その86 
     若き桂林市長のトイレ革命 


桂林は、雨上がりの風景が最高といわれる。雨上がりの霧の中にうっすらと浮かび上がる水墨画的な風景は有名である。日本人や欧米人にも、石灰岩で突然盛り上がったような風景は、大変中国的で人気があり、観光客も多い。その桂林市で若き市長が、観光客を呼ぶためにトイレについて大英断をした。

日本でも観光地のトイレは汚れていたり、蜘蛛の巣がはっていたり、評判は良くない。中国でも観光客に最も嫌われ、恐れられているのがトイレである。大きなホテルや高級レストランを除けば、トイレの設備は大変遅れている。特に田舎のトイレは、2枚の平行に渡した厚板にまたいで用をたす。屋根はあるものの小便はともかくとして大便の方は男性でも抵抗がある。まして、女性は扉もついていない二枚の板だけのトイレでは困惑する。都市部でも、たとえば工場などでトイレを借りても、扉はないところがある。あっても、腰の高さの部分だけで、上と下はがら空きで使用中か否かわかる構造である。

外国人の多い観光地でも、腰の部分の扉のトイレが多く、日本人観光客、特に女性はその評判を聞いただけで中国旅行を躊躇するという。その悪い評判を耳にした桂林市の若い市長は、観光客を呼ぶために「トイレ革命」を起こした。スリースターホテル(三ツ星)並みにトイレを改善することを目標にしたのである。すべてのトイレを日本の観光地なみの大きい扉に改造し、常に掃除をしてきれいにする方針を出した。観光地にレストランを設置する際に、その権利金や借地料金などを市に直接、支払うのではなく「美しいトイレ」のための維持と管理費用を支払う条件にした。現在このトイレ革命は大きく進展している。

ホテルはもちろんのことレストランや駅でもトイレを使用してみる。移動中に車が故障したので、その修理の間に、東莞市の町裏のトイレも使ってみた。5角(日本円10円ほど)の有料ではあったが、電灯もなく、汚く、臭く、とても有料とは思えない。あまり汚いので使わずに我慢をしたいくらいである。成都市の田舎の畑の中にも公衆トイレはあった。物置のようなところに作られたトイレは、屋根の下に2枚の厚板を渡しただけであった。ここにたまった汚物は、適宜農作物に肥料として使われている。ホテルや高級レストランを除き、中国のトイレは全般的に使用するのに相当抵抗を感ずる。

これらのトイレと比較すると桂林市のトイレは格段に快適である。日本の観光地と比べても遜色がないくらいきれいである。休日の観光客の数に比べてトイレの絶対数が少なく、女性用では行列を作っており、まだ十分とはいえないが、桂林市のトイレは大きく改善されていることは間違いない。45歳の若い市長の発案という、トイレプロジェクトが着々と成果を見せている。全市を挙げて観光客を集めたい桂林市の観光ガイドも、日本の観光客、特に女性に、このトイレの改善結果をPRしたいと熱く語っていた。方針が明確になればトップダウンで動く中国のこと、桂林市のトイレ革命の改善効果は、さらに大きく進むであろう。トイレが不安で桂林観光を躊躇しておられる方がいたら、桂林だけは大丈夫と言ってあげたい。

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