新連載
 その79  海外旅行は油断もスキもない 


               事故の例を聞いて、自分の身を守るしかない

 人気のある日本のカフェテリアで、お客が高級なカメラやハンドバックをテーブルやいすの上に置いて席を確保するのを度々見かける。他人事ながら気になって仕方がない。私は暫くの間監視し、持ち主が戻ってくるのを待っていることにしている。日本は安全というか、日本人には無防備な人が多い。海外であれば、直ちに盗難に合うことは間違いない。「海外へ行ったときには注意するよ」と言うかも知れないが、最近は日本でも、この種の盗難に合う人が多くなっている。

 海外では、日本人を狙う犯罪が多いことは良く知られている。私の友人は、欧州出張中に人通りの多い、大通りでタクシーを待っている間に、アタッシュケースをとられてしまった。「海外経験が豊富で、海外旅行に慣れている彼がなぜ」と信じられない。他のことに気を取られて、注意をそらして瞬間にやられてしまった。その間、数秒くらいであったという。推測の域を出ないが、多分、彼は数人のグループに狙われたのだと思う。グループの一人が、注意を引きそうなことをする。例えば、小銭を落とすとか、故意に何かにつまずいて倒れるとかである。その転びかたが大袈裟であると、たいていの日本人は、「大丈夫かな」と、そちらの方に気が向く。この数秒間にやられる。かばんは、手に持っていない限り、獲物として狙われる

 アメリカでも例がある。ある空港のカフェテリアで、4人のグループそれぞれが、好きな昼食メニューを選ぶことにした。ここでも、海外出張には慣れているメンバーである。一人は確保したテーブルに座って他のメンバーが選んで戻ってくるのを待っていた。しかし、順番に料理をとり、食べ終わり、席を立とうとしたら一人のかばんがない。何時取られたのかもわからない。それまで気がつかなかったのである。幸いパスポートは身につけていたので被害は仕事に関する書類だけですんだ。

 タクシーを掴まえて乗っても、自分の荷物が本当にトランクに積んだことを自ら確かめないと安心できない。「これも頼む」とトランクに積むことをタクシーの運転手に任せたつもりで先に乗り込み、目的地に着いてみたら荷物がなかったということもある。運転手が積むのを忘れたのである。タクシーの運転手で仲間と"グル"になって窃盗することもある。忘れた荷物を追いかけて届ける風を装い、そのままドロンされる。油断もすきもない。できるだけ、警戒を怠らず、荷物は小さくして直接車の中に持ち込んだ方がいい。

 ホテルのカウンターでチェックインをしている間にアタッシュケースをとられた人もいる。自分の横において、ホテルカードにサインをしている間に盗難に合う。アタッシュケースは、このような時でも足の間に挟んでおくか、その上に足を乗せておき、盗られたらすぐに分かるような対策が必要である。だから、海外用のアタッシュケースは、靴で踏んでもかまわない位堅牢で汚れの目立たないものがよい。
 グループで出張をすると返って人任せになり、事故にあうケースが多い。グループだから、誰かが見ていてくれるだろうという安心感が働く。これがかえって危ない。自分がやられても、友人が取られてもたいへん不愉快である。その上、色々な手続きで余計な時間が費やされる。パスポートなど盗られたら、本人は動きが取れなくなり、仕事どころではなくなる。
 このような被害の例をたくさん聞いているので、海外出張中は本当に神経が疲れる。海外旅行に慣れている私でも、いつかこんな事故に合わない保証はない。旅行中は気を抜かないことである。できるだけ色々な事故の例を聞いておいて自分の身は、自分で守る以外に方法はない。 


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