中朝の脅威に揺れる東アジア
日米が同盟強化で対抗
2012
市政6月号
(全国市長会)
 

東アジア地域では、経済・軍事大国の中国の挑発的な行動が活発化している上に、その盟友、北朝鮮は核開発を断固推進する構えで、緊張がますます高まりつつある。今年秋に最高指導部の交替が予定されている中国では、指導部内での権力闘争が激化している模様。この間隙を縫って、軍部は周辺海域で独自の動きを強めているとの見方もある。北朝鮮では、金正恩新政権が今春、名実ともにスタート、飢えた国民への食糧確保は二の次に、軍事優先路線を突っ走る。こういう緊迫した事態に、野田首相はこのほど訪米、アジア重視のオバマ米大統領との首脳会談で、中朝の脅威に対抗するため、同盟の強化による封じ込めで合意、対応を急いでいる。


食糧よりも核・ミサイルを
さて、新しい最高指導者、金正恩氏(29)が率いる北朝鮮のその後は?米国との直接協議で、核活動の停止と交換に、米国に24万トンの食糧援助を約束させたのだが、4月半ばにはミサイルの発射実験を強行、これに怒った米国は食糧援助を正式に取り止めた。
日本を含む周辺諸国が警戒を強化する中、この長距離弾道ミサイルは発射直後に爆発、破片が黄海に墜落した。2006年、09年に続く、長距離ミサイルの発射実験の失敗だ。金正恩氏には打撃だが、異例にも、今回は北朝鮮自身が失敗を認めたのだ。

この前後に、同氏は新設された労働党の第一書記と国防第一委員長の両ポストに就任、名実ともに最高指導者となった。
故金日成主席生誕100周年の4月半ばに、平壌で催された大軍事パレードでは、金正恩氏はひな壇から閲兵すると共に、公開の場で初めて演説し、軍事優先路線の継承を強調した。だが、その演説は原稿の棒読みで、肉声はか細く、迫力に欠け、最高指導者の風格は微塵も感じられなかった。

北朝鮮は近く、核実験を実施する準備を進めていると言われる。さらに、軍事パレードに絡み、韓国側が金正恩氏を中傷したとして、「ネズミ野郎(李明博韓国大統領)とソウルを吹き飛ばす特別行動を開始」するなどと威嚇を繰り返している。

重慶市トップの薄煕来解任
中国では、重慶市で独立王国を築いた薄煕来氏(62)に絡むスキャンダルはついに、彼の市党委書記と中央政治局員の両ポストの解任にまで発展した。薄氏は今秋には政治局常務委員への昇格が期待されていたが、ついに失脚に追い込まれた。
しかも、薄氏は胡錦涛総書記兼国家主席の盗聴疑惑も指摘されており、国家のトップをも巻き込む久々の 大権力闘争に発展しつつある。

一連の事件が表面化した契機は、マフィア摘発で名を挙げた重慶市前公安局長の米総領事館への駆け込み事件(2月)だった。その後、薄煕来氏の妻で著名な弁護士の谷開来女史(52)が、夫妻と親交のあった英国人実業家ニール・ヘイウッド氏(41)の変死事件(昨年11月)への関与が疑われ、当局に拘束されるという前代未聞の事件も起こった。
この大スキャンダルは、中国最高指導部の交替を控えて、胡主席を筆頭とする改革派の共産主義青年団系と、元高級幹部子弟の、いわゆる「太子党」系との権力闘争的色合いも強く、その真相は闇の中だ。ただ、引退前の同主席がここで立場を強化し、後継者に事実上確定した「太子党」の習近平副主席の力が削がれたとの見方があり、中国指導部内の争いの外部への影響を懸念する向きもある。

軍が挑発的な独自行動か
中国の軍事費はこのところ、二桁の増加を続け、軍拡が急速に進み、愛国的な風潮の強まる中で軍の存在が高まるばかりだ。党指導部が権力闘争に埋没しているうちに、軍は党中央の意向に縛られずに、日本海、東・南シナ海から太平洋に至る海域で、独自の行動を取っている兆しがある。

南シナ海では中国とフィリピンやベトナムなどとの領有権問題があり、沿岸諸国は中国の圧倒的な軍事力に対抗するために、へっぴり腰の日本に失望、米国の介入頼みだ。韓国では領海侵犯の中国漁船による暴力行為が目に余る。
日本との関係でも、中国は日本の尖閣諸島にまで領有権を主張する有様だし、あちこちで領海侵犯を繰り返す。排他的経済水域(EEZ)を巡る日中間の境界線紛争は、海底資源の争奪を背景に激化する。また、中国の軍艦や潜水艦の東シナ海から太平洋への進出も目立つ。さらに、防衛省によると、中国軍機による日本領空接近が増え、自衛隊機による緊急発進の回数が昨年はこれまで最高の156回となった。前年は96回だった。

日米同盟強化で脅威封じ込め
中朝の脅威が高まる折、最大の問題は最近のぎくしゃくした日米関係だった。オバマ大統領はアジア重視路線に転換し、日本との共同対処で乗り切りを策していたが、日本に民主党政権が登場、鳩山、菅両首相の未熟でお粗末な外交理念と手腕が災いし、日米関係は戦後最低と言われるまでに冷却した。中国の思う壺だ。

だが、野田首相の登場でやっと、日米関係は持ち直しの軌道に乗ったようだ。連休を利用して、野田首相が民主党政権としては初めて公式訪米した。ホワイトハウスで大統領とじっくり意見を交換、中朝の深刻な脅威について認識を共有し、日米同盟の強化に合意した。共同声明「未来に向けた共通のビジョン」は、日米首脳による共同文書としては6年振りで、日米関係の改善は、中朝への抑止力として、極めて重要な意味合いを持つことになろう。(5月4日)


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