはいるが、政治的に不安定さの目立つ日本に対して、領土問題で大きな譲歩をするとは考えにくい。ロシアが日本を必要とするような内外情勢の変化(例えば、中ロ間の尖鋭な対立など)が生じない限り、甘い期待は禁物だろう。(6月4日)


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