その85
 
 連泊のお客様、シーツは取り替えますか。
    環境保護に配慮し始めた中国のホテル


 最近、中国華南の深せん、広州、桂林及び中国で最も近代化の進んだといわれる華東地区の上海へ旅行をした。最近中国は、一ヶ月も訪問しないと大きく変わるといわれている。深せんをはじめとして、いくつかのホテルへ宿泊して、環境保護に関する新しい発見をし、改めて中国の変わり様に驚かされたので紹介したい。

 冬の北京では、深呼吸をするのがいやになるほど空気が汚れたスモッグを見せつけられる。広州、南京、西安など各都市では、ごみで汚れ、悪臭を放つどぶ川を数多く見てきた。どの都市でも、ホテルから周辺を見渡すと各ビルの屋上には、建設の廃材他ごみが放置されたままである。見えない部分の美化はまったく期待できない中国である。このような経験から、中国では環境保護に関しては、改善する期待が持てないという先入観をもっていた。ところが、中国の窓口であり、外国からの観光客やビジネスで訪問客の多い深せんや上海では、大きな改善が始まっているのである。
 ひとつは、香港と広州を結ぶ中国鉄道の起点、深せん駅のすぐ真向かいの富臨大酒店というホテルであった。夕食を終えて部屋に戻ってみるとベッドの上に枕と共に次のように書かれたグリーンのカードが置いてあった。

 それは次のようである。(原文そのまま)
 「ホテルは、毎日ベッド・シーツをチェンジ致すけれど洗濯用の洗滌用でわれわれの海を絶えず汚染しています。環境を保護するために毎日ベッド・シーツをチェンジするかどうかご自分で決められるので、若しチェンジする必要がなければどうぞ朝このカードを枕の上に置いてください。どうぞ環境のためによく考えて選んでください。お願いします。」

 もうひとつは、上海の新しく開発された地区に建設された明城花苑酒店である。こちらは淡いグリーン地に厚紙でスタンドを作りそれに印刷してあった。日本語としては、少し手を加えたいところもあるが意味は十分伝わってくる。
「環境衛生を保護せよ エネルギーを節約せよ。毎日世界中のホテルで何トンの洗剤と何ガロンの水が、たった一度しか使っていないベッドシーツの洗濯に使われているか想像なさったことがありますか? 次の提案にどうぞ協力ください。このカードをベッドの上におく "シーツを取り替えてください"このカードをベッド横の机上に置く"シーツ取り替え不要"」

 両者ともに「同じ部屋に二泊以上する場合、シーツは毎日換えませんので気にしない人は申し出てください」と言う意味である。そして、いずれも中国語、英語と日本語の3ヶ国語で記されていた。国際的に環境保護の色、グリーンを基調として、黒で縁取りされたり、緑色の木がデザインされて、さわやかな感じである。中国もここまできたかと感慨深いものと大きな驚きがあった。

 このところ3回の中国旅行では、いずれも比較的高級な部類に属するか、最近新しく建設されたホテルに滞在した。しかし、この種のカードが置かれていたのは、深せんのひとつと上海のホテル、観光で有名な桂林と国際的な交易会が開催される大都市広州のホテルだけであった。残念ながら他の都市のホテルでは、まだこの種のカードやスタンドはなかった。すべてのホテルに徹底されているわけではないようである。しかし、このように一部では環境保護について真剣に考えられ行動することが始められている。どこの都市でも自動車の排気ガスは相変わらずで、改善される姿は見えていない。また、都市の中を流れる河川の汚れ具合と悪臭もそのままである。環境保護の点で悪いところばかりが目につく中国であるが、法律で規制され始めると徹底は早い。われわれの見えないところで手が打ち始められており、近々大きく変化するのかもしれない。

 一方、日本国内ではここ半年くらいの間に札幌、九州の博多市内、福島と比較的大きな都市のホテルや旅館に宿泊する機会があった。それらは、航空会社傘下の高級ホテル、ビジネスホテルや国民年金保養センター、厚生年金の保養所とさまざまであった。しかし、この種のグリーンカードはどこの宿泊先でも見ることはできなかった。現在、新聞や雑誌では、環境保護についての記事が掲載されない日はないくらいである。日本では自動車の排気ガス規制もあり、ビンやカン、ペットボトルなどの分別収集など環境保護に関して相当関心をもたれているようにみえる。セブンイレブンでは、「緑の預金」の箱がレジの横に置かれており、環境保護を訴えている。環境保護に関する国際規格ISO14000シリーズの認証を受けた企業の数では、欧州や中国に負けてはいないはずである。
 環境保護の点では、京都議定書を批准し、もう後ろに引ける状況ではない。ホテルや旅館では、経営上も、経費の節減はもっと徹底されなければならない。環境税さえも話題になってきている。総論賛成、しかし、各論では自分に都合の良いところだけ採用して、うまく逃げ回ることはもうやめにしたい。ホテルのサービスは、シーツの交換だけではない。環境保護を説明すれば誰もが納得するに違いない。ぜひ、実行してほしいものである。

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